食餌療法とがん
マリンパの雑感には、ココログで提供してくれる“検索フレーズランキング”なるブログパーツが貼り付けてある。
前にも書いたかもしれないけど、これが『へぇ~っ』って感じで面白い。
---こんなフレーズが気になってるんだぁ---
---こんな事を気にしてる人、結構、いるんだなぁ---
と、私の予想とは裏腹なことが、いかに多いことか。
そんな中でも、ちょっとは、狙い通りなものもある。
それは“検索フレーズランキング”“人気記事ランキング”両方にランキングされている『花粉症に効く』というフレーズだ。
このタイトルをつけた時は、内容がショボイ事もあり、せめて人の目を引くだけでも・・・って狙ったのだった。
---案の定---
『花粉症に効く』に続き、ピンと来たのが今回のコレ!
生理:食餌療法とがんNature vol.458 (7239), (Apr 2009)
げっ歯類では食餌制限に抗がん作用があることがずっと以前から知られているが、一部の腫瘍がこの治療法に反応するかどうかを決める分子機序については、意外にもほとんど知られていない。
N KalaanyとD Sabatiniは、ヒトのある種のがん細胞系をマウスで異種移植腫瘍として増殖させると、食餌制限による腫瘍増殖抑制効果に極めて高い感受性を示すが、ほかの系では抵抗性がみられることを報告している。
腫瘍の感受性の違いの原因は、ホスファチジルイノシトール-3-キナーゼ(PI3K)/Aktシグナル伝達経路の活性化状態であることが、今回明らかになった。
したがって、この経路の状態は、どの腫瘍が食餌制限を模倣した治療に反応するかを予測するのに使えるかもしれない。
Articles p.725News and Views p.713
『花粉症に効く』もそうだけど、『食餌療法とがん』もいかにも、そこに“簡単な答え”がありそうな気にさせてくれるフレーズだ。
そうなのだ。
大衆の気を引くためには、“簡単な答え”がありそうって事が大事なのだ。
がん治療に“食事療法”があるのか???
この Nature vol.458 に掲載された論文は、そんな事は一言も言ってないんだけど、オンラインサイトでの、要約に付けられたタイトルがそうなんだから仕方が無い。
私の責任ではない。
・・・・・・って、まてよ!
天下の Nature でも、ネットの世界では、閲覧数を気にするものなのか??
だって、タイトルが『食餌療法とがん』だぜっ。
内容は『PI3Kが活性化した腫瘍は食餌制限に抵抗性を示す』って事だ。ヒトで応用可能だとして、がん細胞をそのヒトから取り出し、PI3K の活性化の状態を調べる。活性化状態が高ければ、食事制限は、意味が無い・・・・ってことだろう。
でも、『食餌療法とがん』で検索して訪れる人は、こんな事を知りたいのではなく、『何を食べたら、或いは、何を制限すれば、私の○○がんは治るの?』って事なんじゃないかな。
がんに罹患している人に対して『“簡単な答え”を求めてるだけ・・・・』なんて事は言えないけれど、そんな安直な方法なんてこの世に存在しないって事を、知らせてあげられなかった医療従事者の責任は・・・・・・重い・・・・・・。
話は変わるが、4月10日付けの《薬事日報》の一面には、岐阜大学病院の専門薬剤師に資格手当てが支給されることになったとあった。
その理由は、がん化学療法に積極的に関わった結果、医師や看護師の業務量が軽減され、患者数が増加し、結果として医業収入が増加した・・・・・からだそうだ。
人件費の原資は、当然、収入増に寄らなければならないけれど、なんだか、悲しいのは私だけだろうか??
がん専門薬剤師って名前がありながら、がんの薬物治療成績向上に、直接、関わった事が評価されたわけじゃない・・・・・。
【全国で初めて導入】
【医業収益増エビデンス認められ】
一体、専門薬剤師の“専門”って・・・・・・。
閑話休題。がんの薬物治療成績向上に直接関わりたくて、がん専門薬剤師って資格?を取ったんだろう。だから、たとえば、その薬剤師が転職することになったとして、『専門薬剤師募集』の広告文字に吸い寄せられて行ってはみたものの、その実態は医師や看護師の業務量が軽減が目的だった、、、、ってのは、どうなんだろう?
『食餌療法とがん』ってタイトルに、「そこに行けば、なにか、簡単な答えがあるんじゃないのか?」と思う人がた。
実際、訪れてみたものの、欲しい情報はそこには無かった。
日本病院薬剤師会の会長が『大きな一歩』とコメントしているそうだが、心の奥にある心境は、、、、、?
いやいや、お金が大事なのは、十分、承知しているんだけど・・・・・それに、、、そんなことより、もっと前に、、、
がん治療に「夢のような治療法は存在しない」、「食事療法が“効く”のは特定の体質の人」、「同じがんでも原因は十人十色」、「治る人は何もしなくても治り、治らない人は何をしても治らない」って事をがん患者さんにわかってもらう役割は、今の制度の下では誰がするんだろう?主治医は当然だとして・・・・・?
誰だって、こんなことはやりたくない。ならば、他の“がん専門”って肩書きを付けた医療職の人間がやれば、少しは話を聞いてくれるんじゃないのか?
きれいな場所から、クヂの一つも届かない立ち位置で、「患者の為」とか「医療の向上」を訴えても、心に響かないんだよねぇ。
企業で言えば、解雇通告をする人事担当者みたいな役回りを、率先してやってこそ、医療職の仲間だって認められるんじゃないのかなぁ、薬剤師は!?
ねぇ!専門薬剤師さん達っ!?