癌幹細胞が癌再発と関連
現状を取り繕う事に意義があるのか?はたまた、治癒させる事が目的なのか??
がん治療って、これを見失いがちだと思う。近くにいればいるほど『灯台下暗し』なんだろうな。尤も“奏功率=生存率”って疑っていなければ、見失うもへったくれもないんだけど。
ところで、新しい発見があった時の対応っていうのが、やっぱり日本人だなぁって思うのがコレ!『薬剤溶出性ステント(DES)留置後の予後に疑問を投げかける研究結果が海外で相次いで発表されている』ことに対する、日本の医学界の反応!
【横山氏(日本循環器学会総会・学術集会の会長)は、こうしたDES留置後の予後問題について、「(日本では)まだ十分なエビデンスが集まっているとは言えない」との認識を示し、3月15日から神戸で開かれる学術集会での議論を踏まえ、「学会理事会などを通じ対応を協議していきたい」などと言及した。】
・・・・・、なるほど、『これから、何をやっていけばいいのかを、みんなで話し合いたい』ってことで、まだ、何にもやっていないと・・・ふぅ。
日本が基礎でイイ線行っているってのは、基礎は責任がないから!ノビノビ出来、臨床がからっきし世界をリードできないのは、臨床には責任が伴うから!萎縮しちゃってる!!
ってことで、いいのだろうか??日本人は、責任を負うのが“苦手”だからね。連帯責任が好きなところを見ても、それは明らかだよね。
だから、日本発の臨床における【意識改革】【パラダイムシフト】ってのは、100年経ってもありえないんだろうなぁって思う。先走ってやっちゃって、後で『ホラ、みろ』って言われるのが、本当に嫌いなんだよね、日本人は。(そして“先陣を切る”事を評価しない国民性でもある。全般的には、これが理系研究者を評価せず、尊敬もしない事に繋がっているのだろう。ピカ新の薬が開発できないのも、ベンチャー企業が育たないのも投資しないのも同じ。功名心に否定的ってこともあるのかな?)
でも、これは臨床的サービスを提供する側だけの問題じゃなく、それを享受するクライアント(患者)側の意識の違いもあるんだと思う。たとえば、がんに罹患した時のリアクションが、世界と日本では違うからね。
さて、何度か取り上げている“がん幹細胞”。時代は、がん幹細胞の存在とそれが病態に関与する事は“決定的”だといえるところまで来ていると思う。
でも、日本人に『疾患への奏効性が生存率の適切な代理指標となることを示す証拠は驚くほど少ない』っ言えるだろうか?
【意識改革】【パラダイムシフト】って言葉は知ってるけど、自分からは言い出さない、やりださない、恐る恐る、ちょっとずつ・・・・。
そして、がん治療の最前線にいる人たちほど、今までやってきた事への思いが断ち切れず(っていうか、自分を否定する事って考えちゃうのかも?!そんなことないのに)、抗がん剤レジメンを捨てられない(代わるものが無いからしょうがなく)・・・・。
『研究者らの報告によれば、現行の抗癌療法は劇的な効果を発揮しうるが、ごく少数みられる癌幹細胞も治療標的となっていない場合、長期寛解に至る可能性は低い』をどのように受けとるのだろう??
癌幹細胞が癌再発と関連提供:Medscape
研究者らの報告によれば、現行の抗癌療法は劇的な効果を発揮しうるが、ごく少数みられる癌幹細胞も治療標的となっていない場合、長期寛解に至る可能性は低い
Allison Gandey
Medscape Medical News【2月26日】現行の抗癌療法は劇的な効果を発揮しうるが、ごく少数みられる癌幹細胞も治療標的となっていない場合、長期寛解に至る可能性は低い、と研究者らは述べている。最近開催されたBlood and Marrow Transplantation tandem meeting(コロラド州キーストーン)では、ごく少数みられる未分化の長期生存細胞が癌再発に関連する可能性のある癌増殖を担うことが報告された。
「多くの癌は自己再生能をもつごく少数の細胞から発生し、これらの細胞は、より多くみられる分化した子孫細胞とは生物学的に区別される。このことは、我々のような本分野を専門とする研究者には十分理解されつつある」と筆頭研究者であるジョンズ・ホプキンス大学Kimmel癌センター(メリーランド州ボルティモア)のRichard Jones, MDはMedscapeに述べた。「この点は、治療を担当する多くの腫瘍専門医に十分認識されていない可能性がある」。
この概念を取り入れた新規治療法は、まだ治療の主流となる段階ではないが、癌幹細胞と他の大多数の細胞を区別することで、画期的な新規治療法が開発される可能性がある、とJones博士は指摘した。「パラダイムの変化が必要である」とも同博士は述べた。現在有効な治療法の多くは、分化した癌細胞を標的として開発されており、生物学的に区別される癌幹細胞に対する活性はほとんどない可能性がある。
今回の知見に関するニュースリリースにおいて、Jones博士は現行の癌治療を「草むしり」にたとえている。「タンポポをむしるとき、もし根から抜かなければ、またタンポポは生えてくる」。雑草の根のように、ごく少数の癌細胞が分裂能をもち、新しい癌細胞へと成長している可能性があると述べている。
臨床的な奏効は全生存率の改善に結びつかない可能性現在、ジョンズ・ホプキンス大学および他の施設では、幹細胞を標的とするモノクローナル抗体といった新規治療法に関する臨床試験が実施されている。「まず、化学療法や幹細胞移植といった手法を用いて、患者の症状軽減を目的とした、癌そのものに対する治療を行う。これらの治療は癌細胞の分裂過程を阻害する。すなわち、タンポポの地上部に対して有効性を発揮するのである。その後、続いてタンポポの根、すなわち幹細胞に対する治療を行う」とJones博士は述べた。この臨床試験の結果は、およそ1-2年以内に得られる予定である。
治療による客観的かつ臨床的な奏効は、全生存率の実質的な改善と結びつかないことが多い、と会議でJones博士は示唆した。疾患への奏効性が生存率の適切な代理指標となることを示す証拠は驚くほど少ない、と同博士は主張した。
臨床試験において臨床的奏効性を主要評価項目とする主な利点は、数週間から数カ月間にわたって測定可能であり、医薬品開発の段階的過程をより迅速かつ効果的に進めることができることである、とJones博士は説明した。これとは対照的に、生存率に対する有益性を実証しようとすると、臨床試験デザインは大幅に複雑となり、また、通常、統計学的有意性を示すためには、多くの患者数と長期間の追跡調査を累積する必要性が生じる。
従来の奏効性判定基準では腫瘍の大きさを測定するため、ごく少数みられる癌幹細胞集団の変化が反映されない可能性がある、とJones博士は指摘している。「我々が癌幹細胞の存在を知ってからしばらくの時間が経過したが、このような非常に少数の細胞集団を同定および標的とする方法については、さらに研究を進めていくための初期段階にすぎない。他の多くみられる癌細胞の死滅が可能な治療法であっても、癌幹細胞には有効でない可能性がある」とも同博士は述べた。
Blood and Marrow Transplantation Tandem Meetings. February 8-12, 2007.Medscape Medical News 2007. (C) 2007 Medscape
さて、Science 誌に非常に興味深い報告があった。
食べ物の臭いを嗅ぐだけでお墓が近くなるよ(Smelling Their Way to an Early Grave)Science February 23, 2007, Vol.315
動物が飢餓状態に近い状態で育てられると、自由に食べられる状態に比べて遥かに長生きする。ショウジョウバエ(fruit fly Drosophila)でさえ、低グルコースの餌、5%糖-酵母成分を与えられたハエは、15%糖-酵母成分を与えられたハエに比べて遥かに長生きする。
このような食餌制限の効果は、ハエがもっと沢山食べられるようにした状態では簡単に元に戻ってしまう。
Libert たち(p. 1133, 2月1日のオンライン出版、および、2月2日のLeslieによるニュース記事を参照)は、あまり予測されていなかった以下のような現象を見つけた:ハエの餌(酵母)に対する臭いを感じさせるだけで、ダイエット効果を弱め6~18%も寿命を短くする。
臭いの受容体を持たないショウジョウバエでは、臭いを嗅ぐことの出来る正常なショウジョウバエに比べて長寿となる。
これ、いま“流行”してる“メタボリック・シンドローム”研究に影響する事、間違い無しである。(匂いは膜7回貫通GTP共役型受容体だから、“味覚”受容体の機能としても同様な事が予想されるだろう)
でも、本来、この分野の研究っていうか知見は、いわゆる生命活動の解明に繋がるようなもので、非常にアカデミックなものなのだが、安易に臨床と結び付けてしまったため(臨床と結びつかないと、お金にならないからなぁ)に、変な方向(マイコミ・シロウトのネタ)に行ってしまっているのが現状だ。(例えば『医学のあゆみ』Vol.217.№1.2006/4/1“メタボリック・シンドローム2006-2007:REVISIT”などを読んでると、なぞ解きみたいでワクワクするくらい面白いのに、新聞やテレビで『内臓脂肪がどうたらこうたら・・・』って言われたりすると、一気に萎えちゃう)
このたった一言で言い表されている“メタボリック・シンドローム”ってのは、一つや二つの代謝経路の事を対象にしてるんじゃなくって、非常に広範囲に及ぶネットワーク的な代謝を含むので、本来、何処か一つに作用する薬やサプリメントで、そのネットワークをどうにか出来る筈も無いのだが、逆に金の成る木にぶら下がりたい輩が『コントロール出来る』って嘘を付けるのは、その広大なネットワークが故に、懐が深いため(生命の危機管理能力、危機回避能力、適応力って言えばいいのか)に、嘘が表面化しない事に拠るという皮肉な結果に成ってしまっている。
だから、『匂いを嗅ぐダイエット』とか、下衆な領域で悪用されないか心配なのだ。
こうして見ると、基礎と臨床ってやっぱり凄い隔たりが在るなぁって感じる。
そして、この隔たりは、『臨床ってのは、相手(患者)があることだから・・・』、これ一言に尽きるんだろうなぁ。
基礎(=サイエンス)が解き明かす事実ってのは、残酷な場合もあるからね。臨床(=アート)は人の心を豊かにするものとして存在意義があるわけだし、クライアント(患者)は利益(=病気の治癒=幸せ)を求めてくるのに、残酷な宣告は・・・・。
p.s.ところで、ずぅ~っと、もやもやした疑問があるのだが、言っちゃっても良いだろうか???それは、、、どこぞで“癌治療専門薬剤師”とか言うものの試験が行われてるらしいのだが、この薬剤師って、一体、何するの?抗癌剤の特性を一杯知ってる薬剤師ってことなのかなぁ?そんなのデータベースで代替できるから、違うよねぇ!?
もしかして、腫瘍内科医(がん化学療法専門医)の処方に、イチャモンつけるとか??(ありえねぇ~~~~)でも、マジなら、スゲェ~~~~~~。