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2007年03月03日

癌幹細胞が癌再発と関連

20070303_fast_food.jpg現状を取り繕う事に意義があるのか?はたまた、治癒させる事が目的なのか??

がん治療って、これを見失いがちだと思う。近くにいればいるほど『灯台下暗し』なんだろうな。尤も“奏功率=生存率”って疑っていなければ、見失うもへったくれもないんだけど。

ところで、新しい発見があった時の対応っていうのが、やっぱり日本人だなぁって思うのがコレ!『薬剤溶出性ステント(DES)留置後の予後に疑問を投げかける研究結果が海外で相次いで発表されている』ことに対する、日本の医学界の反応!

【横山氏(日本循環器学会総会・学術集会の会長)は、こうしたDES留置後の予後問題について、「(日本では)まだ十分なエビデンスが集まっているとは言えない」との認識を示し、3月15日から神戸で開かれる学術集会での議論を踏まえ、「学会理事会などを通じ対応を協議していきたい」などと言及した。】

・・・・・、なるほど、『これから、何をやっていけばいいのかを、みんなで話し合いたい』ってことで、まだ、何にもやっていないと・・・ふぅ。

日本が基礎でイイ線行っているってのは、基礎は責任がないから!ノビノビ出来、臨床がからっきし世界をリードできないのは、臨床には責任が伴うから!萎縮しちゃってる!!

ってことで、いいのだろうか??日本人は、責任を負うのが“苦手”だからね。連帯責任が好きなところを見ても、それは明らかだよね。

だから、日本発の臨床における【意識改革】【パラダイムシフト】ってのは、100年経ってもありえないんだろうなぁって思う。先走ってやっちゃって、後で『ホラ、みろ』って言われるのが、本当に嫌いなんだよね、日本人は。(そして“先陣を切る”事を評価しない国民性でもある。全般的には、これが理系研究者を評価せず、尊敬もしない事に繋がっているのだろう。ピカ新の薬が開発できないのも、ベンチャー企業が育たないのも投資しないのも同じ。功名心に否定的ってこともあるのかな?)

でも、これは臨床的サービスを提供する側だけの問題じゃなく、それを享受するクライアント(患者)側の意識の違いもあるんだと思う。たとえば、がんに罹患した時のリアクションが、世界と日本では違うからね。


さて、何度か取り上げている“がん幹細胞”。時代は、がん幹細胞の存在とそれが病態に関与する事は“決定的”だといえるところまで来ていると思う。

でも、日本人に『疾患への奏効性が生存率の適切な代理指標となることを示す証拠は驚くほど少ない』っ言えるだろうか?

【意識改革】【パラダイムシフト】って言葉は知ってるけど、自分からは言い出さない、やりださない、恐る恐る、ちょっとずつ・・・・。

そして、がん治療の最前線にいる人たちほど、今までやってきた事への思いが断ち切れず(っていうか、自分を否定する事って考えちゃうのかも?!そんなことないのに)、抗がん剤レジメンを捨てられない(代わるものが無いからしょうがなく)・・・・。

『研究者らの報告によれば、現行の抗癌療法は劇的な効果を発揮しうるが、ごく少数みられる癌幹細胞も治療標的となっていない場合、長期寛解に至る可能性は低い』をどのように受けとるのだろう??

癌幹細胞が癌再発と関連

提供:Medscape

研究者らの報告によれば、現行の抗癌療法は劇的な効果を発揮しうるが、ごく少数みられる癌幹細胞も治療標的となっていない場合、長期寛解に至る可能性は低い

Allison Gandey
Medscape Medical News

【2月26日】現行の抗癌療法は劇的な効果を発揮しうるが、ごく少数みられる癌幹細胞も治療標的となっていない場合、長期寛解に至る可能性は低い、と研究者らは述べている。最近開催されたBlood and Marrow Transplantation tandem meeting(コロラド州キーストーン)では、ごく少数みられる未分化の長期生存細胞が癌再発に関連する可能性のある癌増殖を担うことが報告された。

「多くの癌は自己再生能をもつごく少数の細胞から発生し、これらの細胞は、より多くみられる分化した子孫細胞とは生物学的に区別される。このことは、我々のような本分野を専門とする研究者には十分理解されつつある」と筆頭研究者であるジョンズ・ホプキンス大学Kimmel癌センター(メリーランド州ボルティモア)のRichard Jones, MDはMedscapeに述べた。「この点は、治療を担当する多くの腫瘍専門医に十分認識されていない可能性がある」。

この概念を取り入れた新規治療法は、まだ治療の主流となる段階ではないが、癌幹細胞と他の大多数の細胞を区別することで、画期的な新規治療法が開発される可能性がある、とJones博士は指摘した。「パラダイムの変化が必要である」とも同博士は述べた。現在有効な治療法の多くは、分化した癌細胞を標的として開発されており、生物学的に区別される癌幹細胞に対する活性はほとんどない可能性がある。

今回の知見に関するニュースリリースにおいて、Jones博士は現行の癌治療を「草むしり」にたとえている。「タンポポをむしるとき、もし根から抜かなければ、またタンポポは生えてくる」。雑草の根のように、ごく少数の癌細胞が分裂能をもち、新しい癌細胞へと成長している可能性があると述べている。


臨床的な奏効は全生存率の改善に結びつかない可能性

現在、ジョンズ・ホプキンス大学および他の施設では、幹細胞を標的とするモノクローナル抗体といった新規治療法に関する臨床試験が実施されている。「まず、化学療法や幹細胞移植といった手法を用いて、患者の症状軽減を目的とした、癌そのものに対する治療を行う。これらの治療は癌細胞の分裂過程を阻害する。すなわち、タンポポの地上部に対して有効性を発揮するのである。その後、続いてタンポポの根、すなわち幹細胞に対する治療を行う」とJones博士は述べた。この臨床試験の結果は、およそ1-2年以内に得られる予定である。

治療による客観的かつ臨床的な奏効は、全生存率の実質的な改善と結びつかないことが多い、と会議でJones博士は示唆した。疾患への奏効性が生存率の適切な代理指標となることを示す証拠は驚くほど少ない、と同博士は主張した。

臨床試験において臨床的奏効性を主要評価項目とする主な利点は、数週間から数カ月間にわたって測定可能であり、医薬品開発の段階的過程をより迅速かつ効果的に進めることができることである、とJones博士は説明した。これとは対照的に、生存率に対する有益性を実証しようとすると、臨床試験デザインは大幅に複雑となり、また、通常、統計学的有意性を示すためには、多くの患者数と長期間の追跡調査を累積する必要性が生じる。

従来の奏効性判定基準では腫瘍の大きさを測定するため、ごく少数みられる癌幹細胞集団の変化が反映されない可能性がある、とJones博士は指摘している。「我々が癌幹細胞の存在を知ってからしばらくの時間が経過したが、このような非常に少数の細胞集団を同定および標的とする方法については、さらに研究を進めていくための初期段階にすぎない。他の多くみられる癌細胞の死滅が可能な治療法であっても、癌幹細胞には有効でない可能性がある」とも同博士は述べた。


Blood and Marrow Transplantation Tandem Meetings. February 8-12, 2007.

Medscape Medical News 2007. (C) 2007 Medscape


さて、Science 誌に非常に興味深い報告があった。
食べ物の臭いを嗅ぐだけでお墓が近くなるよ(Smelling Their Way to an Early Grave)

Science February 23, 2007, Vol.315

動物が飢餓状態に近い状態で育てられると、自由に食べられる状態に比べて遥かに長生きする。ショウジョウバエ(fruit fly Drosophila)でさえ、低グルコースの餌、5%糖-酵母成分を与えられたハエは、15%糖-酵母成分を与えられたハエに比べて遥かに長生きする。

このような食餌制限の効果は、ハエがもっと沢山食べられるようにした状態では簡単に元に戻ってしまう。

Libert たち(p. 1133, 2月1日のオンライン出版、および、2月2日のLeslieによるニュース記事を参照)は、あまり予測されていなかった以下のような現象を見つけた:ハエの餌(酵母)に対する臭いを感じさせるだけで、ダイエット効果を弱め6~18%も寿命を短くする。

臭いの受容体を持たないショウジョウバエでは、臭いを嗅ぐことの出来る正常なショウジョウバエに比べて長寿となる。


これ、いま“流行”してる“メタボリック・シンドローム”研究に影響する事、間違い無しである。(匂いは膜7回貫通GTP共役型受容体だから、“味覚”受容体の機能としても同様な事が予想されるだろう)

でも、本来、この分野の研究っていうか知見は、いわゆる生命活動の解明に繋がるようなもので、非常にアカデミックなものなのだが、安易に臨床と結び付けてしまったため(臨床と結びつかないと、お金にならないからなぁ)に、変な方向(マイコミ・シロウトのネタ)に行ってしまっているのが現状だ。(例えば『医学のあゆみ』Vol.217.№1.2006/4/1“メタボリック・シンドローム2006-2007:REVISIT”などを読んでると、なぞ解きみたいでワクワクするくらい面白いのに、新聞やテレビで『内臓脂肪がどうたらこうたら・・・』って言われたりすると、一気に萎えちゃう)

このたった一言で言い表されている“メタボリック・シンドローム”ってのは、一つや二つの代謝経路の事を対象にしてるんじゃなくって、非常に広範囲に及ぶネットワーク的な代謝を含むので、本来、何処か一つに作用する薬やサプリメントで、そのネットワークをどうにか出来る筈も無いのだが、逆に金の成る木にぶら下がりたい輩が『コントロール出来る』って嘘を付けるのは、その広大なネットワークが故に、懐が深いため(生命の危機管理能力、危機回避能力、適応力って言えばいいのか)に、嘘が表面化しない事に拠るという皮肉な結果に成ってしまっている。

だから、『匂いを嗅ぐダイエット』とか、下衆な領域で悪用されないか心配なのだ。


こうして見ると、基礎と臨床ってやっぱり凄い隔たりが在るなぁって感じる。
そして、この隔たりは、『臨床ってのは、相手(患者)があることだから・・・』、これ一言に尽きるんだろうなぁ。

基礎(=サイエンス)が解き明かす事実ってのは、残酷な場合もあるからね。臨床(=アート)は人の心を豊かにするものとして存在意義があるわけだし、クライアント(患者)は利益(=病気の治癒=幸せ)を求めてくるのに、残酷な宣告は・・・・。


p.s.ところで、ずぅ~っと、もやもやした疑問があるのだが、言っちゃっても良いだろうか???それは、、、どこぞで“癌治療専門薬剤師”とか言うものの試験が行われてるらしいのだが、この薬剤師って、一体、何するの?抗癌剤の特性を一杯知ってる薬剤師ってことなのかなぁ?そんなのデータベースで代替できるから、違うよねぇ!?
もしかして、腫瘍内科医(がん化学療法専門医)の処方に、イチャモンつけるとか??(ありえねぇ~~~~)でも、マジなら、スゲェ~~~~~~。

2007年03月06日

p53 がん抑制遺伝子、「悪役」に

20070306_asura.jpgp53 の背反する作用が発見された!といくつかの新聞が報じている。が、、、
近々の研究結果より見え始めてきた“遺伝子”という概念の変更すら迫られる知見から考えると、特別に驚くべき事じゃなく、これは当たり前の結果だとも言える。

それはいいとして、この発がん過程(というより生命活動)の主役級のキャラクターである p53 の相反する作用(正義の味方が悪の大魔王だった)という事を、朝日新聞が取り上げている事には“驚いて”しまった(笑っちゃった)。

というわけで、このエントリーを“朝日系列”の墓穴堀りに対する突っ込みエントリーにしようか、純粋に生命科学の驚きを紹介するものにしようか、迷ったんだけと、その両方で行く事にした次第だ。

さて、朝日系列(新聞、テレビ)は、悪人を作って正義の味方を演じる事に徹している(お家芸、伝統芸能とも言う)訳だが、その為に、シナリオの登場人物には“固定”したイメージを与える事を常としている。(嘘は言わないが、別な側面を恣意的に知らせず、印象を操作する)

『中国はカワイソウ、日本は悪者。韓国は犠牲者、日本は非道』というのが、その最たるもので分かり易い。しかし、大きな出来事には“固定した特徴”“一面しかない個性”というのは有り得ず、これまた大きな目で見れば、国家間の争いすら生命活動(地球環境)のネットワーク内で、バランスの取れた必然だったりすることからも、それがわかると思う。

朝日新聞が伝える以外にも、日本の中国への侵攻は欧米列強から結果的にはアジアを守る事に繋がり、同時に韓国へのそれは清国支配が続いた朝鮮半島の解放を意味したし、kmoto さんのお知恵を拝借すれば、李氏朝鮮時代に続いた朱子学思想の押し付け(従わないものは粛正されたであろう抑圧)から国民を解放したとも言えるわけだ。(kmoto さんは民族的特徴を“刷り込まれた”と考察しておられるが、粛正による人為的淘汰の方が説明し易い。要は押し付けに従う人は生き延び、反対する人は殺され、遺伝子の多様性は失われたという事。みずから手をかけなくても社会的に失脚させれば同じ結果を得られるし。実験動物や品種改良が短期間に出来る事からも証明されると思う。司馬 遼太郎氏が朱子学を忌避する理由までは、想像し得ないが・・・)


しかし、この物事に普遍的に存在する二律背反を認めてしまうと、分かり易い“善と悪”を示せなくなっちゃう(朝日の当事者達も、当然、わかっていること)。だから、朝日系列は、頑なに、このようなものの見方は受け入れず、無視(スルー)を決め込んでいる。


にもかかわらずである!!!!!


発がん過程(生命活動)においての p53 のキャラクターは“正義の味方”で固定していた筈。(今となっては“古典的”という言葉を使わざるを得ないんだけど)その p53 の古典的なイメージを頑なに守り続ける事に徹するのが、こういう場合の朝日系列の対応のセオリーだった筈だ。

なのに、すんなりと、『正義の味方は悪にも成り得る(悪は結果的に正義・利益にも成りうる)』という事を理解しているって事を、披露しちゃったわけだ。

誰かに突っ込まれる可能性もあるわけだから、終始一貫した姿勢を維持するためにも、このニュースは“スルー(無視して報道しない)”すべきだったのに、やっちゃったのである。

というわけで、私が突っ込んであげる訳だが、もしかしたら、朝日に身を置く理系出身者のライターは、朝日原理主義に洗脳されていないかもしれない。(理系の脳を持っていると洗脳されずらい!?)

っていうか、こんな所から、状況に応じての対応(=報道のポリシー)を都合よく変えちゃう姿勢を突っ込まれるとは思ってもみなかったのかも!!上層部は、専門的な内容だから意味もわからず掲載をOKしたって事もあるのかな?!


どちらにしても、『それが出来んなら、日本軍の功績も飲み込めよ』ってことだ。
サイエンスの分野ですら、時代が物事の二律背反を飲み込むように成りつつある現在、外交に関しても、片方の国の一面だけを取り上げて、どっちが悪いの、どっちが正義だのとの“意味の無い”ことを言い続けたり煽ったりしていると、そのうち相手にされなくなって置いてきぼりにされちゃうよ。
(韓国大統領のノムヒョンなんて、自分の立場が危うくなったら、また、火のついたように日本批判を始めた。もぉ、そんな子供みたいなミエミエの外交姿勢は止めたほうがいいと思うし、都知事へ立候補した“浅野某”なんて、韓国を出汁に使った石原批判。こんなバカじゃ地方じゃ勤まっても、首都じゃ無理だよ。民団、総連がらみの組織票ねらいか、都市部に多い朝日真理教信者の票狙いはミエミエだしね。政党が役に立たないからだよなぁ!しっかりしろよ!自民党、民主党!!・・・おっと、脱線)


最後に、この二律背反を飲み込まなければならなくなったサイエンス分野での新知見を、新聞では報道されないものを紹介して、終わりにしよう。(多分、新聞が取り上げないのは、読者に理解できないからかもしれない。これはこれで、正しい判断だと思う。)

そして、通して見えてくるものは、やっぱり私のにらんだ通り、遺伝子に特定の機能というものはなく、その状況に応じて辻褄が合うように“利用”されているということだ。(本当か??)

◆ここでは、古典的には、がん細胞ではテロメラーゼ活性が亢進しているという事を理解していなければ、この知見で驚く事が出来ない。テロメアの機能や細胞周期、とくにS期における DNA 倍増作業においてのテロメラーゼの役割・・・・などなどがある為、新聞では取り上げなかったんだろう。

染色体不安定 --- どんな長さでも

Francesca Pentimalli

テロメア結合タンパク質TRF2(テロメア反復結合因子2)は、テロメアの完全性を維持することでよく知られており、いくつかのヒト腫瘍でその発現レベルが高いことがわかっているものの、それが癌で果たす役割は不明である。現在、Maria Blascoらは、マウス皮膚発癌モデルを用いて、TRF2の過剰発現に発癌性があること、テロメラーゼの欠乏がこの腫瘍形成作用を劇的に強めることを明らかにしている。

Blascoらは以前に、ケラチン5(K5)プロモーターを通じてTRF2が皮膚で過剰発現しているマウスのほうが、UVによる皮膚癌になりやすいことを示している。それを踏まえ、TRF2の過剰発現に腫瘍形成性のさまざまな刺激に対する発癌性があるかどうかをみるため、化学的に誘導した皮膚の多段階発癌モデルを検討した。これにより、K5-Trf2マウスのほうがしばしばサイズの大きな腫瘍を多く発生するうえに、死亡率も高いことがわかった。このマウスが有するテロメアは短く、それは腫瘍を強力に抑制する特徴と考えられることから、前述の所見には驚く。さらに、過剰発現したTRF2 が腫瘍形成にどう影響するのを明らかにするためにK5-Trf2マウスとテロメラーゼ欠損(Terc-/-)マウスとを交配したところ、テロメラーゼの消失およびTRFの過剰発現があれば、自然発生およびUVによる腫瘍のいずれもが劇的に増大することがわかった。

Terc-/-、K5-Trf2、K5-Trf2;Terc-/-マウスの角質細胞を細胞遺伝学的分析に供したところ、TRF2はテロメアの短縮および末端-末端染色体融合(テロメラーゼの消失によってさらにこれが増大)ばかりでなく、テロメア長にもテロメラーゼ活性にも関係なく発生する染色体外テロメア、間質性のテロメア、複数の染色体末端テロメアを誘導することがわかった。この所見は、TRF2の過剰発現が染色体不安定性の誘導によって腫瘍形成を助長することを示し、このような条件下(テロメアが短く、テロメラーゼが不在)では、代替的テロメア維持(ALT)機序が活性化することを示唆している。この考え方と一致して、BlascoらはK5-Trf2およびK5-Trf2;Terc-/-細胞の中に、ALTに典型的な特徴をいくつか突き止めている。

TRF2が過剰発現するヒト腫瘍が多いことを考えれば、以上の結果からは重要な問題、すなわちテロメラーゼ阻害因子に基づく治療戦略は、TRF2が過剰発現する腫瘍には効果がないのではないかという問題が生じてくる。


p.s.『驚く事が出来ない』で思い出したんだけど、『世界でもっとも美しい10の科学実験』の訳者が後書きで一つのエピソードを書いていた。それは、、、
理学博士でもある翻訳者が、大学で哲学の助教授をされているご主人に、、、
『私も、この実験で感動できるのだろうか?』って聞かれて
『出来るよ、高いレベルの物理学の素養を身に付ければね』と答えた後、
『高いレベルの素養を身に付ける事は、私にも可能な事だろうか?』って質問されて
『うっ、それは、難しいかもしれない・・・・』って言ってしまった。
というものだ。

私はこの本を読んで、『へぇ~、すげぇなぁ』とは思ったけれど、訳者のように感動して涙を流すなんて事は無かった。

このご主人と同様に、高いレベルの物理学の素養を身に付けてはいない証拠だ。だけど、、、『随分と高慢な女だなぁ』と直後に感じはしたのだが、でも、そういうのって、あるよなぁって思った。

もしかしたら、今回紹介した知見も、人によってその“感動レベル”は異ったかもしれないね。


以下は資料として、朝日新聞の記事

心不全のからくり解明 がん抑制遺伝子、「悪役」に
2007年03月05日10時01分
 心臓がうまく働かない心不全では、がん抑制遺伝子として知られるp53遺伝子が「悪役」となっているらしいことを、千葉大の小室一成教授(循環病態医科学)らがマウスの実験で明らかにした。高血圧などのストレスで心筋細胞が大きくなって栄養を賄う血管が新たにできる状態を、p53が「異常」と感じて血管作りを阻害。結果として、心筋細胞が満足に働けなくなるという。英科学誌ネイチャー(電子版)に5日発表される。

 高血圧や弁膜症などで心筋細胞が大きくなり、心臓全体が肥大することがある。一部に心筋梗塞(こうそく)が起きた際も心臓の他の部分が肥大する。ストレスに耐えたり、梗塞した部分の働きを補ったりするためだが、なぜか働きが弱まり、送り出す血液量が減ることが多い。これが心不全で、息切れなどの症状が出て、重くなると死亡する。

 小室さんらはマウスの大動脈を軽く縛り、血液が十分に送れない状態にして、心臓肥大を人為的に起こした。心臓の働きは当初維持されたが、14日後に肥大が止まるとともに機能が落ち始めた。

 詳しく調べると、縛った直後から、肥大した心筋細胞に不足した血液を補うため、新たな血管ができていたが、2週間ほどたつと、p53が増え始め、血管もできなくなることが分かった。

 p53が働かないようにしたマウスで同じ実験をしたところ、4週間後も肥大は止まらず、機能も維持された。

 p53は細胞内の他の遺伝子に異常が生じると修復を促し、修復できない場合はその細胞を自殺に追いやることで他への影響を防ぐなど「守護神」のように働いている。

2007年03月07日

亀頭包皮切除とHIV感染リスク

2007030_aids.jpg本日は“お仕事ブログ”の方でも HIV に関係する話題で書いた。別に特別な意味はない。(が、無意識で私を突き動かすものが、何処かにあるんだろう。一つには野党議員の政府に対する頓珍漢なくせに正義感ぶった質問がきっかけになる)

で、非常に興味深い報告が Lancet誌 に投稿されたので紹介するってワケだ。どうして WebMaster's impressions のネタなのかといえば、“包茎手術”に対する一般的な大衆の認識があるからである(笑)。

でも、内容は大真面目・・・・かもしれない。

さて、ここを読んでおられる方は、まず、結果を見ちゃう前に、自分で考えてみるのも面白いかもしれない。

包茎手術をした方がいいのか?悪いのか??

包茎というと、どちらというと『バレると恥ずかしい』みたいな、ちょっとネガティブな印象が付きまとうと思う。週刊誌やエロ本にある包茎手術を行っている病院の広告では、『男の自信回復』とか『これで、ヤリ放題』みたいなキャッチフレーズが踊っている。

包茎手術は、なんだか秘め事。恥ずかしい事。でも包茎を治せば女性を喜ばせる事が出来る・・・。男の葛藤。そんなイメージだ。でも、避妊(妊娠のメカニズム)にしてもそうだけど、秘め事とか、恥ずかしい事にしちゃいけないんだよね。

もっとオープンに、そして、大真面目(笑いと紙一重かもしれないけど)に向き合わないと、HIV 感染は、日本では永遠に増え続け、少子化問題どころか、これが原因で亡国・・・なんてね。でも、有り得ない事じゃないよ?

昨日の国会では共産党の何某が産婦人科医の減少を首相に(詰問調で)質問していた。あの質問をした議員は、産婦人科医は減少は行政的に食い止める事が出来るって思ってるんだろう!だから、その責任は首相(内閣)にあるとして詰問調になってるんだろうけど、、、、ただの馬鹿だよね。現場で働く人の気持ちが、まったく分かっていない。

それに、少子化だけじゃなく、HIV 感染者が増え続けている事だって、これと同じくらい重要な問題な筈なのに、これを質問する議員は、、、、私は知らない。

この二つが、まったく無関係な問題だと思っているのだろうか??医療従事者の感染に対するリスクや恐怖感をどのように考えているのだろうか?


今回の報告は統計学的なものであり、分子的な機序(HIV が細胞に侵入する以前の段階の)を解明しているわけじゃないので、多くの因子が絡まりあっての結果だと思うんだけど、それにしても、『へぇ~っ!!』ってなってしまったワケだ。

亀頭包皮切除はHIV感染リスクを半減

ケニアとウガンダで行われた無作為化試験の結果より

 亀頭包皮切除(包茎手術)はHIV感染リスクを低減させるのか--。ケニアとウガンダで独立して行われた無作為化試験の結果、包皮切除により感染リスクが半減することが示された。詳細はLancet誌2007年2月24日号に報告された。

 今回、米国Illinois大学Chicago校のRobert C Bailey氏ら、米国Johns Hopkins大学のRonald H Gray氏らは、包皮切除のHIV感染予防効果と安全性、そして包皮切除をきっかけに感染リスクを高める性行動が増えるかどうかを評価するため、ケニアとウガンダでそれぞれ無作為化試験を行った。

 試験結果を受けてBailey氏らは、HIV感染予防と生殖医療のための現行サービスに「安価で安全かつ適切な包皮切除サービスを可能な限り早く組み込むべきだ。広く適用するなら、性的に活発になる前に包皮切除を行うという選択も有効かもしれない」と主張している。


包皮切除の感染リスク低減効果は50~60%

 包茎手術が感染リスクを低減する可能性が初めて提示されたのは1986年。それ以降、包皮切除の有効性を示すデータは蓄積され、さらに包皮の存在が感染リスクを高める仕組みが生物学的研究によって明らかになりつつある。このような状況を受けて、HIV感染予防に取り組む国連機関は、今回の2件の研究結果が明らかになるのを待って、HIV対策として包皮切除を勧めるかどうかを判断することにしている。

 Illinois大学のグループの無作為割付比較試験は、ケニア西部のKisumuで行われた。2002年2月4日から2005年9月6日まで、新聞、ラジオなどで被験者を募集し、18~24歳の性的に活発な男性2784人(平均年齢20.0歳)を登録した。結婚またはパートナーと同棲していたのは7%のみ。バイセクシュアルの男性6人を含む。

 これら被験者を包皮切除(1391人)と対照群(1393人、後に包皮切除)に割り付け、1、3、6、12、18、24カ月後に、HIV1/2検査、診察、行動に関する聞き取り調査を実施した。それぞれの被験者に合わせたリスク低減カウンセリングも毎回実施。コンドームは全員に無料で配布した。

 試験は、データ安全性監視委員会による3度目の中間解析後の2006年12月12日に早期中止された。追跡期間の中央値は24カ月。試験中止の時点で、介入群の22人、対照群の47人がHIV陽性だった。登録時にHIV血清陽性だった4人を除き、治療非順守(介入群の4%が包皮切除を受けず、対照群の1%が包皮切除を受けた)の調整を行うと、包皮切除の感染リスク低減は60%になった。

 介入群の有害事象を術後3日、8日、30日後の検診で調べたところ、包皮切除に起因すると見られる有害事象は21件、20人(1.5%)に見られたが、症状は全て中症か軽症で、最長でも数日以内に解消した。介入群の99.5%が、包皮切除に非常に満足していると答えた。


集団での包皮切除の影響を評価する長期的調査が必須

 一方、米Johns Hopkins大学のRonald H Gray氏らが、ウガンダRakaiで行った同様の無作為化試験もまた、2006年12月12日に早期中止に至った。対象は、15~49歳の包皮未切除のHIV陰性者4996人。登録から2週間以内に包皮切除(2474人)、または24カ月後に包皮切除(2522人)に割り付けた。HIV1/2検査、健康診断、面接は6、12、24カ月後に実施。被験者にはHIV感染予防のための教育を施し、コンドームを無料で配布した。主要エンドポイントはHIV罹患率とした。

 24カ月間のHIV罹患率は、100人年当たり介入群0.66、対照群1.33(罹患率比0.49、95%信頼区間0.28-0.84、P=0.0057)。年齢、未婚か既婚か、ベースラインのリスク行為で調整しても、罹患率比は0.49(0.29-0.81、P=0.003)で、介入効果は51%となった。

 また社会経済的(既婚か未婚か、学歴)、行動的(パートナーの数、婚外交渉、コンドーム、性行為時の飲酒)、性行為感染症の症状の有無などで分類したサブグループの比較解析によっても、HIV罹患率は介入群で有意に低かった。

 著者らは「HIV予防を目的とする包皮切除は推奨できる。ただし、試験は早期中止されており、有効性を過大評価する可能性があるため、集団でのHIV有病率の変化に対する包皮切除の影響を評価する長期的な調査が必須だ」と指摘している。

 いずれの試験でも、追跡期間中にコンドームの使用は幾分増えたが、常に使用すると答えた被験者は20%程度に留まった。教育と啓発による感染予防法併用の徹底は欠かせないだろう。

 原題は「Male circumcision for HIV prevention in young men in Kisumu, Kenya: a randomised controlled trial」(概要はこちら)、「Male circumcision for HIV prevention in men in Rakai, Uganda: a randomised trial」(概要はこちら)(閲覧にはLancet誌のサイトへの登録が必要です)。


さて、引用文中にも書いてあることだが、コンドーム使用率は知的レベル(学歴)、教育・啓発などとの関連があるわけだが、日本人では、これに“恥”のメンタリティを加えて考察しないとならないと思っている。(お仕事ブログでも書いたけど・・)そして、『赤信号、みんなで渡れば怖くない』という感覚も。

野党が政府に質問するなら、『HIV 感染者をこれ以上増やさないために、国家予算にコンドーム代金を計上し、高校や大学、職場にいつでも、ヒョイって持ち出せるようにしろ』とか、『「風俗店での性行為は、一人で行っても、大勢で行っても危険率は同じである」「俺が感染する時は、他の奴も一緒だなんて事は無い。それは相手(女性)による」という事を、周知徹底しろ!!』とか、してもらいたいもんだ。

青少年の性行為を煽るのか?とか、性風俗で働く女性の存在を認めるのは女性蔑視だとか、言い出す奴が出てきそうだが、現実を見て見ぬふりするような奴は無視して、こういう事を進めてもらいたいものである。

私が議員だったら、真っ先にコンドームの予算を計上するんだけどねぇ!そして、教育改革の柱は“性教育”だ!!!!


奇麗事が好きな全ての人に伝えたいです。

2007年03月12日

薬物中毒とメタボリックシンドローム

20070312_halfway.jpg薬物乱用に陥る原因は、慢性的な薬物投与の結果・・・・・ではない!

冠動脈疾患の原因は、高血圧や内臓脂肪蓄積、耐糖能に・・・・・因るわけではない!


なんて言われたら、貴方はどう思うだろうか?

まず、これを読んで下され。

◆薬物、ドーパミン、それと性質(Drugs, Dopamine, and Disposition)

Science March 2, 2007, Vol.315

薬物乱用に関する個人差は異なる行動面の性格と生理学的特質を反映している。

Dalleyたち(p.1268)は、対照群と比べて、生来の衝動的行為に走るラットが、コカイン投与前ですら側坐核においてドーパミンD2/3受容体が減少していることを見出した。

ラットにおけるこの衝動的な性格が、結果として静脈内へのコカイン投与の割合を多くする前兆である。

このように、衝動性が薬物乱用に陥る重要なメディエータであり、慢性的な薬物投与の結果ではない。


◆メタボリックシンドロームのその心臓は?(The Heart of Metabolic Syndrome?)

Science March 2, 2007, Vol.315

冠動脈疾患(CAD)の患者は、しばしば付随的に高血圧症や糖尿病、更に異常に高いコレストロールとトリグリセリド値を示す。

このような危険因子を持つ多様なグループは、まとめて「メタボリックシンドローム」と呼ばれるが、しかしながらこれらの疾患を結び付けている基本的な分子的メカニズムは未だ良く理解されていない。

Maniたち(p。1278)は、早発性のCADに関する稀な遺伝性のファミリーにおいてその原因となる変異を同定し、これによりメタボリックシンドロームの多くの特徴を同時分離するものである。

その元凶となる遺伝子は、低密度のリポタンパク質受容体に関連したタンパク質6(LRP6)をコードしており、このタンパク質はWnt細胞シグナル伝達経路における共受容体である。


薬物の乱用、薬物中毒のなり易さに関する研究ってのは、今回が初めてってわけじゃなく、何度も同様の報告がある。でも、この素因(遺伝子)あるからといって、薬物を一度も摂取しなければ、乱用や中毒などは、あるはずも無いのはご存知の通りだ。

要するに、素因(遺伝子)と環境の両方が揃って、初めてその結果が得られるということ。

この報告が断言しているように、慢性的に摂取しているということは、その素因を表面化する事に成るということで、慢性的な摂取がすべて乱用に繋がるかというと、そんな事はないという事を示しているわけだ。


メタボリックシンドロームの方は、世間の注目が“検査値”や“自覚的症候”に集中しちゃっているが、研究の本質はコレ!って位、そのものズバリの方向で、『高血圧がイカン!高いコレストロールとトリグリセリド値がイカン!』と巷のテレビや新聞、雑誌の健康関連記事とは、まったく方向が違うことがご理解いただけると思う。

メタボリックシンドロームの目に見える因子は結局、それは結果であって原因ではないという事を示しているわけだ。

原因はコレ!!!遺伝子!!遺伝的特徴!!なのだよ!!!と。

もともと冠動脈疾患(CAD)を起こし易い遺伝的特徴があり、その遺伝子型は同時に、表現型として血圧、コレストロール、トリグリセリド、内臓脂肪量に影響を与える因子の“一つ”だったと。(素因に環境が作用するってのが、薬物の場合と同じなのは言うまでもないが)

だから、逆にいえば、太っていても、血圧が高くても、コレステロールが高くても、冠動脈疾患(CAD)を起こさない人がいる(圧倒的に多い)し、逆に痩せていても冠動脈疾患(CAD)を発症する人もいる。これらの表現型は、冠動脈疾患(CAD)をモディファイする事はあっても、本質が変更される事は無いと。

さすれは、治療薬飲んで見かけ(臨床検査値)を是正する事って・・・・・(意味無いジャン・・・って、だからスタチン系の NNT が100を越えてんだよ)。

結局、“見かけで判断するより、遺伝子を調べろ!”って事だ!!今はその遺伝子情報が圧倒的に少ないから、見かけ(臨床検査値)で判断するしか無いってことなんだけど。
 
 
 
土曜の夜に NHK でやってる『ハゲタカ』を見ていたら(先先週分?録画でみてるもんで・・)、外資系ハゲタカの日本法人代表者が記者会見で『お金を儲ける事がイケナイ事ですか?日本は資本主義社会でしょ?』って言った言葉に、テレビ局の取材者が『本音で来たよ・・・』って反応したのには、びっくりした。

日本の社会では、公の発言は、当然のように“建前”を期待しているって事だ。建前をいかに“白々しくない”表現や言葉を使って言い表すか?これを期待しているのが、日本のマスコミの本質なんだなぁ!って。

私は医療の世界の本音しか解らないから、他の業界の本音と建前の境界が、はっきりとは解らないが、でも、推して知るべしなんだと思う。

という事は、現代医療においては、患者個人にとってその治療方法、治療薬が本当に必要かどうかは解らないという状況で行われている事って、みんな薄々は気付いているって思った方が良いのかもしれない。

『こんな薬、飲んでも死ぬときゃ死ぬんてしょ?』って言葉、幾度となく聞いたもんなぁ・・。

---なんとなく解ってるから、ほんとの事をズバって言わないでよ---

ってことなのかもね。

だから世間の注目が“検査値”や“自覚的症候”に集中し、マスコミもそれしか追わない・・・。現代医学は、個人の遺伝子型を評価する事が出来ない。だから、古典的な統計学でお茶を濁し、マスコミも、突っ込んだらカワイソウだから、突っ込まない・・・。

核心に触れちゃイケナイ事を、お互いに理解している・・・そんな図が見えてくる。
 
 
 
本音を言わない(言えない)代表的な場所が国会なのは、その質疑をみてれば直ぐ解る。

共産党の議員が医師不足の問題を取り上げていても、その不足してしまう原因に、、、、
例えば公立病院の医師が、《一般病院より安い給料をさらに1割カットする方針が市議会で決定され、実施されたにもかかわらず、新人医師の臨床研修制度改革で大学の医局から派遣されていた医師が多数大学に戻り、医師不足に陥り常勤医の負担は以前の2倍以上に増加している、そんな医療現場の実態を分らず給料カットをする市の方針には納得できない》だったり、《それに拍車をかけたのが、ある市民から「われわれの税金でこの病院を運営しているのだから、もっと働け」と言われたこと。「とてもショックだった」と。》
っていう、本音を披露する事はないんだよなぁ・・・。


これは、いろんな見方が出来るけど、問題を本気で解決するなら、本音を取り上げなきゃならないんじゃないか?

共産党の何某は、この本音を首相や厚生労働大臣にぶつけるべきじゃないか?

血圧やコレステロールを下げる薬に意味はないって言っても、他に何もする事が無いんだったら、古典的な統計学にその根拠を求めて、自己満足しておくのも“仕方がない”とは思うから、本当の事から“目を背ける”のもありだとは思う。そして、その態度が『病気を治す気がない』などは思わないが、、、

国会議員が、見て見ぬふりして本当の事から“目を背ける”のは、現状を解決する気がないと思われても仕方がないんじゃないか?

オルタナティブな見方の一つは、共産党や社民党あたりは、全ての問題が解決しちゃったら、存在意義が無くなっちゃうから、意図的に本質を逸らかし、解決しないように質問してるって。その証拠に、質問する事がなくなると、お家芸の従軍慰安婦の問題やら南京大虐殺の“歴史的認識”の問題やらを持ち出してくる。これも、解決なんてする問題じゃないから、いつまでも自分達の存在意義を示せて都合が良い・・・・。


汚れ役を買って出る事は、絶対しない共産党やら社民党やら朝日真理教信者達に捧げる。。。。。。んだけど、、、でも、、、薬物中毒の成り易さや冠動脈疾患(CAD)の成り易さを遺伝子、遺伝的体質で、はっきりさせる事がいいのだろうか?

医学的には当然“はっきり”させることが“正しい”に決まっている。しかし、医療は医学だけの実践の場ではない。医療を享受する事で、不幸になるなら、享受しない選択があっても良いわけだ。(にもかかわらず、医療を受ける事が“是”で、受けない事は“非”のような雰囲気が世の中にはある。)

もちろん、その遺伝子を修正することが出来れば、医療を享受して“幸せ”になるもいいだろう。

しかし、人間を“ヒト”としてみた場合、遺伝子の“多様性”も考慮しなくてはならない。次世代に遺伝子を残した後(生殖年齢以降)に影響が出る遺伝子ならいいのかもしれないが(本当か?)、生殖年齢に達する前に影響が出る遺伝子を弄って、そういう遺伝的特徴の個体が遺伝子を次世代に残す事が良い事なのか?(喩は悪いが、中国や朝鮮半島における遺伝的特徴を人為的に操作(粛正)するのと、なんら変わり無い!)

って、いろいろ考えても、答えなんか出るわきゃない。

それに、遺伝子の多様性は、ヒトがアフリカを出発した時から、逆に減少しているって報告もある。

ヒトとピロリ菌の密接なかかわりはアフリカに起源をもつ

nature 2007年2月22日号
Vol.445 No.7130 / P.915-918

ヒトでは、胃のピロリ菌(Helicobacter pylori)感染が全世界規模でみられる。さまざまな地域由来のピロリ菌株は明らかに系統地理的分化と関連しているが、これらのピロリ菌とヒトとのかかわりが生じた年代については議論が大きく分かれている。

本論文では、ピロリ菌株の大規模な塩基配列データを用いて、現生人類発祥の地である東アフリカからの地理的な距離が離れるにつれ、ヒトの場合と同様に、ピロリ菌の遺伝的多様性が減少することを明らかにする。

また、ピロリ菌とそのヒト宿主の両方について、距離による遺伝的隔離(IBD)の同様なクライン(遺伝的変化の勾配)が世界的規模で観察された。

シミュレーションによれば、ピロリ菌は、ヒトと同様に約58,000年前に東アフリカから広がったらしい。

IBDが不鮮明になりやすい、もっと限られた地理的範囲でみても、欧州で採取されたピロリ菌の主要な要素のクラインは、Cavalli-Sforzaたちによって報告されている欧州人の典型的なクラインと非常によく似ている。

まとめると、今回の結果によって、解剖学的な意味での現生人類がアフリカから移動する以前にピロリ菌に感染していたことが確証され、また、それ以来ピロリ菌とヒト宿主集団が密接にかかわり続けてきたことが明らかになった。


そうなると、私もけっこう気楽に使っている“多様性”ってなんだよ?定義は??


だったら、“適当(イイカゲン)”が一番ってことなのか??遺伝子の世界だって、“適当(イイカゲン)”ってのが解明されつつあるし・・・。
 
 
 
キリスト教のイスラム教弾圧(十字軍)を端に発する諍いが、現代の米国のイラク介入にまで影響し、すなわち、どうしてアメリカの若者がイラクで死ななきゃならないの?「ほっときゃ、いいのに!」という疑問を抱かせ、、、
イラクの査察受け入れ拒否を「(大量破壊兵器を)発見できなかったから・・・」って政治的な道具に使われ、アメリカの極東介入にまで影響し、それをいい事に北朝鮮が、もう十分歴史的な過去になった事を、何度も何度も穿り返して、そのくせ自分たちのした事は『過去の事』と言い切らせる状況を招いたのも、、、


みんな“適当さ”が足りずに、何十年も何百年も何千年も前の出来事を穿り返して、『そっちが悪い』『いや、そっちだ』って。


医学には政治的判断は必要ないけど、医療には政治的判断は必要なのかもしれない。

で、私が知る限り、全てを踏まえて“適当(イイカゲン)”を適当に行使できる政治家は麻生外務大臣以外にはいないと思う。医療の世界では、、、、(踏まえてないけど)、みんな“適当(イイカゲン)”だ!(爆笑)

2007年03月13日

活動型TVゲームで小児の肥満予防

20070313_wii.jpgこれは、Wii のことなのか?

大体において、家庭用ゲームは、世のお母さん方には評判がよろしくない。我が家でも同様だ。娘と任天堂 DS でスーパーマリオの対戦をしたくて2台買ったはいいけれど、熱中し過ぎると女房殿の雷が落ちる。で、いい所で中断を余儀なくされるのだ。

その原因は“ゲーム脳”に始まる、ゲームの悪影響を科学的に説明したような“エセ科学”による所が大きい。

妻も薬学部卒の“理系脳”を持っている筈なのだが、こういう時の反応行動は“女性脳”に支配されるらしい。私が『絶対、大丈夫だって、そんな心配イラナイ』って言い、事実、妻の杞憂に終わった事が何度も繰り返されたにもかかわらず、この手のやり取りは、終わる事がないのだ。

最近でこそ、アメリカ発の“ゲーム好きの外科医は手術が上手”みたいな、ゲームの効用が伝えられる事も増えたが、やっぱり、マスコミによる“悪者(敵)”を作り上げ、それに批難を集中させるっていう話題作りには、“女性脳”や“文系脳”は弱いのだろう。後から後から、この手の話題は尽きる事がない。

私は常々、妻に『人間の生活環境の中にあるもので、絶対悪、絶対善なんてありゃしないよ』って言ってるのだが、妻はその時点では理解するのだが、時間が経つと忘れてしまうらしい。

もしくは、女性脳や文系脳に強く発現している“坊主憎けりゃ袈裟まで憎い”という事なのかもしれない。理論的に解っても、ゲームに対しての敵対心が薄れる事はないって。そして、嫌いなゲームを許す事が出来ないって。さらにゲームを許す自分を許せないって感じ!?

理論的な思考に“感情”が入り込むんだよね。

逆に“自閉症的”な脳活動の特徴のある理系脳では、“坊主憎と袈裟は別物”って感じちゃうから、ゲームの良い所も悪い所が別々に感情を交えず見る事が出きる。(冷めた目ってヤツかもね)


では、その報告を紹介しよう。

活動型TVゲームで小児の肥満予防

〔米ミネソタ州ロチェスター〕 TVゲームが小児の活動を制限し、肥満に寄与しているとすれば、身体活動が要求されるTVゲームを開発してはどうだろうか。メイヨー・クリニック(ロチェスター)内分泌研究ユニットの肥満症研究者であるLorraine Lanningham-Foster博士らは、身体活動を組み込んだTVゲームは小児の肥満傾向を逆転させ、健康度を改善する可能性があるとPediatrics(2006; 118: e1831-e1835)に発表した。


ダンスゲームで消費量 6 倍に

 研究主任のLanningham-Foster博士は「身体活動を要するTVゲームを楽しんでいる小児は、じっと座って画面に向かうだけの従来のスクリーンゲームを行っている小児と比べて、消費エネルギー量が増加する。これは研究データがなくても明白である。要するに、スクリーンゲームに熱中している小児の場合、ゲームの一部に身体活動が組み込まれていれば健康度が上がる可能性があることがわかった」と述べている。

 今回の研究は、TVゲームをしている間に燃焼されるエネルギー量を初めて科学的に測定したものである。対象となった小児は25例のみと研究規模は小さいが、精度は非常に高かった。小児25例中15例は身長と体格に比べて標準体重で、10例は軽度の肥満であった。全例は、(1)座ってTVを鑑賞する(2)従来のTVゲームをする(3)活動指向の 2 種類のTVゲームをする(4)トレッドミルの上で歩きながらTVを鑑賞する-のすべてを実施した。

 その結果、「座ってTV鑑賞」と「従来のTVゲーム」はエネルギー消費量が同じであった。活動指向の第 1 のTVゲームは、カメラを使用してプレーヤーを仮想的にゲームに登場させ、ボールなどをキャッチさせるものであったが、エネルギー消費量が前者の 3 倍になった。この結果は標準体重群も肥満群も同様であった。「トレッドミルの上を歩きながらTV鑑賞」は、標準体重児ではカロリー消費量が 3 倍になったが、軽度肥満児ではほぼ 5 倍にまで増加した。ダンスをさせるTVゲームは、両群ともにカロリー消費量が最大になったが、肥満群のほうがカロリー消費量の増加が著しく、静かに座っている場合と比べてエネルギー消費量は 6 倍強に達した。


小児の肥満傾向を逆転できる

 現在、米国の小児がTV画面(TVとTVゲーム)に向かっている時間は、 1 日平均 8 時間に達している。

 Lanningham-Foster博士は「活動指向のTVゲームとコンピュータゲームを増やせば、小児の肥満傾向を逆転させるアプローチの 1 つになりうるのではないか。研究サンプルは少数であったが、今回の知見は確固たるもので、ランダム化試験による今後の研究を正当化するものだ」と述べている。

 共同研究者は同クリニックのTeresa Jensen、Dieter Heinz、James Levineの各博士、Randal Foster、Aoife Redmond、Brian Walkerの各氏。

 今回の研究は、米国立衛生研究所(NIH)とメイヨー・クリニックの助成を受けた。

さて、私が任天堂 DS を買ったのには、もう一つ理由がある。ドラゴンクエストⅨのプラットホームが SONY のプレーステーションから移ったからである。娘が使っている DS は元々、妻が“脳トレ”やるために買ったものだ。でも、娘が占有してしまっている。しかも、妻は自分がやるから買ってくれって言ったにもかかわらず、結局、マニュアル読む事も含めて面倒くさがって?やってない。まぁ、それはいいのだが、、、

DS が一台だと、私がドラクエをやっている時、絶対、娘は私にちょっかいだしに来る。そして、私からイキナリ DS を取り上げて、自分でプレーし始める。そして、負ける・・・。事が目に見えるのだ。

だから、私が安心してドラクエに没頭出来るように、その間、娘にも他のものやらせておけるようにしなくっちゃならないのだ。それに、ドラクエが発売されれば、その影響で、またまた DS は入手しずらくなるだろうし・・・。それにドラクエⅨには通信機能を使って、複数人の同時プレーが出来るらしいから、娘と一緒にドラクエの世界を冒険するのも悪くないし!


まぁ、何はともあれ、ゲームの効用が大真面目な医学雑誌に取り上げられるのは嬉しい。それは、Wii を手に入れる口実にもなるのだからね。(私も次はこれが欲しいのだ!)

だから、ゲーム機の購入に罪悪感を感じている世のお父さん達は、この記事を印刷してお母さん達に見せてあげれば、(ダイエットの線で効果的でもあるし、)納得させられる事、請け合いである(本当か?)。

2007年03月14日

メタボリックシンドロームと少子化

20060314_misconception.jpgメタボリックシンドロームが少子化と関係あるのか?

と、思わず唸ってしまう疫学調査が発表された。。。。機序の解明はこれからになるが、もっとも簡単なところから解説すると、、、、


---太った男は SEX に興味がなくなる---


SEX しなきゃ子供は出来ない!これ、当然の事だ。


私は、日本男児の“女性化”が性欲減退の原因で、その女性化はメタゲノムの影響だと認識しており、政治家や行政が頓珍漢な対策を声高に叫んでいるのを笑っている一人だが、これを読んで、この自分のイメージしている“メタゲノム”のなかに“メタボリックシンドローム”すなわち“食い過ぎ”を加えなきゃならないと直感した。そして、それなら、『食いすぎんなよ!!そこのバカ!食いすぎは愚か者の行為なんだよ!』っていう主旨の行政指導の意味はあると思い直した。

食欲が常に満たされた状態では、性欲が減退する、これは、食欲が満たされない場合を考えれば納得できる。食欲が満たされない、すなわち“飢餓感”を感じている状態では、生存本能が強く発現するはずだ!その生存本能の一つに、“子孫を残す”という本能、すなわち“性欲”も含まれるのは当然で、『我が身が滅びても、わが子孫の繁栄を望む』ってのは、どの動物にも備わっている。

だとすれば、本当は、痩せている人(ハングリーな人)ほど性欲は強かったのに、その醸し出すイメージだけで“太って脂ぎっている”人が“性欲絶倫”だと誤解され、その為に、そのことに気付かなかったのではないか?

灯台下暗し・・・・だ。


本気で少子化に歯止めをかけたい政治家や行政は、本質(肥満が性欲減退)に対する対策を立てなきゃならないんじゃないの??

『SEX っていう単語を国会で出しづらい』なんて言ってる場合じゃないんじゃない?

そして、マスコミも!大真面目で取り上げて欲しい!胡散臭い表現や笑いを取ろうとせずに!

肥満のカップルで妊娠率低下のリスク

提供:WebMD

研究でパートナー両方の体重が妊娠に影響を及ぼす可能性が示される

Salynn Boyles
WebMD Medical News

Reviewed By Louise Chang, MD


【3月7日】妊娠を試みるカップルが男女ともに体重超過または肥満である場合、通常よりも妊娠が困難である可能性があることが新たな研究で示唆されている。

デンマークの研究に参加した肥満のカップルでは、妊娠が成立するまでに1年以上を要する割合が正常体重のカップルと比較してほぼ3倍高かった。

以前の研究で、体重が女性の妊娠率に影響を及ぼす可能性があることが示されたが、このデンマークの研究ではカップルの体重超過または肥満の影響がはじめて検討された。

今回の知見からパートナー両者の体重超過と妊娠率低下との因果関係が強力に示唆されるが、証明されたわけではないと研究者のCecilia Ramlau-Hansen氏はWebMDに語る。

「研究デザインのために、余分な体脂肪によって妊娠率が低下すると断言することはできないが、確かにおそらくそのような状況なのだろう」とRamlau-Hansenは述べる。「体重超過で、子供を望むカップルは2人揃って減量を試みることが有益であるかもしれない」。


体重減量によって妊娠までの期間が短くなる

研究者らは、デンマークにおける妊娠結果に関する全国的研究に参加したカップル47,835組のデータを分析した。研究に参加した女性を対象として、2年間にわたり4回の面接が実施され、自分自身とそのパートナーの体重、身長、妊娠歴、喫煙、社会経済的地位についての情報が収集された。

この知見は雑誌『Human Reproduction』3月号に公表されている。

全体で本研究に参加した女性の8.2%、男性の6.8%、カップルの1.4%が肥満であった。肥満の定義は肥満度指数(BMI)30以上とされた。BMIは身長に対する体重の割合に注目したもので、体脂肪の指標として用いられる。

BMIで評価した場合、5フィート2インチ(約157.5cm)で体重が165ポンド(約74.8kg)以上の人は肥満とみなされ、同様に6フィート(約182.9cm)の人は220ポンド(99.8kg)以上で肥満とみなされる。

本研究では男性の半数超および女性の3分の2が正常体重であった。

オーフス大学(デンマーク)のRamlau-Hansen氏らは、カップルが妊娠するまでの期間を評価した。生殖能力低下(sub-fertility)とは、妊娠を目的として避妊手段をとらない性交を開始してから1年以上妊娠が成立しない場合と定義された。

肥満の女性では生殖能力低下リスクが正常体重の女性よりも78%高く、肥満男性では生殖能力低下リスクが正常体重の男性よりも49%高かった。

パートナーが両者とも肥満である場合、妊娠成立までに1年以上要するリスクは正常体重のカップルと比べ2.74倍高かった。

研究者らはさらに2回以上妊娠したカップル2,374組について検討した。女性が妊娠するまでに要した時間の長さを日数に換算した場合、体重超過または肥満女性では2.2ポンド(約1kg)の体重低下ごとに妊娠までの期間が平均5.5日短くなると研究者らは結論した。


体重が重い男性ほど性交の回数が少ない

男性の場合はその影響は小さいが、男女とも体重低下によって妊娠率が上昇するという指摘は、公衆衛生上、重要な意味があるかもしれないと疫学者である米国立環境衛生科学研究所(NIEHS)のDonna Baird, PhDは述べる。

Baird博士は、男性における肥満と不妊症との関連を示した2006 NIEHS studyの共同著者であり、この研究では、3単位のBMIの増加によって不妊症のリスクが約10%上昇すると結論された。

少なくとも別の1つの研究でも、男性の肥満と精子の質の低下との関連が明らかにされている。しかし、男性における体重と不妊症との関連を確かめるにはさらなる研究が必要であるとBaird博士は述べる。

またBaird博士は、体重超過および肥満の男性における生殖能力の低下は精子の質よりも性機能によるところが大きい可能性があると付言する。

「まだわれわれの知らないことがたくさんある」とBaird博士はWebMDに語る。「男性の性交頻度に関するデータはなかったが、肥満が確かに性機能に影響を及ぼすことはわかっている。例えば、性欲減退と勃起機能不全は肥満男性にはるかに多い」。


Ramlau-Hansen, C.H. Human Reproduction, March 2007; online edition. Cecilia Ramlau-Hansen, doctoral student, department of occupational medicine, Aarhus University Hospital, Denmark; visiting scholar, University of California at Los Angeles. Donna Baird, PhD, epidemiologist, National Institute of Enviromental Health Sciences, National Institutes of Health, Bethesda, Md. “Reduced Fertility Among Overweight and Obese Men,” Epidemiology, September 2006; vol 17: pp 520-523.

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さて、私は少子化と年金の問題を切り離してもらえれば、日本の人口が減る事は、良い事だと考えているので、こんな対策には荷担したくはないのが本音だ。

一定の物理的な空間で、それ以上個体数が増えない事は、生物学のセオリーだ。シャーレで培養する細菌は、一層にならび数を増やすが、壁に触れるとそれ以上個体数を増やさない。三次元的に無軌道に数を増やすのは“がん細胞”だけだ。

日本の国土で、他の生物(動物・植物)と共存して生活出来るヒト個体数は、すでに超えてしまっていると考えている。森林を切り開き開拓してはいけないのだ。個体数が多くなりすぎれば、種の本能が働き、個体数を減らそうとする。人間が意識(認識)出来るその現われが心理的ストレスだろう。

私には、高層マンションなどに暮らす事は、すなわち、シャーレの中の“がん細胞”に見えてしまう。

そして、『眺めがよい』などの宣伝文句で購入させられるも、その後の生活にストレスが昂じる事までは説明がない。一定空間に存在できる個体数の上限値が、遺伝子に刻まれているとも知らないのだろう。

本来の『眺めがよい』場所に暮らすというのは、“小高い丘”以外にはありえない。地面に足がついている状態で、下々を睥睨する、、、快感はこれに尽きるのである。古代ローマの時代から、丘には貴族や元老院などの“金持ち”がこぞって住みたがった事をみれば、明らかだ。(ヒトは密集すると、他と自己を比べる)

平地に高い建物を建てて、そこに暮らす・・・・、貧乏人のあさましさなのか??まさに、古代ローマでも同じなのが、興味深い。


ところで、庶民にこのような感情を植え付けたのは、マスコミ以外にはない。マスコミの情報伝達の片手落ちは、今に始った事ではないが、ここのところ、毎日、それを感じてしまう。

昨日から『タミフルの市販後調査』の中心となっている大学(教授)に中外製薬が寄付していたと報じてたいたが、日本の健康保険で使用できる医薬品は、全て製薬メーカーが自分のお金で臨床試験を大学病院やその他の病院に依頼している。日本の薬物療法の根幹をなす制度が、すでに民間の一企業の利益がらみの中で行われているのである。

疑えばきりがない、、、というか、『タミフルの市販後調査』を疑うのなら、日本の厚生労働省が認可した全ての薬を疑って欲しいもんだ。特に、コレステロールを下げる薬や高血圧の薬なんて、怪しさの“大魔王”級なんだからさぁ!

タミフルというキーワードが“売れる”と感じるマスコミの嗅覚は、まるで“ハゲタカ”級だ。“エイズ”が売れると思えば、血液製剤の認可で不正が注目され『震撼』の文字を使ったキャッチコピーが紙面を踊る。

かと思えば、吉野家の牛丼に危険部位の“骨”が混入して、それを吉野屋も認めているにもかかわらず、“狂牛病”では売れないと感じたら、そんなことは報道もしない。(だから、いまだに吉野屋の牛丼を食べる愚か者が存在する)

腐ってるよな!マスコミの体質。この体質は、マスコミの一部のお偉いさんたちの体質なんだろう。若い現場の記者さん達は、そんな“毒”にやられて行くのを見ることは忍びない。


さて、最後に、またまた裁判ネタになってしまうが、マスコミはどのように扱うのか、マスコミの論調は?って気になる裁判の判決が、本日、出るので興味津々になっているのを紹介して終わりにしたいと思う。


日経メディカルオンラインからの引用です。

小児科医過労死裁判、労災認定をめぐり14日判決

妻・中原のり子氏が語る遺族の想い

 1999年8月16日、小児科医の中原利郎氏(44歳)が勤務先の病院屋上から投身自殺した。その死が小児医療という業務に起因する過労死であり、小児医療の現状を改善していくことを目指して、遺族は裁判を提起していた。そして今年3月、国を相手取った労災不認定取り消し訴訟の判決が14日、病院を相手取った損害賠償請求訴訟の判決が29日に、相次いで東京地裁で言い渡される。判決を前に、遺族の中原のり子氏に、これまでの経緯と現在の心境を語ってもらった。


「医師不足で労働環境が悪化、それに耐えかねて医師が職場から去る、という悪循環を断ち切らないといけない」と語る中原のり子氏
 8月16日のあの朝、病院からの電話を受けたときは、夫に何かあったと直感しました。脳卒中か、心臓発作かと--。しかし病院に駆けつけて自死と聞き、「あり得ないこと」だと思いました。確かに、つらそうな様子ではありましたが、まさか自死するような、おろかな人ではないと信じていました。

 実は、夫婦の間では、病院勤務を辞めて開業すると決めていて、その朝も「今日こそ、辞めることを事務の方に伝えてほしい」と夫を送り出していたのです。

 その年の1月末に小児科部長が定年退職し、後任に夫が昇格しました。そして3月末に2人の医師が退職し、6人在籍していた小児科常勤医が3人になっていました。そのため夫は、3月には8回の当直をこなし、当直明けの休みも1回も取っていませんでした。5月には常勤医が1人、補充されましたが、疲れきっていました。当時は労働災害がどういうものなのか詳しくは知りませんでしたが、夫の死は業務によるものであり「これは労災なんだ」と強く思いました。そして1週間後には弁護士事務所に駆け込んだのです。

 実際、労災保険法に基づく遺族補償給付を新宿労働基準監督署に申請したのは、夫の死から2年以上たった2001年9月。

 なぜ2年以上たってしまったかというと、まずは私と子供の生活基盤を整えなければならなかったからです。ただ、その間も毎月、弁護士事務所には足を運んでいました。

 その労災申請の前に、夫が勤務していた病院に、書類への押印を依頼しに行きました。しかし病院側に押印を拒否されたのです。その理由を尋ねると「詐欺罪に関与したくないから」との答えでした。労災認定が詐欺だと思っているのか、私が詐欺をしているというのか。もともと、病院は非協力的だろうと感じていましたが、この答えを聞いて、闘うことを心に決めたのです。このとき、病院側が労災認定に協力してくれたり、遺族をフォローしてくれていれば、もしかしたら民事裁判を起こさなかったのでは、と思います。

「当直は勤務時間とカウントしない」と言われて
 2002年12月26日に、病院を相手取り、損害賠償請求訴訟を提起しました。そして2003年3月、新宿労基署から遺族補償の不支給決定の通知を受けました。長女と弁護士さんと、不支給の説明を受けるため、新宿労基署に足を運びました。そこで聞いたのが「当直は勤務時間とカウントしない。中原さんの場合、長時間でも過重労働でもなかった」という言葉でした。「では、月何回以上当直したら過重労働になるのか」と質問しましたが、返事はありませんでした。

 この決定に納得できず、東京労働局に不支給取り消しを求めて審査請求しました。しかし東京労働局も「新宿労基署の決定を覆す、決定的な理由はない」として、審査請求を棄却したのです。そのため2004年5月、労働行政の手続きの中では最終的な段階となる労働保険審査会に再審査請求を行いました。

 労働保険審査会に再審査請求して3カ月以上経過すると、行政裁判を起こすことができるので、私はその年の12月、国を相手取り、労災不認定取り消し訴訟を提起しました。行政訴訟は、民事訴訟の調書が上がっているので、証人尋問は原告である私と同僚だった医師の2人だけでした。

 この行政裁判の判決が、今年3月14日に言い渡されます。そして同じ3月の29日に、民事裁判の判決も出ることになりました。厳しい判決も覚悟しています。たとえ今回の行政裁判で勝訴したとしても、控訴されるでしょう。でも、私は最後まで闘うつもりです。

中原の裁判が悪循環を断つきっかけになれば
 私は、夫だけ労災認定されることを望んでいるわけではありません。

 オウム真理教の強制捜査の際に、先頭に立った機動隊員がサリンガスを感知するためにカナリアの入った鳥かごを持っていました。このカナリアが「一番弱い者が先に倒れる」という象徴であるとして、「中原は医療界のカナリアとなってしまった」と言われたことがあります。

 現在、医師不足が叫ばれ、現場の労働環境はさらに悪化していると聞きます。第2、第3の中原が出る可能性があるのです。人並みの休息なくして、患者によい医療を提供できるのでしょうか。医療者は、もっと強く訴えてもよいのではないでしょうか。

 医師不足でさらに労働環境が悪化、それに耐えかねて医師が職場から去る、という悪循環を、どこかで断ち切らないといけないと思います。中原の裁判が、悪循環を断つきっかけになればと思っています。(談)

2007年03月19日

地方国立大「存続ムリ」 競争型の交付金案牽制

20070319_college.jpgどうして、名ばかりの“大学”を存続させなきゃならないんだ??

ろくな研究もしてないような大学を存続させておく事の方が、よっぽど“税金”の無駄遣いだろう!!

この記事は、論調からも察しがつくように“朝日新聞”だ。

『地方の学生は、学費の安い国立大学に入学しづらくなり、“不平等”だ』と言いたそうな文章だよね。そして、それは“悪い事だ”と。いかにも軽薄な偽善者朝日新聞の主張しそうな事だ。


研究費は優秀な大学に集中させる。

日本が国際的な競争力を持つ為にも(インドや中国に飲み込まれない為にも)、当然の事だ。

地方の優秀な学生が、優秀な大学の入試に合格するも、通学や生活費が枷になって断念せざるを得ないなら、その学生の生活費を支援してあげれば良い。優秀な大学は、学生寮を完備させ、寮費を国費で賄えば良い。

ろくな研究成果も上げられない国立大学を維持する費用より、よっぽど、少なくて済む筈だ。

優秀な大学は、益々、優秀になり、特色のある大学は益々特色が出て、平均的な金太郎飴的大学は淘汰される!!こんな理想的な大学教育を迎えられるのに、朝日新聞は、どうしてこんな事すら、言えないのだろう。

いや、言えないのではなく、言わないのだ。これを言っちゃうと、国民の味方、弱者の味方を演じられなくなっちゃうからね。

目先の、表面的な“平等”に目を向けさせる・・・・50年も100年の前の日本だったら、そんな事を主張する新聞もあっても良かったのだろう。

でも、現代において、朝日新聞の論調は、アナクロニズムと言わざるを得ない。

もしかして、優秀な大学は益々優秀になり、そこに集まる学生は益々優秀になり・・・ってことは、学生間の学力の“格差”を生む。不平等社会を助長する・・・って論法なのか!!(学生寮の補助も、不平等とか言いそうだよな)

だとしたら、アナクロニズムなんてもんじゃなく、将来を無視した“派茶目茶”な論法だ。みんな仲良く、落ちこぼれは作らず、“格差”のない社会を目指しているのなら、それはまさに共産主義思想だよ。資本主義的な国の発展は有り得ない。(あっ!何時ぞやの中川政調会長の発言じゃないけれど、もしかしたら、朝日新聞は、将来の日本を中国の属州にしたいのか?!??それなら、この論調も納得が行くぞ!!)

地方国立大「存続ムリ」 競争型の交付金案牽制

2007年3月18日(日)19:07

 日本の半分の県から国立大学が姿を消しかねない――。国立大への国の運営費交付金の配分方法について、経済財政諮問会議の民間議員が「競争原理の導入」を提言したのに対し、文部科学省がこんな試算をまとめた。国立大の危機感を背景に一定の前提を置いて計算したもので、諮問会議側を牽制(けんせい)する狙いがあるとみられる。

 発端は、日本経団連の御手洗冨士夫会長ら民間議員4人が2月末の諮問会議に出した提言。運営費交付金が、学生数や設備などに連動して配分されている現状に疑問を投げかけ、配分ルールについて「大学の努力と成果に応じたものに」などとの改革案を示した。

 3月上旬に都内であった国立大学協会の総会では、学長らから悲鳴に近い訴えが相次いだ。「日本の大学教育がほろびかねない」「地方の大学は抹殺される」

 このため文科省は、競争原理を導入した際の各大学の交付金の増減を試算した。研究の内容や成果に従って配分されている科学研究費補助金(科研費)の05年度獲得実績に基づいて計算すると、全87校のうち70校で交付金が減り、うち47校は半分以下となって「経営が成り立たなくなる」(文科省)との結果が出た。国立大がなくなるとされたのは秋田や三重、島根、佐賀など24県。私立大も少ない地方が多く、地元大学への道が狭まりかねないとする。

 文科省は最近、国立大に対する補助金に「競争的資金」を増やしてきた。科研費のほか、世界的な研究拠点を目指す大学に対する「21世紀COE」などがある。その文科省も運営費交付金については「人件費や光熱費などをまかなう、人間で言えば三度の食事のようなもの」として、大幅な見直しには否定的だ。

 諮問会議の民間議員は改革案を6月ごろに閣議決定される「骨太の方針」に盛り込みたい考えだ。今後、国立大側が反発を強めるのは必至で、議論は紛糾しそうだ。


さて、学力の格差を生み、優秀な大学は益々優秀に・・・ってなるなら良いのだけど、制度を変えたら、軒並み学力のある学生が集まらなくなってしまった(偏差値を下げる事になった)改革がある。

知っている人は知っているが、知らない人は全く知らない事だと思うので、現実を知らせたいと思う。

それは、薬学部の6年制だ。これにより、最大で“7”偏差値が下がった大学が出現した。それ以外の大学でも“5”下がっている事は当たり前の状況だ。2005年度と2006年度の比較だから、4年制と6年制の制度によるものと考えて、ほぼ、間違いない。

4年制の頃の薬学部は、最低でもほぼ50以上だった偏差値が、6年制移行後、40台前半、酷い所は30台に落ち込んだ大学が2桁に膨れ上がり、定員すら満たせてない大学もあるらしい。

しかし、こんな事は、業界の人間なら誰しもが当初から予測してた事だ。薬学部に集まる優秀な学生が他学部に流れてしまうであろう事は。(それを否定していたのは日本薬剤師会だけ。馬鹿だねぇ。薬剤師の資質向上を“本気”で考えるなら、国家試験の受験資格を他の理系学部にも解放するしかないのは、その時から言われてたのに、頑なに薬学部に拘って、このザマだよ)

だから、私は、以前から6年制への移行に、文部科学省や厚生労働省も同意したのは、処方箋の再使用制度導入による医療費抑制が“真の目的”だと睨んでいた。(事情をしらない一般の人には、6年間勉強した薬剤師って説明が手っ取り早いし)しかし・・・・


こんな実態を隠し通せるわけがない。


6年制に移行したら(薬学部の新設も多い事だし)、レベルが下がったという大学があっても、それと同じくらい、レベルが上がった大学が増えているなら(他学部にいく筈だった優秀な学生が薬学部に流れ込んできたなら)、やがて、アメリカのように、慢性疾患の薬剤師による経過観察と処方箋の再使用制度が現実的になるって考えたのだが、この現状じゃ無理だ。

受験生を持つ親世代が一巡したら、薬学部へ行く学生は“全国高校生の平均以下”という認識が広まってしまう。

そんな薬剤師に、経過観察をさせるなんて、国民が納得するわけがない。

というわけで、よほどの事がない限り処方箋の再使用制度はそれこそ“経過観察”だ。


となるとどうなるか?


薬剤師による“医療費抑制”が望めないなら、現在の大問題である“産婦人科・小児科医不足”に対処するため、国家予算レベルの医療費の分配は、薬剤師を減らし、その分を産婦人科・小児科医に割り振るしかなくなる。

当然だ!!(国民が薬剤師を必要としてくれて、消費税アップを快く認めてくれるのなら、薬剤師分は減らされないだろうけど、それは、ちょっと有り得ない)


というわけで、今後も、6年制を強引に進めるとしたら、私の予想は、もう一つの方に修正しなきゃならない。

それは、薬剤師免許に“屋上屋を架す”というもの。(これは、私個人としても、以前から熱望していたものである。頑張った人が報われるようにという意味で)

例えば、『癌幹細胞が癌再発と関連』でも触れた、がん専門薬剤師。抗癌剤が処方された処方箋調剤を、がん専門薬剤師がいる施設(病院、薬局)に限定するって法律に改正するってこと。糖尿病専門薬剤師においてもしかり・・・と。(ただ、認定するだけで、何の役にも立たない“専門家”じゃ、マスターベーションだけど、制度とセットなら、俄然、存在意義はでてくる)

こうすれば、平均的な薬剤師の質が下がっても、クリティカルな場面での医療の質は保てる。逆に言えば、医学部、歯学部と違って定員の野放し状態の“薬学部”卒(=薬剤師免許持ち)には、質を担保するための淘汰が必要で、その為にも、都合が良い。

現行の薬剤師免許は、調剤テクニシャンの扱いになれば、本当の意味で薬剤師の質を保つ(向上するかどうかはわからないけど)事は達成できるし、非専門薬剤師の技術料を安くすれは、医療費も抑制できる訳だ。
 
 
 
ところで、ここのところ、私のエントリーに薬剤師会ネタが無いのは、この団体に未来はなく、口で言ってもどうにもならない事が解っちゃったから、すでに『どうでもイイヤ、関係ないし』って事で、相手にしてないんだけど、日本経済新聞社が無料で配布している“日経DI”って雑誌を休憩時間にパラパラ捲っていたら、見過ごせない、ある記事が掲載されていたので、この文章を書く切っ掛けになってしまった。

それは、日本薬剤師会の“無責任(と感じられる)”この上ない態度についてなのだが。。。日本薬剤師会副会長の肩書での某氏の談話だから、日薬の姿勢と言う事と理解して全文を紹介する。(尚、※は、私のコメントです)


 『薬学教育への6年制導入後、薬学部への入学志願者が大幅に減ったと聞き、実に残念な話だと思っている。※1

 日本薬剤師会では長年、薬学教育への6年制の導入、すなわち「薬学教育改革」を希望してきた。※2 医薬分業の進展により、病院や地域薬局で働く薬剤師の仕事の質が変わり、幅が広がってきている。医療の担い手の一員たり得る薬剤師を養成するためには、4年では足りず6年間の教育が必要になる。※3

 しかし、ここ数年の「薬科大学ブーム」による大学数の増加は、全くの想定外だった。※4 全体として偏差値が下がった事も気掛かりだ。一般論として、偏差値の極端に低い大学には、勉学意欲の低い学生が多い可能性がある。※5 人の命を預かる医療人は、基本的な問題解決能力を備えていることに加え、日々、進歩する医学について生涯、学習を続けなければならない。※6 その資質に欠ける学生を入学させているならば、結果として薬剤師全体のステータスの低下につながる恐れが出てくる。※7

 大学数が増える事で自然淘汰が起こり、薬剤師の質が向上するという見方もあるが※8、教育には自然淘汰という考えはなじまない。※9 教員や実務実習先の確保ができず、十分な教育を行えない大学が出てくる事も懸念される。※10 学生のためにも、大学カリキュラムの第三者評価をしっかりやってもらいたい。※11


※1:こんな事は予想できる筈。

※2:『悲願』って言葉を使ってたよ!日本薬剤師会だけだよ!この言葉を使ってたのは。

※3:年限が足りない根拠が示された事は、一度も無い。しかも、それまでは4年制でやっていて不都合はなかったし。医学の進歩とかいう言葉で誤魔化そうとしているけど、薬剤師の仕事なんて30年前と変わり無いし、知識の量の事を言っているのなら、生涯学習が必須であって、大学で学ぶ期間は問題ではない。6年間大学に行ったとしても、5年も放っておけば、元の木阿弥でしょ。

※4:自らの情報収集能力の無さを証明しています。自分達の我が侭=悲願が達成されたら、後は他人事のような表現を使ってるところが、許せません。

※5:可能性ではなく事実です。

※6:ホーラ、重要なのは6年制ではなく、生涯学習だと自分から言っているじゃないですか!そして、それは当然の事です。

※7:本音が出ました。6年制はステータスの為です

※8:これは、有り得ません。偏差値が“向上”する方向で人数が増えれば、このテーゼは肯定されますけど、偏差値が下がったら学生数が増えても質は下がります。ダイヤモンド原石の絶対数が多ければ、磨かれ光るけど、石ころばかりじゃ光ようもないのと同じです。だから、こんな事を前提にして、それを否定する事で、テーゼを肯定するなんて“詭弁”を使わないで頂きたい。

※9:意味不明です。

※10:これも想定内だけど、、長くて半年の実習に意味があるのか?やるなら、4年制で免許を取らせ、今の医学部みたいに2年間の実務実習を必須化し、その上でそれ以降の免許の効力を認めさせれば良い。要するに、最初の免許は、2年間の限定免許で、実習を終えて限定が解除される。そんな感じにすれば良い。それに職場では、戦力として使えるし、教え甲斐もある。新人薬剤師もこの方が実務実習に身も入る筈。なんたって、給料を貰うんだからね。

※11:こんな事態にした張本人は、日本薬剤師会さん!貴方ですよ!その無責任なものの言い方は、なんとかなりませんか!


と、まぁ、こんな具合である。

『悲願、悲願』と呪文を唱え、自分達の我が侭を通した後に、非常に都合の悪い状況を招いてしまったわけだが、これを詫びるでもなく、『世の中がイケナイんだからね』と開き直り、自分達の責任を回避しようとする態度は、まるで子供のようだ。

インターネット利用によるオンライン保険請求事務が開始されたら、その存在すら必要無くなる事は、これで決まったようだ。憐れなり、薬剤師会・・・・。しばらくは厚生労働省当局からの事務連絡だけが、存続理由になるだろうけど、若い世代の情報収集がネット依存型に切り替わった時、息の根が止まる・・・・・って事かな?


私はアカデミック学部の大学教育は、『入るは易く出るは難き』が良いと思っている。それは、勉強するかしないかは、その結果が純粋に自分に跳ね返ってくるだけだからだ。だから、安易な学位を授与しないためにも、それが良いと思っている。

しかし、薬学部は国家試験受験資格がぶら下がっている。そこでは、勉強するかしないかは、学生自身だけに跳ね返ってくるわけじゃない。職業としての質の低下は、国民的な損失に繋がるからだ。(もし、本当に薬剤師の“質”というものがあるとしたならば・・・だが。)

2007年03月23日

タミフル騒動では、、、

20070323_ambivalent.jpgなんか、スッキリしない。頓珍漢な連中による頓珍漢な大騒ぎ自体は腹立たしいのだが、でも、そのおかげで、結果的に良い方向に向かっているという、ambivalent な状態にいるからだと思う。
 
 
 
今朝、ズームイン・スーパーで辛坊さんが、良い事を言った。『わかんないなら、わかんないって言えよ』。ほんとに、その通りである。でも、、、、、

やっぱり、番組作りしてるなぁって感じる。

この辛坊さんの発言は、バード羽鳥の『・・という事は、因果関係があったという事で、先の件でこのような措置を取っていれば、今回の悲劇は避けられた・・・』という解釈を諌める形で為されたものだからだ。

漫才に喩えるなら、バードが“ボケ”で辛坊さんが“突っ込み”の役を演じた事になる。

薬害被害者の会の方達は、『疑わしきは罰せよ』だから、『じゃ、タミフルと因果関係があるんじゃないかっ』と短絡的に結び付ける訳だが、辛坊さんがこれを諌める形じゃ、チョットまずい。

そこで、バードが『今までの発表を覆したんじゃ、因果関係がありってことなのか!』と呆けるのだが、、、、この辺に、番組作りの意図を感じちゃうのだ。

そのおかげで、一般大衆に対しても、必ずしも『逆は真なり』って訳じゃないんだよ!って事が伝わったので、これはこれで良いのだが・・・、この『わかんないなら、わかんないって言えよ』っていう意味が、どの程度まで伝わったのか?が気になってくる。要するに、どんなに詳しく調査・研究しても、『わからないものはわからない』って事があるってことで、調査が甘いからじゃないんだよって事が伝わったのか??(辛坊さんも自分で言ってる言葉の意味の大きさを理解していたのか??)
 
 
 
“蛙の面に小便”をひっかけた後、たまたま、具合悪くなったとしても、本当に具合悪くなった原因が“蛙の面に小便”だとは誰も思わない(小さい頃、ちんちんが曲がるっていわれた)。しかし、、、この原因に当たる行為が、もう少し“科学的”だったとしてら(この場合は薬を飲む事)、『もしかしたら、それが原因なんじゃ?』って疑うのが普通だと思う。

この『もう少し“科学的”』っていうのが、曲者だ。普通、この線引きは、いわゆる“常識”として判断するわけだが、この“常識”に明確な定義が無いのはご存知の通り。そして、その常識ってヤツは、人それぞれの知識の量にも依存している。

だから、この辺を絶対的(相対的に対する言葉として)に定義しないまま、この『タミフルと異常行動』の因果関係を議論しても、それは、曖昧さの上にある議論が、どんなに厳格であっても、結局曖昧になってしまうのと同じことで、意味を為さなくなる。

そして、タミフルと異常行動の因果関係は、こういった定義を曖昧にしたままでは、答えは出ない性格の物だ。


例えば、毎日食べるゴハン、これだって食べなきゃ死んじゃうんだから、生理現象に大変な影響を与えているわけだ。普通はこんな事、意識しないけど。

で、タミフル。これ、シアル酸のアナログだ。人間60兆個といわれている細胞全ての表面に“くっ付いている”糖の一種である“シアル酸”の“ソックリさん”って意味。

人間の細胞は、それぞれがバラバラに“生きて”いるんじゃなくって、それぞれが連絡を取り合い、影響しあい生きている。その情報を伝達したり共有したりする道具として、この“シアル酸”をも使っているわけで、そうすると、タミフルみたいな物質を体内に取り込んで『何の影響も無い』なんて、ゴハンの例をみるまでもなく、言える訳が無い。

実際、臨床用量の1000倍をマウスに投与すると、神経症状を引き起こせる。

じゃ、どこまでを“影響無し”にして、どこから“影響あり”にすればいいのか?


言葉を変えれば、毒だって少量なら“薬”として使えるように、要は使い方って事じゃないの?

そうすると、その作用の出方には“個人差”が存在するのが当たり前で、タミフルの副作用だって個人差の範疇かもしれない。ぶっちゃけた話、副作用が出る体質の持ち主だったって事でしょ!って事になっちゃう。『人間、みな平等』じゃなくっちゃ気が済まない人達には、聞き捨てならない結果になっちゃう。
 
 
 
薬を飲んだ時点と、その薬を飲むシチュエーションは、インフルエンザ罹患であり、これが、その神経症状が薬によるものかどうかの判断を、兎に角、難しくしている。

インフルエンザ罹患、すなわち、ウイルスが体内にいるって状況ではシアル酸アナログとの細胞間情報伝達系に対する相互作用も考えられるし、ウイルスによる遺伝子発現誘導もある状況での生理反応やシアル酸アナログの薬理効果の発現を考慮しなくちゃならないし、それに発熱の神経系に与える影響も無視できない。熱が出ていれば、BBB のバリアーとしての機能にも影響が出る事が解っているから、その部位(脳)に達し易くなる訳だし・・・・って訳で。

本来なら、健常人にタミフルを飲ませる試験なくして、因果関係を探るなんて出来ない。

しかし、この薬は、インフルエンザ罹患時にしか服用しない。。。。。そして、誰しもが『インフルエンザ罹患時に服用したらどうなのよ?』って事が知りたい訳で・・・・。でも、この条件を満たすだけの状況で調査・研究しても、答えは出せないのだ。

インフルエンザに罹患している人をすべて調査して、異常行動があったら“黒”とすれば良いのに?って思った人は、蛙の面に小便で“黒”というのと同じ事だと言う事を知った方が良い。これで、タミフルを“有罪”には出来ない。(幼児だけしか調査せず、因果関係なしってした事が問題になってるみたいだが、調査対象を広げたって、50歩100歩だよ。これが解っているから、研究班は調査しなかったわけだもん。)

異常行動の発生が、インフルエンザ罹患時やタミフル服用時以外には“無い”なら、これだけで“有罪”にしても良いのかもしれないけど、人間の異常行動なんて、ご存知の通りだ。結構ある。(結局、ポケモン事件と同じで、DNA = 体質に言及しなくっちゃ、答えは出せない)


結局、薬との因果関係って、これ自体を定義しなくっちゃならなくなる。直接なのか?ワンクッションもツークッションもあってもイイのか?

そして、大衆が“科学的”って感じる線引きをしなくっちゃ、論議もできない事になる(なんせ、“エセ科学”にころっと騙される民族だから)のは、当然の事となる。ゴハン食べる事と蛙の面に小便を引っかける事とタミフルを飲む事は、“常識”では大きな差があるんだけど、生理学的には差は小さくなるんだから。

そして、“常識”では、人は皆平等で、薬の効果は皆に同じように表れるって事だけど、実は、大きな違いがあり、その違いによる悪影響は、人間が持っている“適応力”でマスクされちゃっているため、副作用として“発現しない”だけなのに。

だから、本来なら、『このような遺伝子のタイプの人だけに、タミフルは“要注意”』となる筈なのに、、、、


それらに対する答えを、現代の医学は出す事が出来ない。


だから、『わからない』が正しいのだ。


でも、一般大衆に『答えは“わからない”でした』で通るのだろうか??


そうなると、結局、タミフルを飲みたい人達って、どういう希望があって飲みたいの?って事になっちゃう!インフルエンザは、タミフル飲まなくても治癒するのに、敢えて飲みたいって言う意図は?

飲まなくてもいいんじゃないのか??そんな、恐ろしい薬は!!ってなっちゃう。

このように、“服薬の意義”から論じなければ、タミフル騒動は決着させようもないのでは?だから、真の答えなんて訳が無い。
 
 
 
しかぁ~し、私にとっては、このすったもんだで“タミフル”を使わなくなったら、それはそれで嬉しい。

自然治癒する疾患に薬を服用する事には、大いに抵抗を感じる私としては・・・なのだが、経緯が気に入らない。こういう、センセーショナルな扱い方をマスコミがした事が、、なのだ。

タミフルを飲まなくなる事(全世界の7割を消費している日本人って一体、何者?)の理由が、因果関係もハッキリしない、いわゆる“恐怖心”、新興宗教のアルマゲドンみたいな理由で、行われるのは、大変、よろしくないと思うわけだ。

ちゃんと、理屈(効果が無い事はないけど、貢献度は僅か)を理解して『そんなら、飲まないよ』となって欲しい訳だ。免疫学的には吸入(リレンザ)の方が、優れている(と思う)し。

そして、マスコミは、そのような一般大衆に理由を理解してもらえるような方向で、番組作りをして欲しいのに、結局、今朝のようになってしまう。そんな風にやるんだったら、、、、


---全く、バランスが欠けている---


おいっ、マスコミ!!タミフルでやれんなら、抗生物質でもやれよ!!

イギリスの“爪の垢”すら飲めない体質の日本の厚生労働省に対して、『ウイルス性疾患で抗生物質を使う事を止めさせろ!!』と言ってやれ。

何でもかんでも、抗生物質を飲めば病気が治ると思っている国民と、その圧力に負けて処方しちゃう医師に対してだよ!!
(薬剤師は、何も出来ないし権限も無いから言っても無駄だよ。悲しいけど。こういう騒動があると、自分達の無力感をひしひしと感じちゃう。これもスッキリしない原因なんだよなぁ・・・)

2007年03月24日

Infertility, infertility treatment, and congenital malformations: Danish national birth cohort

20070324_syussan.jpg今朝の読売新聞1面は、圧巻だった。1面全てが“医療関連”記事で埋め尽くされていたからだ。私の知る限り(って、ちょっとしか知らないけど)こんな事は初めてだ。

で、トップニュースが、代理母出産は認められないとの最高裁判決だ。この問題に関しては、行政や裁判所、法律が介入し過ぎる事には、違和感を感じている。

最高裁が認めなくても、アメリカで代理出産した事を黙っていれば(アメリカでは出生証明書に“代理”の文字は入らない)お役所は出生届を受理し、申告しちゃう(向井亜紀さん達は、テレビ番組なんか作ったりしたから、バレバレ)とお役所は認めないってのは、どう考えてもオカシイ。

まぁ、正直者が馬鹿を見るのは、日本の特徴だからしょうがないけど・・・・。(なんの本で読んだか思い出せないんだけど、外国人の著者が日本人の「しょうがない」という感覚・感情に大変興味をしめしていたっけ・・・、余談だけど)


その話の繋がりで、BMJ に面白い論文が掲載されていたので紹介する。

それは、、、『不妊カップルの単胎児は先天異常の割合が高い』ってコホート。

詳しくは BMJ のオンライン版『Infertility, infertility treatment, and congenital malformations: Danish national birth cohort』を見て頂くとして、、、、

①不妊期間が12ヶ月以上になると不妊治療の有無にかかわらず、単胎児の先天異常の発生率は軽度ながら、有意に上昇する
②単胎児の場合、妊娠成立までの期間が長引くほど発生率が高くなる
③不妊治療を受けた群の単胎児では、生殖器系の先天異常が有意に多い
④双生児では、いずれの群でも発生率に差はない

この④が面白いと思いません?

双子ちゃんだと、先天異常の発生率の上昇はないって、どうしてなんだろう??ちなみに、以前、BMJ には双子ちゃんの IQ は 単胎児より低いってのがあったけど、これと関係有るのだろうか???

どっちにしても、興味深い。

※ところで、先天異常の自然発生率は約3%と言われている。100人に3人の割合だ。多分、日本人の皆さんにはショッキングな数字だと思われる。昔から、日本では黙って隔離してたからね、こういう子の事を。それに、“こけし”してたし。“こけし”とは、子を消す、すなわち、子殺しのこと。

他のしっかりした疫学調査があるのかどうか知らないけれど、高齢になると先天異常の確率は高くなる。経験的にも感じる所だ。これは女性に限った事ではなく、男性にも言えるそうだ。

高齢になれば、妊娠もしづらくなり、そして、、、、日本の高学歴化の弊害がこんな所にも表れてくる。今までだって大学には入っても勉強もせず、そして全入学時代・・・・・。それでなくても、薬学部なんて必要の無い6年間!!

若者は、くだらん大学なんぞに行かないで、さっさと働いて、一人立ちしろ!?ってか!

このコホートでは、不妊治療によってインプリンティング異常であるプラダー・ウイリー症候群が発生しているとの事。

やっぱり、現在の不妊治療には、無理があるのかなぁ!?って思ってしまう事実だ。


話は変わるけど、最近、マスコミなどでも安易に『刷り込み(インプリンティング)』なんて言葉を使っているから、一般大衆に間違った認識が広まっているように感じる。

『遺伝子に刷り込まれる』って表現だ。個人的に習得した技術や民族的に獲得した性質などが、あたかもコンピュータのハードディスクに記憶されるが如くをイメージして、この表現を使っているように見受けられる。

遺伝子に刷り込まれるってのは、単に DNA が“メチル化される”事を言う。間違っても“ハードディスクに記憶される”ようなものではない。

でも、言葉って、間違って使っている人の方が多くなると、それが正しくなる事があるから困っちゃう。こうなると、話が食い違ってくるからだ。


人の生殖(先天異常の発生率などなど)に関してもそうだけど、勘違いや思い込みが蔓延するのは、専門家が啓蒙を怠っているからだとも言えると思う。

ことある毎に、喋っていれば、タミフル騒動やアルアル大辞典事件なんて起きないんだよなぁ。だから、私も、ことある毎に“突っ込んで”るんだけどね(薮睨みも多々ありが玉に傷だけど・・・笑)。

2007年03月27日

乳癌増殖の火種は幹細胞だけではない

20070327_Jupiter.jpg最近、めきめき台頭してきた“がん幹細胞”説に一石を投ずる内容。でも、、、新しい考え方が広まろうとしている時期って、必ず、このような反論?が飛び交う。

結局、どっちが正しくて、どっちらかが間違っているみたいな単純な図式じゃないってところに落ち着くのが“落ち”。

分子生物学的にも非常に面白い分野なんだけど、ヒトの“生き死に”の方向から眺めると『がんって病気なの?』って疑問も湧いてくる。老化の表現型のひとつなんじゃないの?って。

乳癌増殖の火種は幹細胞だけではない

提供:Medscape

幹細胞は乳癌の進展と再発に寄与するほんの一因でしかなく、幹細胞様の前駆細胞が関与している可能性をある新規研究が明らかにした。今後はこの細胞を治療標的にしなければならなくなるだろう。

Allison Gandey
Medscape Medical News

【3月16日】幹細胞は乳癌の進展および再発に寄与するほんの一因でしかない。『Cancer Cell』3月号に発表された新規研究で、幹細胞様の前駆細胞が乳癌に関与している可能性が明らかにされた。今後はこの細胞を治療の標的にしなければならなくなるだろう。

首席著者であるハーバード大学医学部(マサチューセッツ州ボストン)のKornelia Polyak, MDは「我々がかつて認識していたより、乳房腫瘍ははるかに不均一な細胞でできている」とMedscapeに語った。「1つの腫瘍の中に異なる細胞が多数存在しており、ある治療法がそのすべてに対して有効とは限らない」。

Polyak博士らは、ヒト乳房腫瘍標本に遺伝学的に異なる2種類の癌細胞集団があることを発見した。これは、その2種類の細胞型のほかにも別の細胞型が乳癌に関与している可能性を示唆する。

各細胞型の遺伝的特徴を解析するうち、その癌幹細胞候補がある分子経路の活性化によって誘導され、正常幹細胞そっくりになることを突き止めた。「乳癌由来のCD24+細胞およびCD44+細胞の分子と表現型を包括的に解析した結果、遺伝子発現プロフィールや後成的(epigenetic)・遺伝的(genetic)プロフィールが明らかに異なる細胞集団を形成していることが分かった」と同研究チームは同論文で説明する。本研究はNovartis Pharmaceuticals社、米国立衛生研究所(NCI)、米国防総省の後援で実施された。

「CD44+細胞は多くの幹細胞マーカーを発現するとみられる」とPolyak博士らはいう。「しかし、1つの腫瘍内でCD24+細胞とCD44+細胞の遺伝子が異なるという事実は乳癌の癌幹細胞仮説の妥当性を問うものであり、それと同時にクローン性進化が腫瘍の不均一性に関与していることを示唆している」。

幹細胞仮説は「短絡的」

Polyak博士らが候補にした細胞、乳癌幹細胞は2003年に患者の腫瘍から精製されている。CD44+は正常な乳房細胞のマーカーと同じであった。免疫系をもたないマウスにこれを注射したところ、このCD44+細胞は乳房腫瘍を発生させる能力を示した。さらにCD24+マーカーを発現した関連細胞もみつかり、これらがCD44+細胞の子孫細胞であると示唆された。

Polyak博士らは遺伝子活性解析を行い、これら2種類の細胞型の関係を調べた。このCD24+細胞はCD44+細胞に非常によく似ていたが、必ずしも遺伝的に同じではなかった。CD44+細胞が本当に幹細胞で、CD24+細胞がその子孫であるならば、遺伝的にも同一であったはずである。この知見は癌幹細胞仮説よりもクローンモデルに符合すると同博士らは示唆している。Medscapeとのインタビューで、Polyak博士は幹細胞仮説が「短絡的過ぎる」と強調した。

同研究チームは、CD44+細胞がトランスフォーミング増殖因子β1(TGF-β1)経路の活性化により誘導されるが、CD24+細胞は誘導されないことも発見した。CD44+細胞を主体とする腫瘍が主にCD24+細胞から成る腫瘍よりも臨床的に悪性であるのも、これが理由であるという。このような癌患者には、TGF-β1経路を標的にした治療が効果的と考えられる。

「我々の知見を検証し、CD44+腫瘍細胞を標的にすることで乳癌患者の臨床管理が変わるかどうかを判断するには、特に臨床試験による研究を進める必要がある」とPolyak博士らは結論づけた。

Cancer Cell. 2007;11:259-273.

Medscape Medical News 2007. (C) 2007 Medscape


人の運命を知る事、暴く事ってのは、昔から神の領域に属する事だった。ギリシャ神話では、それはアポロンの領域。それ故、全能の神ゼウスに勝るとも劣らず、人々から畏れられていた。(ゼウスとの違いは、アポロンは人々から好かれていたという点だろう。アポロンの対極はディオニソスにせよ)

現代では、その神に近い領域が“遺伝子”という事なのだろう。

病気に関する運命を遺伝子から語る事は、今でもタブーのように扱われている。そして、誰しもがそれに関わらずに、答えが出せないものかともがいているように見える。(それをイイ事に・・・って目で見れば、医療業界や健康産業はハゲタカも同然。でもハゲタカって悪者なのか?)

答えがわかっているのなら、言ってしまえば簡単だけど、でも、それじゃ、救いようもない・・・。真面目に取り組むほどジレンマ・・・・。

脳動脈瘤が遺伝により早期化 --- 次世代では若年発症に注意を

〔サンフランシスコ〕 シンシナティ大学(オハイオ州シンシナティ)脳血管遺伝学科長で神経学のDaniel Woo准教授は、脳動脈瘤を遺伝により受け継ぐと前の世代よりも血管破裂が早期化すると米国脳卒中協会(ASA)の国際脳卒中会議2007で報告した。


遺伝的表現促進を研究

 この現象は遺伝的表現促進と呼ばれ、ある世代に見られた疾患が遺伝子により次の世代に受け継がれた場合、次の世代の疾患の発症が早期化することを指している。

 Woo准教授らは、頭蓋内動脈瘤と関連する遺伝的表現促進について研究を行った。動脈瘤により脆弱化した血管が破裂すると脳内で出血する。このような破裂は、くも膜下出血の原因となる。

 同准教授によると、頭蓋内動脈瘤を有する患者の約10%に同じ疾患を有する第 1 度親族がいるという。

 既に、先行研究で遺伝的表現促進が遺伝性頭蓋内動脈瘤で生じることが示されてきたが、顕著な促進の原因が次の世代による過度の喫煙と高血圧である可能性は考慮されていなかった。同准教授は「先行研究がこれら 2 つの危険因子を比較対照しなかったので、次世代で動脈瘤破裂が早期化する現象の原因はその世代のたばこの吸いすぎや高血圧の長期化ではないのかと考える人がいた」と説明した。

 そこで今回の研究では、複数の国で親子あるいは伯(叔)父・伯(叔)母と甥姪で頭蓋内動脈瘤を発症した35家族を調べた。両世代で動脈瘤破裂の年齢を比較し、家族の喫煙と高血圧の病歴に関するデータを収集した。

 その結果、強い促進が判明し、1 世代で平均して15年早期化した。したがって、親の世代で頭蓋内動脈瘤が50歳で生じると、その子世代では35歳くらいで動脈瘤破裂が見られた。


喫煙や高血圧が原因ではない

 喫煙と高血圧の差異はこの現象を説明しなかった。前の世代の親族よりも動脈瘤破裂が早期化した若い(次)世代は喫煙する傾向が低かった(前の世代では平均27pack-yearに対し次の世代は平均15pack-year)。

 また若い(次)世代は前の世代と同程度の長期間の高血圧は見られなかった。高血圧の平均年数は前の世代では 3 年くらいであったが、次の世代は 9 か月ほどであったという。

 頭蓋内動脈瘤の 2 大危険因子である喫煙と高血圧を除外すると、世代ごとに悪化する遺伝性異常が存在することが示唆される。

 この知見から、動脈瘤破裂が生じる傾向がある家族では、早期に発症するリスクが高いという強い証拠が存在するので、若い世代に早期スクリーニングを行うことが望ましいという。

 症候性の大きい頭蓋内動脈瘤が同定されたならば、破裂前に治療するか詳しくモニターすることが勧められる。


自分の運命(遺伝子型)を知って、どのように行動するかは、それぞれの人が考える事だ。いや、それ以前に自分がどのような遺伝的タイプを知りたいと思う人もいるだろうし、その逆もあるだろう。それぞれの人生なんだから、それぞれが考えれば良い。一番いけないのか、、、、

---他人まかせ---

だ。知ってから受け入れる方を善しとする人、知らないうちにその時が訪れた方が善しとすると人、どちらにしても、脳動脈破裂の運命は、現代医学では変えられないのだから。
 
 
 
NHK ドラマ『ハゲタカ』が終わった。

リストラされる段になって『それは酷いんじゃないか?』と泣き言をこぼす人達に対しては、私は、はっきり言って同情よりは軽蔑の感情の方が大きい。

自分の部署が“泥船”かどうかは、そこで働いている人間が一番分かる筈だ。

なのに、それを知ろうとしないか、見て見ぬふりなのか、知っていたとしても自分だけ抜け駆け出来ない浪花節タイプの人間なのかは分からないが、結局、自ら(の怠惰・無関心かあるいは性格)が招いた悲劇には違いない。それを、他人のせいにする姿には違和感を感じるのだ。(泣き言をこぼさない人に対しては、何も言う事はないし、それはそれで立派だと思う。自分の人生を自分で決めてるんだから)

運命を知る事(自分の部署がヤバイと感じる事)で、それが回避できるなら、そうする事が人間の義務だと思う私には、“人生他人任せ”の人には同情できない。

ドラマでは、最後に EBO でこれらの人々は救われるわけだが、それは、金銭に対する頓着も無く、朴訥と働いていたから報われたなんて甘い解釈では、決して無い。単なる偶然だ。(ただし、結果をこのような“純粋な想い”にすりかえる事は、許されていいと思う。嘘も方便だ)

ほとんどは、そういう“純粋な”意志とは別次元の所で運命は決まる。何も悪い事をしていなくても、その地域に地震は起きる。偶々、投資家が興味を持ったから、会社は救われる。よくある話だ。


これと、遺伝子の話は似ていると思う。


40歳を目前にした頃から、神々(宗教)の世界に興味を持ち始めた私だが、元々、科学万能信者だった私にとって、遺伝子を語る事がタブーだという事の方にこそ、疑問を感じていた。(がん告知に是非があること自体を疑問に感じている自分の方こそ、変わり者なのか?とも思っていた)

そして、神々の世界や宗教を知ったら少しは変わるかもしれないと思ったりもしたが、これを知る事は、益々、自然の畏怖を感じる事になり、運命をタブー視する事に対する疑問は、益々、強くなってしまった。知る前には、神々の世界や宗教は、慈悲に富んでいる世界だとばっかり思っていたが、実際、神話の世界の神々は、思いっきり無慈悲だったからだ。

だから、益々、意図的に知らせない事には違和感を感じるようになった。知りたがってるけど、ショックが大きくて耐えられないかもなんて考える事は、おこがましいと。もっとも知りたくも無い人に、強制的に知らせる事は論外だが。
 
 
 
朴訥と仕事をしている事で報われるわけじゃない。健康に良い(定義することも難しい)ことをしていても報われるわけじゃない。

そう、神様に慈悲があるわけじゃないのだ。幸せな人はとことん幸せに、不幸な人はとことん不幸に。神様は全く、不平等だ。でも、それが現実なのだ。(余談だが、無慈悲なのに、神話や宗教がどうして存在するのか?今、私は、それは神話や宗教に内在するカタルシス効果に尽きると思っている。その人が救われればいいのだ)
 
 
 
というわけで、益々『運命なんだから、結果に対して悪あがきしなさんな!結果を畏れず受け入れる為には智恵が必要だ!』ってポリシー(だったのか?)のこのブログで、この2本の報告を紹介したいが為のエントリーでした。

2007年03月28日

分子の目だけじゃ、やっぱダメ

20070328_Rocky.jpgなんの事かと言うと、がん治療。この分野では分子標的薬なるカテゴリーがあり、それなりの成果をえているんだけど、やっぱり100%じゃない。理論的には100%の筈なのに、何でだろ?っていわれてた。

薬剤師なら、PK , PD で説明しようとするだろう。でも、今までのがんの病理学的理解が間違っていた(これは言い過ぎだけど、この方が分かり易いから、こう表現するけど)としたら、やっぱり、分子標的薬の効果が100%じゃない事を説明できる。

この道の専門家からすれば、がん関連の研究は、ステップ・バイ・ステップで進歩しているって感じているのだろうけど、私なんぞにとっては、ここ1~2年で、大きな変化を感じてしまう。


創刊号から購読している BTJ 3月号のがん幹細胞の特集では、この幹細胞自体を見つけるための“分子の目”、ってゆーか表面抗原のスクリーニングの他に、このがんの“場”の見方からがん幹細胞を見る目を紹介している。

はっきり言って、私には、、、


---目から鱗が落ちた---

って内容だ。

国立がんセンター東病院臨床開発センター臨床腫瘍病理の落合敦志部長へのインタヴュー記事がそれだ。

『がんは染色体に変異が入った細胞の均一に集団ではなく、血管や間質といった周辺環境ががん細胞を支える複雑な組織である事が明らかになり、がん研究のパラダイムシフトが急速に進んでいる。』と、言葉にすれば簡単なんだけど、これの意味する所は、、、深い。

今までの私達(私だけ?)の“がん”のイメージは、その塊(=癌)はすべてがん細胞から出来ていて、その中に血管など通っているってものだったと思う。

しかし、本当は、がん組織に占める“がん細胞”の割合は3割程度なのだと。スキルス胃癌に至っては、たかだか10%にも満たないのだと。

あとは何があるのかと言うと、いわゆる“間質”なのだそうだ。これ、病気じゃ無い臓器なら、当たり前の構造だけど、まさか・・・・がんまでこうだったとは・・・・って目から鱗が落ちたわけだ。

で、抗がん剤を投与するとがん組織がなくなるのだけど、実は、それは、主要な構成成分である間質細胞がなくなるって事だったのだ。それだけ間質を構成する細胞は流動的であると。

がん組織にはがん細胞以外にも重要な細胞があるってことなのだ。


これが、がん幹細胞とどう繋がるの??


いわゆる幹細胞の存在場所は“ニッチ”と呼ばれる特別な場所だ。ここでは、幹細胞は“冬眠”している。何故冬眠するかと言うと、のべつ幕なし“分裂”を繰り返していると、その内、遺伝子に異常が蓄積し、がん細胞になっちゃうからだ。だから、必要な時だけ、必要な分を補充して、あとは冬眠している。

そして、その幹細胞の行動スケジュールを監視(管理)しているのが“ニッチ”を構成している細胞達だ。


このような正常組織と同様に、がん組織は、その“場”にがん幹細胞の為の“ニッチ”を作っているのだ。


じゃ、その“間質細胞”って何だよ?何処から集まってくるんだよ?

それは、骨髄由来の線維芽細胞や骨髄細胞などだ(流動的なわけだよ)。がん細胞がいろんな因子を放出し、自分の所に集まってくるようにしている。動物で実験すると面白い事に、同じがん細胞を植えても、植える場所によって、すなわち、皮膚、肝臓、肺など場所を変えると、誘導される“間質”が異なり、がん細胞の種類を変えると、また変わる。すなわち、、、、

がん細胞は、存在していくために、自分で自分の環境を作るらしい。(がん幹細胞は、冬眠スケジュールを監視してくれる間質を教育していく。がん組織にある線維芽細胞自体は正常組織のそれと違いはないが、性質は異なっている)

例えば、皮膚がきちんと形成されるためには上皮細胞があるだけじゃ駄目で、間質細胞としての線維芽細胞がそこにやってきて、コラーゲンを収縮したりして、上皮細胞に適当な“張力(テンション)”を与える必要がある。これで、ちゃんとした“皮膚”になるのだそうだ。


“がん”が“がん”に成り得るためにも言える事じゃないのか?!


転移に関しても、先ず、転移する先に、がん幹細胞の住む所、すなわち“ニッチ”が形成されて(元の場所に集まってきた骨髄細胞から出発するか、骨髄から直接出発するか、、どちらにしても飛び易い)、それから“がん細胞”が飛んでいくというスキームも示されている。

この考えが肯けるのは、臓器によって形成される“間質”が異なるなら、がんによって転移先が特定の臓器だけって現象がある事が良く理解できるからだ。

がんは成長するために“成長因子”を必要としている。(ちなみに、この受容体が分子標的薬のターゲットでもある)そして、臓器によって“成長因子”は違いがある。量や不活性化されている因子を活性化する機構、さらに成長するために“足場”も重要だし。

例えば肝臓で産生され不活性型の状態で存在する IGF-2 は 必要な時にプロテアーゼで分解されて活性型になる。MMP は大腸癌で分泌されるけど、大腸癌が肝臓に転移する時には、この MMP が IGF-2 を分解する。すなわち、大腸がん細胞はこれを利用する。

こんな事からも、がんの“生活環境”は重要なファクターだと言えるわけだ。


だから、細胞ひとつを見て“がん”だと言うのと、病気としての“がん”は色んな意味で違うと言える。in vivo と in vitro の違いって言ってしまえば簡単なんだけど・・・。

異常が起きた細胞が出来ても、それを“育てる環境”が揃わないと、病気としての“がん”にはならないのではないか?逆に言えば、周りの環境を変えれば、がん細胞を死に導けるのではないか?


そんなわけで、“分子の目”だけをもってしてもがんの核心には迫りきれず、別な視点からの理解と、戦略が必要で、分子標的薬だけでは不十分なのも、うなづける訳だ。


小さい方へ、小さい方へと進んでいた医学・生物学の中で、久しぶりに“視点”を改めさせてくれる(目から鱗が落ちた)ものに触れたので、自分の頭の中を整理するためにも書いてしまった訳だが、やっぱり、、、、、

ここまで、システマチックだと、がんは老化の表現型の一つだと・・・・・、思わざるをえないんたよねぇ、これが!!部分的には制御できても、全ては抑制できない・・・んじゃないかなぁ!

2007年03月30日

冠動脈硬化の進行に対するトルセトラピブの効果

20070330_Atherosclerosis.jpg薬物中毒とメタボリックシンドローム』でも書いた事だけど、コレステロール値、やっぱり“冠動脈硬化の進行”と関係なかった。今回の報告は、前回よりもっと強力で、HDL(善玉コレステロール)を強力に増やし、LDL(悪玉コレステロール)を強力に低下させたにも関わらず、血管内超音波検査では冠動脈硬化の退縮はもたらされなかったことが観察されてしまった・・・・という内容だ。

先般、動脈硬化学会がガイドラインを発表した所では、『コレステロール値を気にし過ぎるな!!』って事で、総コレステロール値だけで、スタチン系薬剤によるコレステロール低下療法開始すんなよ!!HDL 値と LDL 値を基準として投薬の目安にしろよ!!って事だったのだが、、、今回の報告は、これすら否定する結果となってしまった。

そして、この 24 ヵ月間の臨床試験では、コレステリルエステル転送蛋白阻害薬トルセトラピブにより、高比重リポ蛋白コレステロール値が大幅に上昇したにもかかわらず、、、、ってことと、トルセトラピブは血圧を上げちゃうんじゃないのか?って事もあって、この薬剤の研究プログラムはすべて中止されたんだってさ。

でも、この論文の考察では、HDL 上昇と LDL 低下させたにも関わらず、予想通りの結果が得られなかったのは、トルセトラピブに特有の有害作用があったからなんじゃないのか?って事で、締めくくってるんだけど、、、


動脈硬化は、ほぼ“遺伝子”で決まり、『コレステロール値は単なる結果で原因じゃない』って考察の方が自然だと思うんだけど、どうして出来ないんだろう??

冠動脈硬化の進行に対するトルセトラピブの効果

Effect of Torcetrapib on the Progression of Coronary Atherosclerosis

S.E. Nissen and others

背 景

高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値は、心血管リスクと逆相関する。コレステリルエステル転送蛋白(CETP)阻害薬トルセトラピブ(torcetrapib)は、HDL コレステロール値を上昇させるが、この逆相関のメカニズムと関連する機能的効果は依然不明である。


方 法

冠動脈疾患の患者計 1,188 例に、血管内超音波検査を行った。低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値を 100 mg/dL(2.59 mmol/L)未満に低下させるためアトルバスタチンを投与した後、患者を、アトルバスタチン単独投与群またはアトルバスタチン+トルセトラピブ 60 mg/日投与群に無作為に割り付けた。24 ヵ月後、910 例(77%)に再び血管内超音波検査を行い、疾患の進行を判定した。


結 果

24 ヵ月後、トルセトラピブ+アトルバスタチン投与により、アトルバスタチン単独投与と比べて、HDL コレステロールの約 61%の相対的上昇と、LDL コレステロールの 20%の相対的低下がみられ、LDL コレステロール 対 HDL コレステロールの比は 1.0 未満に達した。トルセトラピブは、収縮期血圧 4.6 mmHg の上昇とも関連した。アテローム量の比率(主要有効性評価項目)は、アトルバスタチン単独群では 0.19%上昇し、トルセトラピブ+アトルバスタチン群では 0.12%上昇した(P=0.72)。副次的評価項目である標準化したアテローム量の変化に関しては、トルセトラピブを支持するわずかな効果が示されたが(P=0.02)、もっとも重篤な病変部位ではアテローム量の変化に有意差はみられなかった。


結 論

CETP 阻害薬トルセトラピブは、HDL コレステロールの大幅な上昇および LDL コレステロールの低下と関連していた。また、血圧の上昇とも関連しており、冠動脈硬化の進行に対する有意な抑制作用はみられなかった。こうした有効性の欠如には、この薬剤クラスの作用機序や、分子特異的な有害作用が関連している可能性がある。(ClinicalTrials.gov 番号:NCT00134173)

(N Engl J Med 2007; 356 : 1304 - 16 : Original Article.)
(C)2007 Massachusetts Medical Society.


さて、この NEJM の論文を読んだ、貴殿の感想は??


結局、製薬メーカーの思惑に、マスコミや目立ちたい“オーソリティー”が、スタチン系薬剤には大した副作用も無い事をイイ事に、『コレステロール=悪。こいつを叩いて心筋梗塞を予防する事は、将来の医療費増大を抑止できる。だから、ジャンジャン使おう』って事を宣伝し捲ったから、誰一人として“コレステロール=悪”を疑わなくなったって事なんだろう。


でも、まてよ??

スタチン系薬剤が発売された時期と、コレステロール=悪のコンセンサスが得られた時期って一致してない。製薬メーカーがスタチン系薬剤の開発に着手した時を発売より溯って10~15年前だとしても合致しないし、スタチンの販売戦略の一環としてだって、今みたいに“病気の宣伝”が出来なかっただろうから、やりようも無い。

ということは、、、、

製薬メーカーやマスコミや目立ちたい“オーソリティー”は関係ないのかっ??
 
 
 
だとしたら考えられる事は、『原因を知る事で恐怖を克服したい』という集団心理なのだろうか?

死に直結する動脈硬化は、昔から恐れられていた。

そういう恐怖って、病気に関わらず、原因が解明されればその恐怖は対処の可否に関わらず緩和される。

そういう集団心理、それを迎え入れる素地が高まった所(時期)で、誰とはなしに“コレステロール=悪の大魔王”説が流布し、一般大衆もこぞって、これを受け入れた。

例えば、、、、
・家族性高コレステロール血症の患者では若年での動脈硬化を発症する。
・動脈硬化が原因で血管系疾患で死亡した人のコレステロール値が高かった。

これくらいの見かけの現象でさえ、当時では“コレステロール=悪の大魔王”のエビデンスとされてしまっても無理はなかっただろう。

あっ!!私、時期を特定しないまま、“時期”なんて言葉を使っているが、44歳の私でさえ、この業界に入る前から理由も知らないまま“コレステロール=悪の大魔王”だったから、かなり前から、ある程度の時間をかけて、ジワジワと浸透していった事なのかもしれない。


もし、可能なら、ヒトが生まれてからの食事を、コレステロール高含有食群と低含有食群、気にしないで何でも食べる群という3群に別けて、経過を観てみたい。

ふと、思い出したんだけど、学生時代、学術系の部活動の部長をしていた私は、うさぎ(日本白色種)を使って食事中のコレステロールの影響を調べる実験をやったっけ!

日本クレア(株)さんに、うさぎ用飼育飼料として3%コレステロール含有、3%コレステロール+βシトステロール(植物ステロール)、を作ってもらって、普通食で飼育する3群間の比較試験だ。うさぎが動脈硬化で死んでくれなかったので、結局、臓器中コレステロール濃度を測定して、健康への“害”と、植物ステロールを同時に摂取(野菜を食え!!)すると吸収されないと言う事を、発表の場である学園祭で、来てくれた一般の人にも訴えた。

まず最初に『コレステロール=悪者』の前提に立っていたわけで、臓器中コレステロール濃度が高い事が、健康に悪い事の検証もしてないのに、なんの疑いも無かった訳だ。そして、テーマを与えてくれた、公衆衛生学の教授だった顧問の先生も、何も言わなかったし。

そういう時代だったんだよなぁ!!なんか、急に思い出したら、顔が熱くなってきちゃった。恥ずかしい。
 
 
 
私は、スタチン系を“役立たず”と言っているわけじゃなくって、症例を選べって言いたいだけなんだけど・・・。でもなぁ、それが難しいんだよなぁ!いろんな意味でね。


嘘じゃないからね!!

そう、世の中、『嘘じゃない』ってのが、曲者なんだよな。

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