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2001年04月 アーカイブ

2001年04月12日

情報の垂れ流し

コンピュータの弊害・・・相互作用のチェック。

例えば、ニューキノロンとNSAIDsの併用。これには、『併用禁忌』『併用注意』『併用可』の3種類がありますが、併用禁忌となった相互作用は“重篤な結果の症例がある”ことを示していて、もちろん、処方医に変更の旨を連絡しなきゃならないが、併用注意の場合、類薬であったので理論的に可能性があるというだけで、実際にそういう症例があったわけではありません。『併用可』っていうのは、添付文書に記載のない場合の事です。

ここで、まずいのは、調剤コンピュータのシステムによっては、『併用禁忌』『併用注意』の組み合わせまで、“ピーピー”とチェックが入るモノが存在しているのです。

『併用禁忌』『併用注意』の区別もつかない“ヘッポコ薬剤師君”は、『得たり!』とばかり、処方医に電話連絡し、変更までお願いするという暴挙に出ることすらあります。

こういう、つまらん問い合わせで、Drを怒らせちゃうヘッポコ薬剤師にならないように注意しましょう。(併用注意まで気にしてたら、使える組み合わせなくなっちゃうよ)

併用注意の組み合わせなら、問い合わせなどせずに、心の中で多少は心配しつつ、『痙攣』などと過激な表現は使わずに、『ニューキノロン薬により不眠,頭痛,ふらつきなどがある場合には,(中枢神経の)副作用と考えられるので、そのような症状がでたら、とりあえず、服用を中止してください。』と説明し、経過を見る余裕が欲しいもんです。

もちろん、そんな注意も、私の場合、してませんけどね。
痙攣の既往があるとか、腎機能が悪い場合意外はね。

みなさん、コンピュータの“垂れ流し情報”には注意しましょうね!!

ただし、その他の相互作用でコンピュータ“ピーピー”鳴ったら、こけだけは注意しときましょう。例のP450競合タイプでQT延長がある場合。要するに肝排泄型の薬で腎外クリアランスのおおきいヤツね。それに、血中濃度上昇が非線形の速度を示すタイプのヤツです。非線形速度過程を示すの薬とは、肝臓の代謝酵素の量が限界あって、簡単に言うと投与量があるピークを超えると、血中濃度が比例しなくなってどんどん上がっちゃう薬物のことです。

ところで、ついでだから、痙攣の発生機序を見てみましょう。
その作用機序は中枢神経系における抑制性伝達物質であるγ―アミノ酸酪酸(GABA)の作用部位であるGABAa受容体にニューキノロンが結合しGABA結合が阻害されることによるGABA結合阻害説が有力である。しかし、この相互作用による痙攣は、GABA作動薬のバルビツレートやジアゼパムでは完全に抑制できないが、カルバマゼピン、モルヒネ、ペンタゾシンでは抑制作用を示すことなどからGABA受容体の関与のみでは説明がつかない点も多い。

また、NSAIDsを見てみると、ニューキノロンとの併用により痙攣誘発をきたすNSAIDsには、共通な化学構造としてトパロ酸(アリルプロピオン酸)部分もっていることである。トロパ酸タイプのNSAIDsには不斉炭素があり、光学異性体が存在する。ケトプロフェンとENXの併用ではR(-)体の方が抗炎症活性の強いS(+)体よりずっと低用量で痙攣誘発作用が起きたことから、化学構造も痙攣誘発を決める一因になっていると思われる報告もある。

また、痙攣が起きやすい条件として、脳内GABA量を低下させるような条件下(ビタミンB6欠乏、高圧酸素呼吸時など)でも痙攣が誘発されることが知られているし、ニューキノロン薬のほとんどが腎排泄型なので,腎機能障害など血中濃度上昇に注意が必要である。

2001年04月14日

慢性骨髄性白血病の夢の“特効薬”

 慢性骨髄性白血病 (以下 CML ) の新しい治療薬として、最近、グリベック-Glivec(STI571)という抗がん剤が噂になっているが、この薬の作用機序はかなり明快である。そして、「がん治療薬で、しかも単独の薬で、98%の好成績をあげたというのは前例がない」とNCI(米国立ガン研究所)のリチャード・カプラン博士が、驚きのコメントを寄せているように、非常に“効く”のである。

では、、そのグリベックはどんな薬か?

 CML では第 9 番染色体と第22 番染色体との間で相互転座と呼ばれる変化が起こり、通常ではありえない特別な遺伝子の配列が起こるのはご存知だと思うが、これにより 「bcr-abl」と呼ばれる異常な DNA 配列が作り出される。ちなみに、この異常な染色体をフィラデルフィア染色体と呼んでいる。

 で、この異常な遺伝子は、情報として生かされて、細胞内情報伝達を担う蛋白が作られてしまうのである。この異常な蛋白質は「BCR/ABL チロシンキナーゼ」と呼ばれている。
※ちなみに、染色体転座により DNA が融合する前(正常な)の ABL 遺伝子は細胞増殖を抑制しているのだが、転座が起きて BCR と融合して BCR/ABL となると細胞増殖を促進するようになるのである。

 CML 患者の場合、染色体検査でフィラデルフィア染色体が検出できなくても、DNA の配列を調べれば、必ず bcr-abl と言う異常な DNA 配列ができ上がっている。よって CML の病態を引き起こしているのはここから作られる「BCR/ABL チロシンキナーゼ」と考えられるのである。

 というわけで、みなさん、もうお分かりですね。そうです、「BCR/ABL チロシンキナーゼ」を分解したり、働きを阻害してやる薬ができれば、CML が治ると考えたわけです。

 近いうちに勉強会で、染色体転座、細胞内情報伝達なども含めて『この辺のところ』をやりたいと思ってます。
こうご期待!ふぅ。(^^ゞ

2001年04月20日

化膿連鎖球菌ゲノム、解読される。

むむむ、恐るべし、化膿連鎖球菌。ウイルスのゲノム取りこんでいるとは・・・・。

『解明された人食い細菌の遺伝子---ゲノム解読がワクチンへの道を開くのか?』

 のどの痛み、しょう紅熱、トキシックショック症候群、膿痂疹(とびひ)、リウマチ熱、そして稀に発生する人食いバクテリア症である壊死性筋膜炎。これらは、いずれも化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)という強力な細菌が原因となっている。このほど解読された化膿連鎖球菌ゲノムの塩基配列は、この細菌が人体を蝕む際に利用する一連の遺伝的武器の詳細を明らかにしている。

 オクラホマ大学保健科学センター(米国)のJoseph Ferrettiらは、5年間を費やして、約200万個の塩基によって構成される化膿連鎖球菌ゲノムを解読、解析した。この細菌は、他のどの細菌よりも多種多様な疾患を引き起こす。

 Ferrettiの研究チームは、化膿連鎖球菌の1本の環状染色体上にある約2000個の遺伝子の中から40個を超える「ビルレンス遺伝子」の候補を発見した。ビルレンス遺伝子は、化膿連鎖球菌が組織損傷や疾患を引き起こす能力を高める。「ビルレンス遺伝子には、有害な産物を作り出す抜群の能力がある」とFerretti は言う。

 「このように凶悪な細菌であるからこそ、大いに関心がある。」こう語るのは、英国の公衆衛生局付属研究所呼吸器感染・全身感染研究所の所長であるRobert George である。「ほとんどの人の場合、一生に一度は不快な連鎖球菌性咽頭炎にかかる。」ところが化膿連鎖球菌が血液や筋肉に入り込むと、トキシックショック症候群や壊死性筋膜炎のように生命にかかわる疾患を引き起こす可能性がある。

 化膿連鎖球菌の内部には、4種類のウイルスのゲノムがある。「化膿連鎖球菌は、この4種類のゲノムを取り込んで、その武器を増強した」とFerrettiは言う。このウイルス遺伝子には、重症の感染症に見られるような死の危険がある免疫系の過剰反応を引き起こしうる数種類の「スーパー抗原」類似のタンパク質が含まれている。「この細菌に感染すると、症状は急速に悪化する」と彼は言う。

 ずる賢い化膿連鎖球菌がヒトに感染するためのもう1つの戦略は、ヒトのタンパク質を模倣することである。化膿連鎖球菌遺伝子のうちのいくつかは、コラーゲンに類似したタンパク質をコードしている。コラーゲンとは、腱のような結合組織にあるタンパク質のことである。このコラーゲン類似タンパク質に対する免疫反応が起こると、自分自身の身体組織を攻撃し始める可能性があり、このようにリウマチ熱の症状である関節炎を説明することができる。

 化膿連鎖球菌ゲノムは大腸菌ゲノムの半分の大きさしかない。化膿連鎖球菌ゲノムには、自ら増殖するための代謝経路がないのである。「化膿連鎖球菌はヒトを利用する。」例えば、のどの裏側の組織を攻撃することによって「自らが増殖するために必要なものを手に入れている」とFerretti は説明する。

 「化膿連鎖球菌とヒトとの付き合いは、数百万年にも及んでおり、化膿連鎖球菌はヒトのことを非常によく知っている」とFerrettiは言う。彼は、これで化膿連鎖球菌をより効果的に叩けるようになったと考えている。「(ゲノム配列の解読)によって効果的なワクチンを考案できることになったのは、とても興味深い」とGeorge も認める。

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