カンナビノイドの作用の多様性には驚くばかりである。
カンナビノイドって言えば“マリファナ”って感じでよく知られていると思うけど、どうしても“悪”のイメージが付きまとう。でも、医学への応用って面から見ると、非常に魅力的なのだ。“悪”でもなんでもない。
というわけで、その最近発見された効能?を Science 誌から拾ってみたのだが、、、
Allergy-Blocking Transmitters
Science June 8, 2007, Vol.316
内在性カンナビノイドシステムは、さまざまな調節性機能を果たしており、中枢および末梢神経系においても、また末梢性器官においても、ますます多くの生理的役割に関与しているとされてきている。
Karsakたちはこのたび、この影響がアレルギー応答の制御にまで及んでいることを発見した(p. 1494)。
既知の2つのカンナビノイド受容体を欠くマウスは、いろいろのアレルゲンに応答して、皮膚の接触感受性を発生させる強い傾向を示した。
この受容体を拮抗物質でブロックすると同様の効果があったが、一方カンナビノイドを壊す原因となる酵素をコードする遺伝子が非存在だと、マウスは接触感受性に対する抵抗性を増したのである。
内在性カンナビノイドあるいはその受容体の制御は、アレルギー治療において有用であるかもしれない。
なお、ヒトとアレルギーについての広い文脈におけるそれらの役割は今後探索されないといけないが。
Attenuation of Allergic Contact Dermatitis Through the Endocannabinoid System
p. 1494-1497.
なんと、現代人を悩ます“花粉症”に効果があるかもしれない!って・・・。実際、マリファナを吸っている人に、聞いてみたいよね!『あなたは、花粉症ですか?』って。
で、冒頭にいろんな作用があるって書いたんだけど、この人体へのカンナビノイドシステムの制御範囲を、私の知っている範囲でズラズラと並べてみると。。。。
■思い出を消し去る物質として
大麻の活性成分に似た天然の化学物質が、脳内に残る不快な記憶を消し去るはたらきをもつという証拠が得られた。この発見は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や恐怖症に対する新薬の開発につながるかもしれない。
■減量と禁煙に有効な薬として
体重が5%以上減少したのは、カンナビノイド 1 受容体(CB1)遮断薬である rimonabant を使用した被験者では4分の3でプラセボを使用した被験者では4分の1、禁煙ができたのはrimonabant被験者の3分の1でプラセボ群では5分の1だった
■マリファナで熱性痙攣予防
カリフォルニア大学アーバイン校(UCI、カリフォルニア州アーバイン)解剖学・神経生物学のIvan Soltesz教授らは、熱性痙攣を発症させたラット脳ではエンドカンナビノイドが結合するカンナビノイド(CB)-1受容体が増加して、γアミノ酪酸(GABA)の放出を阻害することを見出したとNeuron(39: 599-611)に発表した。
■ケラチノサイトにCB2受容体介した疼痛抑制効果
アリゾナ大学(アリゾナ州ツーソン)麻酔学のMohab M. Ibrahim博士らは、2 つあるカンナビノイド受容体の 1 つCB2受容体がケラチノサイト(ケラチン生成細胞)のβエンドルフィン放出を刺激し、βエンドルフィンがニューロンのe受容体に働いて疼痛を抑制するメカニズムを明らかにし、Proceedings of the National Academy of Sciences USA(PNAS、2005; 102: 3093-3098)に発表した。
■カンナビノイドを心血管疾患の治療として
Nature May, 2005
最近Natureに掲載された研究によれば、カンナビノイドが心血管疾患の治療に使えるようになるかもしれない。S Steffensらは、マリファナの主成分であるΔ-9-テトラヒドロカンナビノール(THC)の低用量をアテローム性動脈硬化のマウスモデルに経口投与すると、疾患の進行が抑えられることを明らかにしている。
■カンナビノイド阻害薬 rimonabant による体重減少は2年後も持続
新規のエンドカンナビノイド阻害薬rimonabantによる2年間の治療後、過体重・肥満の患者は体重減少と胴囲減少を維持することができるという知見が得られ、これにより、Sanofi-Aventi社が本年7月に米食品医薬品局(FDA)に同薬の承認申請するための道が開かれた。
■カンナビノイドのシグナル伝達の異常は胚の卵管輸送を妨げる
子宮外妊娠は生殖健康における大きな問題であり、子宮外妊娠を引き起こす原因の多くはまだ不明であるが、原因の1つに卵管における胚の滞留がある。マウスでカンナビノイド受容体CB1に対し遺伝学的または薬理学的な方法でサイレンシングを起こすと、多くの胚が卵管内に滞留し、最終的に妊娠障害が起こることを示す。また、胚の滞留はβアドレナリン作動性受容体のアゴニストであるイソプロテレノールによって回復する。
■脂質代謝異常の過体重患者におけるリモナバンの代謝危険因子に対する効果
選択的カンナビノイド 1 受容体(CB1)遮断薬であるリモナバン(rimonabant)は、肥満患者の体重を減少させ、心血管系の危険因子を改善することが示されている。肥満・脂質に対するリモナバン試験(RIO-Lipids)において、過体重または肥満で、脂質代謝異常を有する高リスク患者を対象に、アディポネクチン濃度などの代謝危険因子に対するリモナバンの効果を検証した。
■骨量と骨喪失および破骨細胞活性のカンナビノイド受容体による制御
破骨細胞による骨吸収の促進は、骨粗鬆症などの骨疾患の病因に中心的役割を果たす。1型カンナビノイド(CB1)受容体を不活性化させたマウスは骨量が増加し、卵巣切除により誘発される骨喪失がみられなくなることを示す。
■肝繊維症に新たな治療法
アルコールや、B型あるいはC型肝炎ウイルスによる慢性的な肝臓傷害は、肝繊維症につながり、その末期症状である肝硬変は大きな公衆衛生問題である。しかし、現在のところ、実効性のある抗繊維形成薬で、人間で使用が認可されているものはない。最近Nature Medicineに発表されたTeixeira-Clercらの研究は、カンナビノイドCB1受容体のアンタゴニストであるリモナバントが肝繊維症の新たな治療戦略となる可能性を明らかにしている。
マリファナがヒトの生理作用とこんなにも絡んでいるのは、何か特別な意味があるのだろうか?まぁ、ケシから採れるモルヒネだって、人体への効果はいろいろとあるから、麻薬を産生している植物は、進化の過程で動物と生活圏を共有していたってことなんだろう?
逆に言えば、人類の祖先と生活圏を共有していない生物(動物・植物含めて)は、ヒトの生理作用とは絡まないってことなのかもしれない。
生活圏を共有するって事で言えば、今、話題沸騰中のコムスン、すなわち“介護”問題が連想される。これって、自分の生活圏に“介護しなきゃナラナイ人”がいるといないでは、その“介護”問題の影響の違いは計り知れない。
そして、その問題の解決方法は、、、無いに等しい。
というか、“問題”の本質に触れる部分がタブーっぽいところがあり、最終的に“善意”とか“人道的”と言った言葉に置き換えざるを得ないところが、問題をややこしくしている。
そもそも、“介護”と“医療”の報酬を同じと考えちゃいけない!
現行制度下では、どちらも“事務的”な労働に対して報酬は払ってくれないが、大きな違いは、、、
『介護の点数は低い』
って事だ。だから、最初から介護は商売にはならないのだ。
医療の方は医師の技術料が比較的高額な為他の職員の給料も捻出できるが、介護の報酬は現場で介護に携わった人の分しか賄えないのが現状だ。
医療では、医師が事務的な仕事をするより、医師は仕事に専念して事務的な仕事は他に任せた方が効率が良いから(医師に金を生まない事務仕事させるなんて勿体無い)現場で仕事しない人の分まで給料を払うことが可能だが、介護ではもともと“事務的な仕事”を抱えられるほど、その報酬に余裕は無いのだ。
そりゃそうだ。介護は、昔は家族がしていたわけで、そこに事務的な仕事なんて発生しない。だから、医療のように潜在的な事務仕事の報酬を医師の技術料に含ませておくような事はないのが当たり前だったわけだ。だが、時代は変わって家族が介護をしている時間がなくなり、その代わりにお金を払って介護してもらうようになった。この辺から、捩れて来る。
介護してもらった人は、介護してくれた人にお金を支払う。そのヘルパーさんの後ろで算盤をはじいている人の分までお金を払おうなどとは思っていない。介護保険はそのように点数が組まれている。歴史が浅いからショウガナイ。
グッドウィルの折口氏は“介護の点数は低い”という事を知らなかったのだろう。美容外科医療のように“ガバガハ”稼げると思ったのだろう。
何もしないで、ヘルパーを働かせて、総元締めをやっていれば左団扇だと思ったのだろう。
大きな間違いだ。
そして、事業が始まってすぐにこれに気づいたから不正請求を始める。当然の帰結だよね。
テレビでは、素人のコメンテーターが『介護は商売にはして欲しくない』と言っているが、一人や二人の小さな組織で、自分たちが現場に出て介護し、自分たちでその報酬を請求していれば、十分ビジネス(職業)になり得るのだ。
だけど、その組織を大きくしても、スケールメリットなんて出やしない。現場で介護しない人の給料まで稼げるほど、介護の報酬は高くないのだ。
たしかに、お風呂付のトラックが乗り付けて介護(入浴サービス)するなんてのは、大きな組織じゃなくっちゃ出来ないだろう。でも、それは企業の規模が大きくなれば可能なのかと言えば『NO』だ。介護だけでペイしようとしても、それは無理なのだ。
居酒屋チェーンの『和民』がコムスンの事業引継ぎに名乗りを挙げているらしいが、このように“介護”以外に利益が出せる部門がある企業であれば、それは可能だ。
本来の介護は“奉仕”だ。
利益が大きい企業が“社会奉仕”の一環として、その利益を介護サービスへ分配する。介護ビジネスは、まともにやったら利益なんて出ないんだから、企業としては『お客様から得た利益を社会に還元する』って気持ちがなくてはつとまらない。(逆に言えば、本業で利益を得ている企業以外に“介護ビジネス”はやらせちゃいけない)
本当に介護は“善意”とか“人道的”とか“奉仕”の心が無くては成り立たないのだ。(消費税を常識はずれな料率にすれば可能だろうけど)
今回の騒動は、私はキリスト教社会にあるような、このような社会的なシステムがやっと日本にも芽生える切っ掛けになるのかなぁ?って感じているのだが・・・・。