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2002年10月 アーカイブ

2002年10月05日

ドラマと小説のネタ

またまた、BMJ に面白いというか、すごいというか、なんとも言えない論文が載っている。

『テレビドラマの救急救命率の高さには、辟易する。患者家族に過大な期待と妄想を抱かれて、現場の医師たちはエライ迷惑だ。』ってな意味の論文だ。(かなり意訳でゴメン)

過大な期待と妄想って言えば、週間モーニングに連載中の『ブラックジャックに・・・』も面白いんだけど、こんな熱血漢、ほんまにいるんかいな?ってな内容だよな。
って、言いながら、自分も熱くなって読んでるんだけどね。

自分の責務を果たす為(スキルアップ、知識、技術の習得)に、努力もしないのは論外だけど、その上でクールに振舞いたいものだと思っている。


・・・でも、やっぱり、医師の世界はドラマになるんだよね。テレビドラマが論文のネタになっちゃうんだからな。
気になる人は、↓ココ、見てみたらいかが?(英語だけどね)
TV dramas may raise false hope of surviving heart attack


薬剤師の世界のドラマ(小説)って、・・・明薬出身の作家、高田崇史のQEDシリーズくらいしか知らない。しかも、スゲーつまんないやつ。(ファンの人、ゴメン)
絶対、論文のネタになんか、されないだろうネェ。
でも、『薬剤師に過大な期待をするな。調剤ミスなんて日常茶飯事だ。患者の病状に思いをはせて調剤している薬剤師の数なんて、ほんの2割から3割だ。』なんてのを論文にすると、かなり、インパクトあるんだろうなぁ、一般人には。

2002年10月07日

コンピュータの進歩と伴に

ついに、蛋白質の1次構造から、3次構造が予測可能な時代に突入した。
(Journal of the American Chemical Society 124, 11258-11259 (2002 )で報告されている)

とはいっても、アミノ酸20個程度の合成蛋白を核磁気共鳴分光法で形を明らかにしたものと、コンピュータシミュレーションで予測した形が、ドンピシャだった、というだけなのだが。

この小さな一歩(技術)が、いわゆるプロテオミクス(範囲を狭めれば structural biology かな)という分野で、大きな一歩(巨大蛋白質にも応用できるのか?)となるのかどうか、私にはわからないが、すくなくとも、実験せずにシミュレーションだけで解析できるなら、製薬企業などは喉から手が出るほど欲しい技術に違いない。
(うーーん、すぐ、株の事を考えちゃう私って、、、、)

DNA塩基配列から蛋白質の立体構造を予測するという研究は、塩基配列の解読が終了する前の時点から、ポストジェノミクスとしてのプロテオミクスとして重要性が叫ばれていた。
・・が、それを解析するバイオインフォマティクス分野でのハード・ソフトの能力が追いついていない状況だったのだ。

バイオインフォマティクスとは、その名の通り、生物情報処理学のことだ。何をするかといえば、コンピュータを使って、生物情報を処理する・・・・なんたってプロテオミクス分野の情報量はとても人間が電卓で・・・・なんて無理だからね。

最近の生命科学関連の研究は、いや、生命科学だけでなく、全ての分野の研究にはコンピュータが必須のツールになっている。コンピュータのハード・ソフトの進歩無しには、こちらも進歩しないという良い例だろう。


ところで、ムーアの法則というのご存知だろうか?決してあやしい法則じゃないよ!!

ムーアの法則というのは、半導体の集積度が1年半で2倍になるという法則で、インテル(米Intel社)の創設者の一人、ムーア(G.Moore)が1960年代に予測した。

ここで半導体をCPUに置き換えると、集積度が2倍になると処理時間が1/2になると考えてよいから、1年半で処理時間が半分になることになる。

ビックリでしょ!!!この倍々ゲーム、延々と続いているんだよ。だって、指数関数的な集積度ってことじゃない。毎回、今度は無理だろうって言われながらね。
(おかげで、私なんぞ、2~3年でパソコンの買い替えを余儀なくされているから、あまり、進歩して欲しくないという気持ちもある。)


3年前に24時間かかっていた処理時間が今年は6時間に短縮されて、しかも、演算のロジックもチューンアップされたからこそ、蛋白質の1次構造から、3次構造が予測可能になってきたんだろうね。

私が思うに、この業績は人類にとって『プロテオミクスという大海原に漕ぎ出す為のオールが手に入った。』っていう程度で、まだまた、蒸気エンジンの時代じゃないれど、かなり、大きな1歩には違いないと睨んでいる。みなさんは、どう、思いますか?

2002年10月11日

自宅パソコン WebServer 化計画

ワケあって、WebServer の増量に迫られた。その為、使ってないパソコンを引っ張り出し、WebServer にする計画を立ててから1週間、昨日、THE INTERNET(注1)に我が家のパソコンが接続したのだ。おおっ、感無量。こんなちっぽけな我が家のパソコンが、世界中の人からアクセスされる可能性があるのだ。


ホームページを作り始めてから、早いもんで、自分で作成したホームページは5個になった。
1つは、ここ。私のホームページ。そして、For P club 勉強会。
そして、私の勤務する二六堂薬局のホームページ。
ここまでは、いわゆるオープンにしているホームページだ。Office Oh!NO、二六堂薬局 は検索サイトに登録してある。

あとは、Dr の Golf Competition のホームページ。これは完全なクローズドサイトでコンペ参加者と医院、薬局の関係者だけが参加している。掲示板も一番アクティブなサイトで、WebMaster 冥利に尽きるサイトでもある。
最後の一つは、姪っこと甥っ子のホームページだ。クローズドにしているわけじゃないから、暇な人は見にみてね。あおいとたくみのホームページ。写真がメインなので、かなり重いけど。


で、何故、増量の必要に迫られたかというと、Golf Competition のホームページでティーショットの動画を公開する計画が持ち上がったのと、我が輩のⅡ世誕生に当たり、そのホームページを開設し、可愛い写真(親馬鹿)をバンバン見せたいからなのだ。


ところで、現在、開設しているホームページはすべて、インターネット接続プロバイダが提供してくれる雀の涙ほどのサーバーエリアに置かせてもらっている。例えて言えば、軒先を借りて商売しているようなものなのだ。だから、ホームページの URL が プロバイダーのドメイン名の後にディレクトリ名を付けた型になっている。
http://www.ohnos.org/drug/ ←こんな感じで、プロバイダである hi-ho.ne.jp の後の /mitsuyuki/ の部分が、借りている軒先なのだ。

こんなサーバーに動画ファイルを置こうもんなら、3~4人分で一杯になっちゃうのだよ。
15秒位の動画ファイル1つで、1メガバイト位あるからね。雀の涙は10メガバイトしかない。(オプションで増やせるけど、めちゃくちゃお金がかかる)
まして、生まれてくる娘(多分)の写真や動画ファイルは、大量に生成される可能性が高いから、メガバイト単位では、埒があかないのである。1000倍のギガバイト単位じゃないとね。


そこで思いついたのが、自宅サーバー化計画なのだ。だって、自分のパソコンなら、ハードディスクの余裕がある限り使えるし、100ギガバイトでも、2万円位で買えるしね。100ギガバイトをプロバイダから借りると、月々50万円位かかるんじゃないかな?年間600万円だよ!ヒェーっ。でも、100ギカのレンタルサーバーなんて聞いた事無いけどね。

それに独自ドメインを取得するから、ディレクトリ名を付けた軒先を借りてるような URL じゃなくって、http://www.marinn.org のように本店扱いなのが嬉しいのである。決して /abcdefg/ のような軒下ではなくて、自分のホームページなのだ。
(この URL は、まだ、本格稼動してません。セキュリティ対策が済み次第、オープンします。ちなみに marin は娘の名前です。)


で、その経緯は・・・ Web Server ・・・あっさりと出来上がってしまったのだ。追加経費ゼロ円(現在の手持ちリソースの有効利用だから当然)。ルーターのNAT(Network Address Translation)の設定でトラブったが、ファームウェアを up date したら、パケットが流れた。
(-_-;)
チクショー、トラブルの原因は製品のバグじゃんかよー!パケットが流れず5時間も悩んだのに、俺の5時間をどうしてくれるんだぁ!!
お怒り>アライドテレシス

HTTP Server と FTP Server の設定を済ませ、CGI を動かす為 Perl をインストール。
この辺は、特に問題なし。難しいところは無い。

しかし、THE INTERNET に接続したのは嬉しいのだが、セキュリティがとっても大切なので、まだ、おおっぴらに公開できないのだ。(運の良い人は、試運転の為、Server service を開始している所に出くわす事があるかも!)
コマーシャルなどでも、インターネットセキュリティ、大切、大切、トータルソリューシンョンを考えるなら・・・と連呼しているが、何が大切なのか理解できない人もいるだろうから、説明しよう。

ひとつには、悪質なクラッカー(注2)にサーバーに侵入されて、データが壊される。だから、侵入されない様にセキュリティをアップする。これは、誰にでも理解出来る理由だ。
企業などでは、業務がストップしちゃうから大問題だね。

だが、もう一つ、大事な事がある。セキュリティが甘いと、悪質なクラッカーが攻撃を仕掛ける時の、踏み台にされてしまうという事なんだ。クラッカーは自分の足跡を残さない様に、セキュリティの甘いサーバーに潜り込んで、別人を装い、攻撃を始めるのである。
この目的の場合は、ファーストアタック先には実質的な被害はない。破壊したら、自分の踏み台にならないからね。
こうして、セキュリティーの甘いサーバー管理者は、知らず知らずの間に、悪質クラッカーの攻撃のお手伝いをしてしまう事になるんだ。(注3)

だから、『自分のホームページのデータファイルはバックアップを取ってあるから壊されても大丈夫、だから、セキュリティは甘くても良いんだよ』なんて言うのは大きな間違いであり、無知ではすまされまいのである。こういう自分勝手な行為はマナー違反であり、犯罪なのです。

というわけで、いま、インターネットセキュリティの具体的な設定方法の勉強中なのです。


注1:言葉の定義で申し訳ないのだが、正しくは、定冠詞を付けて大文字で表記した場合に限って、皆さんのよくご存知の“インターネット”なのである。
THE INTERNET を普通に“インターネット”と呼ぶのは本来、間違いなのだ。
inter + net でネット(LAN)とネット(LAN)の間の通信網の事を言うのだから、たとえば、企業の東京支社と大阪支社のそれぞれの LAN を接続していれば、その接続網を“インターネット”と呼ぶのが、本来の使い方なのだ。 ちなみに intra + net はネット(LAN)の内側、外に出ない、いわゆる、その LAN の事を言うんだよ。

誰が言い出したのかしらんが、intra の反対語は extra だろうが・・・って突っ込みを入れたいのは俺だけではあるまい。でもインターネットを聞き慣れちゃったからエクストラネットじゃ、なんだかなぁ!

注2:クラッカーをハッカーと間違えている人が多い。コンピュータに侵入し悪さをする人をクラッカーと呼ぶ。ハッカーはオタク的にコンピュータに詳しい人を言い、良い事もする。

注3:知らずに犯罪に荷担する事になって、国際裁判所に呼び出される事例もあるらしい・・・・・おぉー恐っ!

2002年10月18日

汗臭い話 (汗の中の抗生物質)

人のかく“汗”に抗生物質が含まれているという話は、以前、トピックスでも紹介した([452] 汗に含まれる抗生物質---体の洗いすぎは逆効果になるかも)が、やはりというか、当然なのだけど、この分泌能にも個人差があるという話しが、N Engl J Med 10 October 2002 Volume 347, Number 15 に載っている。

この論文は、アトピー性皮膚炎患者の二次感染?(病態形成の原因?)である皮膚感染と内因性の抗菌性ペプチドの分泌量との関係を考察していて、『これらペプチドの濃度がアトピー性皮膚炎患者の皮膚ではより低いことを見出した』としている。だから、黄色ブドウ球菌感染が起こりやすいのだと。
(興味のある人は、・・・・自分で探すか、購入して見てね)

腸内細菌が人によって様々なのと同じように、皮膚常在菌も人によりバラエティに富んでいる。その理由の一つが、これなのかもしれないね。

ならば、こう考えても良いのだろうか?(みんなの意見を聞きたいよ!!)
粘膜免疫システムを思い出して欲しい。抗原に対する免疫応答に個人差がある理由の一つに腸内フローラの多様性が挙げる事が出来る。つまり、食物アレルギーが“出る、出ない”は、その人の腸内フローラのバリエーションによっているところがあるというアレだ。(かなり、端折っているが、まぁ、気にしないでね)
GALT の成熟には細菌が欠かせず、腸管粘膜から吸収される蛋白・アミノ酸は全身性(胸腺)の免疫応答をアネルギーするというアレだよ。
とするならば、皮膚常在菌がバラエティに富んでいるという事は、皮膚から侵入する抗原に対する免疫応答にも、個人差があるのだろうか?

また、プロバイオティクスの考え方の延長で行くと、正常な皮膚常在菌の形成が、正常な皮膚を作る事になるから、除菌・抗菌などとやたらと細菌を排除するのは、皮膚において正常な免疫応答を形成できない!?って考えて良いのだろうか??(だとすると、清潔にし過ぎる事が、感染防御を損なうだけじゃなく、アトピーの原因の一つとも考えられるのだが。。。。)

“栄養を吸収しなきゃならない”と“異種蛋白から身を守る”という、相反する機能を要求される腸管粘膜と皮膚とを同一のシステムと考えるのには、無理があると思うが、気管支などのように栄養吸収するワケじゃない所にも MALT など存在する事を考えると、まんざら、的外れな考えでもないのかも・・・って思っている。

もっとも、アトピー性皮膚炎の抗原侵入門戸が皮膚とも限らないしなぁ!うーーむ、やっぱり、アトピーは考慮しなきゃならんファクターが多すぎるよ!


この間テレビで、『民間アトピー療法に頼って、金をボラれて、症状が悪化・・・・』なんてのをやってて、『民間療法に騙されないで、病院に行こう』っていう趣旨だったけど、病院に行ったからって治るわけじゃないところが、悲しいところでもあるよね。医師・・・というより研究者だって原因がわからないんだからしょうがない。だから、藁をも縋る気持ちで、マユツバ療法に手を出しちゃうんだろうね。

でも、民間療法と病院での治療の決定的な違いは、病院のそれはエビデンスに基づいているってこと。個人の経験に基づく民間療法とは一線を画している。

薬剤師のみなさん、スキンケア程度のアドバイスならOKだけど、民間療法まで含めてのアドバイスは慎重に行なおう。

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2002年10月30日

処方箋発行 初のダウン について

今まで常識として疑わなかった事でも、実は、全く逆だった・・・今まで、この手のネタは何度かトピックスで紹介してきた。今回はこのネタから入ろう。『アスピリンと冠動脈バイパス手術による死亡率 』。

簡単に紹介すると『冠動脈疾患でバイパス手術が行われる時、手術の前後には、出血や合併症の原因になるためアスピリンは服用禁忌といわれてきた。ところが、10月24日発売の医学誌 NEJM で報告された研究によると、この常識は全く逆で、手術前後にアスピリンを服用すると、合併症、死亡率ともに劇的に下がって、多くの患者の命を救うということが明らかになった。』ってな事だ。

このネタをココで初めて知った人は、NEJM に掲載された論文のアブストラクトをトピックスで紹介しているので、是非、目を通して欲しい。循環器の専門のDrは当然、知っているだろうが、薬の使用法に関する事なので、我々薬剤師も知らないではすまされないと思う。
米心臓協会会長のロバート・ボノフ博士が、『ここで得られた結果は、明確、かつ、決定的だと言える。これでバイパス手術のやり方が変わることだろう』って話しているくらいだから、かなり影響力のある論文なのだ。


とは、言ったものの、薬の知識なんて無くても仕事が出来ちゃう職業だから、知らなくてもいいんだけど。。。。

ところで、業界の新聞によると今年になって分業率が下がった地区があるらしい。これに関しては、別に驚く事はないだろう。当然の結果だと思う。医療費高騰の原因の一つに、薬剤師へ支払う“意味の無い技術料”があることが、バレてしまいつつあるという事だ。
負担率が上がった患者さんの目は、節穴じゃない。自分の懐が痛まないうちは、無意味な技術料でも『別にいいんじゃない?』って払ってくれたが、これからはそう上手く?はいかないのだ。
(きびしぃ~~~)

自分で言うのも変なのだが、薬剤師ってアホなヤツが多いと思う。何処がアホなのかって聞かれても『アホ以外の適当な言葉が見つからない』って言うしかない。
多分、ほとんどの薬剤師は、この手の情報を得る為の努力を自分からする事は無いと思う。医学関連雑誌の定期購読やインターネットでの情報収集などの事だが。

私は、処方箋発行率と点数は、今より下がっても良いと思っている。処方箋発行率が落ちれば、巷のアホ薬剤師は淘汰されるからだ。
アホ薬剤師の仕事ぶりを見て、“意味の無い技術料”などと思われては心外である。
薬剤師として仕事するなら、勉強するのは当然ってくらい、気概のある薬剤師だけが残れば、少なくとも、今よりは薬剤師の技術料に正当な評価が下る事になるだろう。

そして、医療において、薬剤師のポジションが“必要な職業”と思われる事を願って止まない。

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