薬としてのRNA !リボザイムじゃないよ。(うっかり送信電子メールの回収?)
トピックスで紹介した『新しい抗凝固薬』(Nature 2002年9月5日 Vol. 419)なんだけど、“抗凝固薬”として優れているから取り上げたんじゃなくて、物質としての特性が、治療薬として合目的なので、紹介したわけなのだ。
最近、RNA の周辺がにぎやかになっている。アプタマーってのは、蛋白質に結合する事が可能な“短い RNA”のことで、抗体のように特定の分子と結合出来る。
この特性を応用して、血液凝固カスケードで重要な働きをしている蛋白質に結合して、その働きを阻害してしまうってのが、今回の薬の話。
でも、それだけじゃ、別に驚く事でもないし、『新規の化合物が出来たんだ』くらいにしか思わないんだけど、驚くのは、その後の話なのよ!!
RNA が薬物になっているとすると・・・・・・、そうです、勘の良い(このホームページで良く勉強している人)はおわかりですね!!
RNA なんだから、相補的な RNA で“ハイブリダイズ”出来ます。ということは、解毒剤が簡単に、、、っゆーより、治療薬が出来た時点で、同時に解毒剤も出来るって事なのです。(まぁ、そんなに簡単ってワケじゃなさそうなんだけど、理屈としては簡単だ!)
手術中に用いられるヘパリンと手術後に用いられるヘパリンの解毒剤からは、有害な結果が生じることが多いし、もう1つの一般的な抗血液凝固薬であるワーファリンは、投与量の調節がえらく難しく、しかも、解毒剤はない。というわけで、画期的な事なんだよ。
で、さらに話しは飛躍する。だったら、他の薬もコレ(アプタマー)で出来れば、副作用が出た時にすぐに解毒剤を注入できるジャンって。
この開発者チームの一人である Sullenger 氏もこう言っているらしい。
麻酔、化学療法、そして子供や高齢者の治療では、患者毎に投与量の異なる薬剤が用いられるが、これがアプタマーと解毒剤の組み合わせで作り出せるかもしれない。このような組み合わせができれば、投与した薬物によって悪影響が現れた場合や誤診があった場合に投与した薬剤の効果を打ち消せるようになるかもしれない。『それは、うっかり送信してしまった電子メールを(相手に届く前に)回収できるようなものだ。』ってね。