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2011年04月 アーカイブ

2011年04月02日

見えるということ

前回は、光受容体のことを書いた。その続きで、、、、光を吸収するのはレチナールなんだけど、吸収する波長を選択するっていうか、特定の波長に反応するのに重要なのは“オプシン”と呼ばれるタンパクだ。

オプシンはその構造がわずかに変わるだけで、吸収できる光の波長がドラスティックに変化する。

だから、吸収できる違いで微妙に異なるオプシンを組み合わせれば、色覚が実現できるようになるってワケだ。ヒトの場合は、青(433ナノメートル:nm)、緑(535nm)、赤(654nm)のスペクトル領域の光を最もよく吸収する3種のオプシンを持っていて、文字通り、世界を見ているってこと。


進化の歴史を辿れば、もともと1個だったオプシンがその過程で複数の波長に対応できるようになったと考えられているワケだが、、、、面白いことに、哺乳類では霊長類を除いて、2種類のオプシンしか利用していない(霊長類でも細かく分けるといろいろ例外があるらしいが)。

ヒトから言わせりゃ、彼らは“色盲(この言葉は放送禁止用語かな?)”なんだけど、霊長類以外の哺乳類は、これで世界を見ているワケ。霊長類は、一度失った緑色(だったかな?)をもう一度獲得して、3色そろえたって言われてる。

で、ヒトで赤と緑の色覚異常の人は、この遺伝子を一つ、失っているってこと。

たから、“色覚異常”なんて呼ばれかたしているけど、なんのことはない、殆んどの哺乳類の“世界観”と同じなのだ。(ヒトの基準だと“異常”なんだろうけど、哺乳類の常識じゃ、、、、?)

さらに、昆虫をはじめ、爬虫類、鳥類、両生類、、、サメは、4色型色覚で世界を見ている。彼らからすれば、ヒトは全員“色覚異常”ということになってしまう。

で、その4色目は、なんと、、、紫外部を吸収するんだってさっ!!


世の中には、白い色した“花”が、一番、多く存在しているんだけど、、、、それは、ヒトが“見て”白って言ってるだけで、、、ヒトには白にしか見えない花でも、昆虫には別の“色=模様”した花に見えているんだってさ。それは、ヒトには見えない紫外線が見えるから。

白い花は、ヒトに見られる為に咲いているわけじゃないし、植物にしてみれば“白い花”と一括りにされることに、“異議”があるかもしれないね。

ところで、ヒトは色に色々(ダジャレじゃないよ)な意味をつけている。“赤い色”に情熱なんかもその一つだけど、、、、、実は、ヒトの持っているオプシンの赤(654nm)は、654nm が示すとおり、黄緑色に近い。じゃ、どうやって、“赤”を見てるの?ってことになるんだけど、、、、結論から言うと、ヒトが見ている“赤”は、実態ではなく、脳で作り上げた、脳の創造物(創造色)ってことになる。ヒトは、2種類の受容体からの情報、すなわち、緑からはシグナルは無いって情報と、黄緑色の受容体からは弱いシグナルが入っているという情報を元に、作り上げたってことなんだってさ。


色だけじゃなく、ヒトの視覚の“イイカゲン”さは、モノの形も、脳で作り上げてしまうことにある。

左のネコは、以前にも使ったけど、ヒトの脳は“無い”ものを“有る”が如く処理してしまう。

実際にやってみて欲しいんだけど、、、

まず、クリックして、ネコちゃんの絵を大きくする。
右目を覆って(みだり目だけで見る)ネコを見続け、だんだん顔を近づけると、、、
アラ不思議、ネコの左にあるグレーの棒がつながっちゃった。。。(脳が、盲点を補完している)。


ヒトは、自分に“見える”ことが、地球上の森羅万象の“真実”だなんて思い込んでいるんだけど、ヒトが“感知”できる自然現象や社会現象なんて、高が知れているのかもしれない。もちろん、科学の目を使えば、紫外線が見えたり、地球の裏側の事象を見たり感じたりは出来るんだけど、脳の情報受容体としての“目”から、随時、入ってくる電気信号や、その他の感覚器官からの信号によって、ヒトの感情から行動までが決定されるわけだから、いくら科学の目を持ってしても、常に自分自身で見られる状況になきゃ、、、、、、。


話は変わるけど“音”、コレ、同じ音なのに、印象が変わるって、、、裏を返せば、ヒトの感覚の絶対性の無さ・・・・コレを説明するのに、うってつけの現象があるんだけど、、、、

鍵盤楽器が自宅にある人は、実際にやってみてほしい。

まず、“ド”の音から弾きはじめて8度(オクターブ)の音まで弾いてみよう。まぁ、なんでもないというか、悲しくは聴こえないはず。(オトクは8を表わす接頭語だよ!オクトパスとか。でも、オクトーバーは、間にシーザーとアウグストゥスが割り込んじゃったから、8なのに10月。。。ちなみに、同じ音階の音はユニゾン。これも、接頭語の1。完全1度のこと)

次に、ドの6度目の音“ラ”の音から始めて、オクターブ目まで轢いてみよう。今度はどう?全く同じ要素(白い鍵盤)だけを弾いているのに、もの悲しい感じがしませんか?

専門的には、Aナチュラルマイナースケール(イ短調)って言うんだけど、不思議でしょ?(詳しく知りたい人は、音楽理論を勉強してねっ!ルート音と長3度、完全5度・・・・なんて、、、結構、面白いんだよ、コレ)

“音ひとつひとつ”すなわち単音自体に、楽しい感じ、悲しい感じがあるわけじゃない。

全体からの切り取り方っていうか、基本の音や前後の音との“度数”の関係、最後の音と一つ前の音の関係などによって、ヒトは違った印象を受ける。音楽理論が大脳生理学的にどのようにして“悲しい感じ”を惹起するのかは知らないけれど、そういうものなのだ。

これって、20個の事象(真実だとする)があったとして、そのうちの10個の事象をを切り取るとして、その切り取り方、見せ方で、印象が変わることを利用しているのが、マスコミや新聞報道や小説家(フィクション、ノンフィクション問わず。歴史ものなどは際たるものかも知れない)。彼らは音楽理論や生理学をしらないけど、ヒトの情動の変化の仕方を知らないうちに身に付けている。

さすがは、文学って感じ。

ただ、文学なら、当然のことも、マスコミや新聞報道では許されない。

そして、、、、

もっとも許せないのが、社会科(歴史)の教科書。

震災騒動の陰に隠れて、コッソリと、またまた、自虐的な内容がてんこ盛りらしい。そう、事実の選択が、自虐的なんだよ。それを書くなら、あっちもこっちも書いておかなきゃならないんじゃないの?  って(“生き証人の言”とかを根拠にしてたりするけど、その人が、その時代の全てを見てたわけじゃないから、本当の意味での“証人”にはなりえないし)。

自虐的な政府の態度で、自虐史観って、もう、懲りたんじゃなかったのかなぁ?

どこかに、悪の巣窟(自虐的歴史観の総本山)があるの?

どんなに自虐的になっても、韓国は竹島占拠はやめてくれないんだよ!もう、イイカゲン、わかったら?自虐的な態度に日本の“利”は無いんだって!

、、、、、と、ちょっぴり、小さな“事件”に反応してしまいました。

2011年04月06日

フクロマウスって知ってる?--- ある意味、書評だったりする

オーストラリアにいるフクロマウスは、12時間にわたる激しい交尾の後、オスは衰弱し、疲れ果ててついには死んでしまうという。

それは、去勢すれば防げるのだが・・・・・。

悲劇か喜劇かはともかく、“劇的”な死に方なのは間違いない。

しかし、フクロマウスにとっては、劇的に死ぬか交尾せず長生きするかで迷うものはいない。全ての個体は、交尾を選択する。


人間だったら、どうだろう?

ぼんやりと、そんなことを考えた。

他の国の人のことはわからないけど、日本人なら、交尾をした後、死なない方法を考えるんじゃないかな。その為に、残りの人生の全てを、二度と交尾せず、病院通いに費やしたとしても。。。


ある本を読んでいて、ふと、ある記述が目にとまった。それは、、、

「子供の頃は、時間の経過が早く、大人になると、どうして遅くなるのだろう?」というものだった。

え?  子供の頃が遅くって、大人は早いの間違いじゃないの?

最初は、そう思った。でも読み進めていくと、間違いではない。

著者は、イギリス人だ。イギリスでは、子供の頃は、日々、退屈で、大人になると、毎日が楽しい・・・・、そういう理由らしい。

楽しい時間、充実した時間を長く感じることは、日本にいて、日本人の私でもわかる。私にとっては、年に数えるほどの土曜日と日曜日の連休に一泊旅行に出かける、、、そんなとき、それを実感する。

家族全員を、朝、4時にたたき起こし、車に詰め込む。500km圏内なら、午前中には目的地に到着している。午後、観光地をめぐり、夕刻から温泉に入り、夕食では軽くアルコールを嗜み、リラックスタイム。その後、もう一度、温泉に漬かり、、、、、。

翌日も朝早くから行動を開始し、目いっぱい遊んで帰路につき、クタクタになって帰宅すると、、、、あぁ~、疲れたぁ~、長い二日間だったなぁ~~~と。


日本人の大人たちは、人生の殆んどの時間を、楽しむこともなく、感動することも、記憶に残るようなこともなく、端々と、日々、変わりなく過しているって事なのだろうか。


イギリス人は、違うのか?日々、長く感じるほど、楽しい時間を送っているというのか??イタリア人なら、わかるけど、イギリス人もそうなのか???


まぁ、イギリス人のことは、どうでも良いけど、日本人、悲しすぎないか?

まるで、去勢された“フロクネズミ”だ。世界一、長生きはするんだけど。。。


昨日、ビデオにとっておいた「ビート」なるドラマ(WOWOW)を見た。

銀行の粉飾決算疑惑をモチーフにした社会派のドラマと思ったら、違った。人間のドラマだった。

このドラマの中で、主人公の一人、緒方直人演じる警視庁捜査一課の刑事の言葉、「人の親である前に、一人の刑事ですから」というのが気になった。奥田英二演じる捜査二課の刑事との絡みのなかで発せられる言葉なのだが、、、、、

これって、日本人の大人の感じる時間が、子供の頃より早くなる原因なんじゃないかと。。。。黙々と仕事ばかりをこなしてるんじゃ、時間の経過は早い。。。よなぁ。

なんで、こんな“滅私奉公”が価値のあることになっちゃったんだろう? 日本?

全ての国の事情を知っているわけじゃないけど、日本のドラマや映画以外で、自分の生活より仕事を優先させるシーンを見たことがない。。。

映画アルマゲドンの中では、ブルース・ウィリス演じる主人公が、人類の為に犠牲になるシーンがある。。。が、これは、仕事とは関係ないだろう。大きな意味での互恵的な利他行動のひとつだ。

日本でも、今、いくつものドラマが生まれている。

原発事故現場に向かう人達のドラマだ。

一つだけいえるのは、自らの命を犠牲にした人、犠牲にする覚悟を決めて行動した人達は、その瞬間、充実した長い(長く感じる)時間を過すことだろう。

“劇的”は、長く感じる。。。多分。。。アインシュタインの相対性理論を持ち出すまでもなく。周りの人の時間の感覚とは、あきらかに、違うんだと思う。


さて、お気づきの方もいらっしゃると思うが、、、最近の“ネタ”は、ニック・レーン著《生命の跳躍――進化の10大発明》から頂いている。

この本は、サイドバーに貼り付けてる【私的・面白かった度】で ★ 5つ 付けてるけど、10段階の評価が出来るなら、★★★★★★★★★★ だ。ノータイムで。

それほど、内容は素晴らしい。

生命に対する洞察力は半端じゃない。


ということで、ネタをお借りして、もう少し続けたい。


あなたは、『“死”は生物にとって利益がある』と聞いたら、なんて思うだろうか?


進化生物学の世界で、コンセンサスが得られつつある説によると、、、、“死”のおかげで生物は進化したということだ。

“死”がなければ、生物はヌルヌルした単細胞の集まり以上の存在にはありえなかったと。

“死”が細胞の“分化”を促進したんだと。

というわけ(詳しく知りたければ、読むことを薦める)で、細胞の分化なくして、ヒトは存在し得ないのだが、究極の分化が、生殖細胞であると(というか、体細胞は生殖細胞の為に“生き”そして“死ぬ”のである。ドーキンスの利己的な遺伝子の言い方を変えたようなものだと思えばよい)。生殖細胞とその他の細胞とを括ることによって、生命現象や老化、病気の真の姿が見えてくる。

そうすると、、、現代の“がん”や“糖尿病”、“アルツハイマー病”などに対するアプローチは、、、、、、ってこと。いや、今までの研究の積み重ねがあったから、そういうこともわかったわけで、現在の方法をすべて否定するわけじゃないんだけど、、、、、、。

そう、現代医療は、いつも私が書いてるように、不可避な結果に対する“慰め”的な位置づけでもあるんだから。。。。医療の出発点が、治療を目的とした“シャーマニズム”から出発しているから、しょうがない、、、っていうより、当然って言い換えてもいい。つまり、生物学(進化学)からの“視点”が、医学(というより医療学)に欠落しているからなのだろう。

医療では“死”は単なる“敗北”なのだが、、、科学が“死”を扱うと“死”の印象が変わってくる。まるで、宗教のようであり、哲学のようだ。この場合の“宗派”や“学派”は異なるんだけど。


面白いね。。。。

科学もこういう意味では“ニューマニズム”なんだよね。(ヒューマニズムを“善い行い”とか“心温まる行為”を尊重することなんて解釈している人には違和感あるかもしれないけど)

やっぱ、科学には人間主義思想が流れてるんだよね。


ということで、ストップウォッチで測った“寿命の時間の長さ”に一喜一憂する、現代の日本人って?

フクロマウスは、時計も暦も持っていなくて、幸せなのかもしれないなっ。暦を数え、時間を計って、他人と比べたりしないから。


p.s.《生命の跳躍――進化の10大発明》を読む時間のない人に、ひとつ、耳寄りな情報。
カロリー制限が健康で長寿の秘訣、、、なのは、正しいのだが、これは、生殖年齢に達する前から、コツコツと続けていくことに対する“ご褒美”だ。すでに、生活習慣病に罹患していて、尚且つ、高齢の人には、全く意味は無い。あっ、健康は取り戻せるかもしれないけど、長寿は叶わないってこと。

現代の科学(進化生物学)は、人生「太く短く」あるいは「細く長く」ってのが真理であることは証明できたけど、「太く長く」する方法は、発見できてないみたいだよ! どうも、無いみたいだけど・・・。

2011年04月13日

放射線障害のメカニズムは老化と同じ

こういう状況下でさえ、目新しい情報で大衆の度肝を抜きたい“マスコミ根性”には、さすがに“文句を言えども追いつかない”レベルになっているのだが、、、、いや、マスコミはこういう時だからこそ、大衆が右往左往する事態を作り出し、我こそが・・・・ってやりたい“人種”なのかもしれない。

もっとも、そんな下衆なマスコミにコロコロと騙される方も、ワルイっちゃ~ワルイんだけどね・・・・。

ころころと騙される理由は、リスクアセスメントがまるっきり出来ていない事によるんだと思う。生きて行くことに対する“リスク”は、往々にして“雰囲気”に流されやすい民族なのも、その一員なのだろう。

テキーラをがぶ飲みしつつ煙草をプカプカさせながら「放射能、コワイよぉ」とか、「風俗なんて、みんなで行けば怖くない」みたいな・・・・。交通事故による死に対しては、ほとんど“思考停止”してるし、“薬”が基本的には“毒”であることを知ってるんだかどうだか。。。。

マスコミが本気で、放射線障害に対するパニックを抑えたいなら、「放射線障害のメカニズムメカニズムは老化と同じ」って言えば済むんじゃない??日常的な出来事にしちゃえば、パニックになんてならないよ!この点、日本人は簡単なのに。。。


さて、まともな人が、冷静に放射線障害を調べていくと、誰でも一つの論文にたどり着く。1954年にサイエンス誌に掲載された「酸素とX線--共通の毒性機構」だ。タイトルを見ただけで、内容がわかる大変優れた論文だ。

著者の二人、レベッカ・ガーシュマンとダニエル・ギルバートは、アメリカ合衆国のマンハッタン計画の一環で、放射線の生物に対する影響を研究する中核大学であったニューヨーク州のロチェスター大学にて研究に従事していた。そこで二人は、酸素中毒においても放射線障害においても、致死的な損傷を引き起こす原因物質は酸素フリー・ラジカルであるという理論を打ち立てた。

そして、1950年代以降、放射線障害と酸素中毒のメカニズムは殆んど同じであることが確定されている。


タイトルの放射線障害と老化を結びつけたのは、どこかの本物の研究者が言っているわけではなく、私、マリンパ(放射線科学のシロウト)の推測なのだが、しかし、推測とは言っても、本物達が断言してないのは、単に、タブーと倫理的な障害によるものなのだが。。。(と思う)。

少量の放射線を浴びること、すなわち、短期的には“致死的では無い放射線暴露”は、毎日毎日、呼吸して生きているのと同じことなのだ。


フリー・ラジカル、、、活性酸素種、、、スーパーオキシド・ラジカル、、、呼び名はいろいろあれど、サプリメント業界が自社の製品を売りつけるための方便に登場するこれらの物質は、老化の原因としては“本物”であることは間違いない。

ただ、サプリメントが“効かない”だけなのだ。(アンチエイジングにはならない)

効かないのは、これらの物質(フリー・ラジカルなど)は、生体にとっての“危険のシグナル”として利用されているからなのだが、、、、それらの“情報”がある時は、生体は、対処するために“様々な遺伝子発現のスイッチを入れる”事になる。これらのサプリメント(抗酸化物質)は情報を遮断してしまう結果、遺伝子発現スイッチが入ることも止めてしまう。すなわちプラスとマイナスの効果で“相殺される”って、単純に思えばいい。。。。注1


余談だけど、私が思うに、生体のリスクマネジメント(自然治癒力)ってのは、どれもこれも、一旦、過剰に発動し、徐々に減らしている方法を取っている事から、、“危険のシグナル”を遮断しちゃうことが、返って“マイナスの効果”を惹起しちゃう原因になっているのではないか、、、と思っている。(飲みすぎで、死んじゃったりとかね!βカロチンの発ガン抑制作用なんて、結果はバラバラでしょ!)

過剰の反応をわかりやすく喩えれば、電車がホームに入るときに、かならず、一旦、オーバー・ランし、バックして停止位置につける・・・みたいなもの。大きな傷を負ったとき、その治癒の過程で、皮膚は、一旦、盛り上がり、やがて収まっていく事(余分な細胞がアポトーシスを起こしていく)を経験した人も多いはずだ。あれと同じ。生体は、必ずやっている。オーバーにね。過剰、余分、冗長、、、などが、生体のロバスト性を担保しているのだ。この制御がみだれたのが“ケロイド”なのだが、生じるヒトは、そういう体質を持っているってことなのだろう。

例えば、抗がん剤などは、イマチニブみたいな一部のものを除いて、みな、このような弊害を持っているともいえる。自然治癒力(免疫力)を落とすわけだからね。プラスとマイナスの相殺状態で、延命は可能だけど、、、悪く言えば、治癒することは無い・・・・・みたいな。飲まなきゃ、自然治癒もありえる。。。。ワケで。。


閑話休題。

放射線障害と老化を結び付けるには、放射線がフリー・ラジカルを生成することを説明せにゃいけない。

ということで、、、、。

放射線の発見者である、アンリ・ベクレルは、キュリー夫妻と友達で、父親から蛍光を発する鉱物のコレクションを譲り受けていた。この蛍光だと思っていたものが、実は、放射線だったわけだが、、、、蛍光は簡単に言うと光を吸収し、徐々に放出する性質のことなので、天気が悪いと、蛍光は弱くなる。天気が悪いときに、乾板に像が焼き付けられていたことから、発見に至り、マリー・キュリーがこの性質を“放射能”と名づけた。。。(最近、テレビや新聞を賑わしている単位、ベクレルはこの人に因む。でも“壊変毎秒”の方がわかりやすいと思う)

と、歴史の勉強はさておき、、、

放射線がフリー・ラジカルを生成するのを理解するには、酸素と水を結びつける一連の反応が大切だ。放射線の致死効果も酸素の致死効果もこの反応の過程での中間産物になるものであり、これは、双方向から作られる。

H2O ⇔ ・OH ⇔ H2O2 ⇔ O2・- ⇔ O2 (大雑把です)

右方向では電子(e-)が失われ、左方向では電子(e-)が付加される。

放射線が水を分解することを発見したのはベクレルだ。

マリー・キュリーがピッチブレンド(瀝青ウラン鉱)から分離したラジウムを使って、実験を開始したのだ。1890年代後半、ベクレルは既知の放射線を“貫通力”で分類した。1枚の紙で止められるものはα線(ヘリウムの原子核)、1mm の厚さの金属で止められるものをβ線(高速の電子)、1cm の金属を貫通するものをγ線(X線類似の電磁波)と。

全てのタイプの放射線が、原子から電子をたたき出して、これに電荷を付加する。このため、キュリー夫妻はピッチブレンドの周囲の空気に電場を検出できたのであり、現在、放射線の検出に利用されている。

電子の喪失、あるいは獲得は物質に電荷をもたらす。この現象はイオン化、または、“電離”と呼ばれ、そこから“電離放射線”という言葉が生まれた。

この原子から電子をたたき出す力が、化学結合を切断したり、核分裂を起こさせたり、、と、するわけだ。

中学、高校で習う化学反応なら、、、

2H2O → 2H2 + O2

だが、放射線を当てると、、、、

H2O → H+ + e- + ・OH

となる。

この“・OH ”が、非常に過激なヤツなのだ。。。。


先ほど、スカベンジャーを捕捉する物質(抗酸化物質 などなど)を投与しても、意味がない事を書いたが、もうひとつ、意味の無い理由が、この過激な“・OH ”は、反応が、超すばやいってことが挙げられる。

すなわち、ほどほどのサプリメントが有ったからといって、捕捉しきれるものではないってことなのだ。体を埋め尽くすほどの量を摂取すれば、捕捉できるけど、そんなことしたらそれが原因で死ぬよな。 で、さらに、反応は、、、、 H2O2 、O2・- ってのも生成するから、、、、、、、

同じ中間産物は、我々、ヒトが呼吸する酸素からも作られるってのは、冒頭の「酸素とX線--共通の毒性機構」で示されたこと。


大量の放射線を浴びれば、直ぐに死んでしまい、それ以下なら、骨髄やら腸管やら、細胞の入れ替わりが激しいところがやられた後に障害が生じることが、理解できたと思う(毛根がやられて髪の毛もぬける。放射線障害は抗がん剤の副作用とほぼおなじ)。で、、、微量なら、、、老化と同じってことなのだ。

結局、健康診断で浴びるX線でも、全く同様のことが起こっているのだが、、、こちらは、何故か、心配する人は少なくって、飛行機で海外旅行に行っても、同様のことが起こっているのだが、これも、心配する人は、ほぼ、いなくって、、、、、。

原発事故の結果の放射性物質漏れは、非日常だから、過剰に反応する。マスコミがそれを面白がって、煽る。。。。って構図が見えてくる。


じゃ、どうすれば、少しでも放射線の影響から逃れられるのか?

がんになりやすい人もいるし、ならない人もいるって体質を考慮しないのなら、水の反応する確率を減らすために、脂肪を纏えば良い。デブになるってこと。

こういう意味まで考慮すると、厚労省の「ちょっとデブが長生き」なんてのが、生きてくるから、悔しいけど、、、そういうことだ。ただし、確率だから、実際、あなたがどうなるのかは、予測できないけど。

結局、何が良いんだかわかんないけど、急性の症状、亜急性の症状が出るような大量を浴びなければ、善しとするしかなくって、過剰におびえても意味がなく、怯えさせようとしているマスコミから身を守るためには、「直ちに健康被害が出る量でなければ(コレ、枝野官房長官が連発して、マスコミの餌食になっているけど)、放射線の障害は老化と同じなんだ。ちょっと人より多く浴びれば、人より早く老ける」って程度に思っていれば、パニックにはならずに済むんじゃないのでは?

まぁ、早老を歓迎する人なんざぁ、いるわけ、ないんだけど。。。

※私は、高齢者の“がん”は、病気ではなく“老化”だと思ってます。だから、しょうがないって。。。100人中48人が“がん”と診断(これも曲者)される時代に、100人中53人ががんになったとして、、、、。それを防ぐため、治療のために努力を続けている人には、申し訳ないし、頭の下がる思いではありますが・・・・・。


注1)ここで、フリー・ラジカルや過酸化物の毒性から身を守ってくれるために発現される遺伝子は、放射線から身を守ってくれるだけでなく、実は、他のタイプの物理的・化学的・生物学的ストレスなどなど、たとえば、熱、感染、重金属あるいは毒素のようなものから身を守る遺伝子の多くと同じ種類のものでもある。

ヒトでは、放射線によって活性化された遺伝子が、酸素中毒やマラリア、あるいは鉛中毒から身を守ってくれる。交差性の保護効果がもたらされるのは、多数の異なる肉体的ストレスが、みな、共通の損傷を生じる細胞プロセスに集中して作用するからである。このため、すべてのストレスに対して、共通の保護機構が耐性をもたらすのだ。

このことは、何を示すのか?

具体的なことは責任持てないので書けないけど、抗酸化サプリメントなど、飲まないほうが、放射線に強くなるのかもしれない。ある研究によると、ヒトが呼吸することによって1年間にこうむる被害に相当する放射線量を計算したところ、1シーベルトの線量で全身照射されたのと等しいらしい。これは、典型的な胸部X線撮影の1万回分に相当するのだそうだ。。。。

2011年04月18日

フェラーリFF の4駆の秘密と放射能のアレコレ

あなたは、フェラーリFF の4駆システムを紹介するビデオをご覧になっただろうか?

見てなければ、まずは、ここでご覧あれ。

これ、このビデオで、「なるほどぉ!」と納得する御仁もおられることだろう。

というわけで、私、余計なお世話かと思いましたが、ビデオの文字スーパーの解説を英訳してみました、、、下 ↓。

普通の四輪駆動システムより50%軽いよ。

The PTU ってのがクランクシャフトからダイレクトにパワーを取り出すんだ。

これから、統合油圧コントロールシステムが30%働いている図を示すよ!

二つの多板クラッチ、そのクラッチがフロントホイールを独立して駆動するよ。

トルク分配機能なんだけど、、、4RMコントロールについて、、、それは全ての乗り物の動的制御において完璧に統合されてるものなのだ。

F1-Trac , E-Diff , PTU (動画で見るとわかりやすいでしょ?)

すべての路面状況を瞬時に判断してるよ。
トルクは各車輪にダイレクトに独立して伝えられるんだ。

最高の安定性をあらゆる状況において単純な制御で具現化してるんだよ。

滑りやすい坂道でのベストな発進性能は。。。(ほら、この通り)

・・・・・ってな感じでしょうか?

結局、ギャチェンジ無しで、多板クラッチが“トルコン”みたいに動作してるんでしょうか?なんだか、スッキリしません、私にとっては。

こんな釈然としないシステムなんですけど、きっと、走らせたら凄いんだと思います。フェラーリ。「四の五の言うな」って感じですかぁ?  っていうか、高速度域においての説明が、なぁ~んにもないから、もしかしたら、低速領域でしか、働かないのかも。このシステム。高速になったら、何かが外れちゃう・・とか?だって、フロントにトランスミッション無いんでしょ?


ということで、何か、秘密があるんでしょうげと、我々、庶民には、知る由もなし・・・。


知る由もなし・・・と言えば、原発で使う放射性物質のアレコレ、燃料の再処理方法とか運用も同じようなもの?

ミクロ的には見えてるけど、マクロ的に見えてない?(全体像が見えない・・・チラリズム?だから余計に気になる?

原発の燃料は、いわゆる核物質。放射能があるから、みんな、怖がっている?

石油は燃やせば、水と二酸化炭素になる、安心感がある。。。。(のか?)

でも、核燃料は燃やした後も、核物質。ウランを燃やした後に出来るプルトニウムが混じった残渣(燃料棒)から、プルトニウムを取り出して、もう一回、使えるようにする処理は、日本は、殆んどフランスにやってもらっているそうだ。しかも、核燃料を積む船は、丸腰で公海上を漂っているらしい・・・・・。テロでも、かなりの数の人間は死ぬワナ・・・。いいのか、これで?

そういや、原発の無いイタリアは電力不足で“電気”をフランスから買ってるんだけど、ドイツはどうなってんのかな?って気になってたら、、、ドイツは、日本の原発事故にびびったらしく、原発を停止して、電気をフランスとチェコから買うようになってるんだと。

日本でも、原発を反対している人達がいるからなぁ、、、、、

日独伊・・・・は似てるの????なんちゃって。冗談はさておき、日本に電気を売ってくれる国はあるのかな?

まさか、原発を反対している人達は、石油を燃やせばいいじゃん!とか、思ってんじゃないだろうねぇ?

電離放射線は、なにも、放射性物質の専売特許じゃないんだよ。太陽光だって、りっぱな電離放射線だ。γ線やX線は、波長が 10 pm よりも短い電磁波だから、可視光や紫外線よりは、かなり波長は短い(破壊力がある)けど。チビチビでも毎日なら、結構、クルんじゃないのかなぁ?酸素呼吸のツケとくらべると、どんなものなの?

光と違って、α線やβ線は、質量がある粒子線だから、体内に取り込まれた“放射性物質”による内部被爆だけ、心配してりゃいいのは、わかってる。ものによっちゃ、γ線も出すけど。ラドン温泉なんかに入って、健康被害無いのは、α線がラドンから発せられて 1 mm未満しか進めないからだもんね。β線だって、トリチウムの場合は1 mm未満、燐32では約1 cm だし。。。。

内部被爆って言やー、今、話題の セシウム137は、小線源治療に使うんだよなぁ・・。

どのくらいの違いが有るんだろう? がん治療で内部被爆させるのと、政府が発表する警戒レベルでの放射性物質を体内に取り込んじゃった場合とで。がんの治療量と被爆量がどのように対応するんだろう・・・・?動物でのデータはありそうだけど、ヒトでのデータは?あるところには、あるのかな?

安全なはずの石油燃料をガンガン燃やして、オゾン層を破壊すれば、地球人は、地下に住まなきゃならなくなる。いいのかなぁ?我々の子供たちにツケをまわして・・・。

・・・って、細かいこと考えて「侃々諤々」「喧々囂々」すると、「コレコレだから、心配いらない」って結論を導く人と、「コレコレだから、心配しなくちゃいけない」って結論を出す人がいる。だから、何を信じて、何をどうすれば・・・・ってなっちゃうんだよねぇ。。

内部被爆でも将来的な“発ガン”を心配してるのなら、いわゆる外部からの放射線障害と切り離して考える必要は無いって、私は、考えてるから、「無駄な心配じゃね?」みたいな前回のエントリーを書いたんだけど、ほんとのところは、どうなんだろう?

電磁放射線自体の健康被害と、体内に蓄積した放射性物質の健康被害を、、日常で目にする現象に置き換えられない現状では、、、結局、なるようにしか、ならない。。。。人間の浅知恵で、どうこうできる問題じゃない・・・・ような気がするんだけど。。。

でも、なにか、やりたい・・・・。

結局、フェラーリFF の4駆のビデオ見て(疫学的に現象だけを捉えるのと同じ?)納得出来る(しちゃう)人と、納得できない人がいるのと、同じかな?

私も、知っても“意味無い(いろんな意味で。まず、買えないし)”んだけど、フェラーリFF の4駆の秘密・・・・知りたいんだよねぇ・・・・。

2011年04月22日

【デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する PRO051 全身投与】で思い出すこと。

ついに、スプライシング・スキッピングを機序にした医薬品が登場する。。。いや、フェーズⅠだから、まだ、ものになるかどうか、わからないけど、、、、感慨深い。

私が、初めて、この理屈(スプライシング・スキッピングっていう生理現象)を知ったのは、1999年のことだ。当時、定期購読していた雑誌「遺伝子医学」(2003年に廃刊)に掲載された症例の報告でだった。

《ジストロフィン遺伝子のナンセンス変異にもかかわらず、エクソンのスキッピングにより Becker 型ジストロフィーとなった症例》松尾雅文(神戸大学医学部付属医学研究国際交流センター教授:当時)氏の書いたものを読んで、、、、


「衝撃的・・・・でしたね」


って。

なんか、陳腐なリポートもの番組のコメントみたいになっちゃうけど、こういう仕組みがあるんだぁ・・・って、青天の霹靂とは、この事・・・・みたいなっ!感動を味わった。

今、「遺伝子医学」Vol.3 No.2 を書棚から引っ張り出して、読み返している。

この雑誌は、三浦義彰先生(元千葉大医学部教授)と親しく?させていただくキッカケとして、一役、買ってくれたものでもあるのだ(写真の本も先生が直々にくださった)。

初めて、三浦義彰先生にお目にかかったのは、先生が、患者さんとして処方箋をお持ちくださったときのことだ。そんな超“偉い”方だとは、露知らず、、いつも通り、調子よくポンポンと薬の説明を終えたところ、先生はおもむろに「ところで、○○○は、○○には効きますか?」と質問をされたのだった。「いや、私も医者のはしくれでして・・・」と。その時は、、、、

---おじいちゃん先生だから、知らないのかな?---

なんて、不遜なことを感じてしまって、、、、


その後、お越しいただくたびに、いろいろと声をかけてくださって、、、、

「見てもらっている医者は、私のお弟子さんでしてね」なんて話も。。。

---うん?お弟子さん?唄とか三味線とか茶道のお師匠さん?---


ある時、ふと、何の気なしに“医学のあゆみ”の最後のページを眺めていたら、、、、見覚えのある名前を見つけ、、、、その次にいらっしゃったとき、恐る恐る聞いてみると、、、、、。

そんなことがあってから、「遺伝子医学」に、先生の甥にあたる方(大学の理学部の教授)の寄稿を見つけ、そのページをお見せしたら、ご存知なかったらしくて「ありがとう」って。。。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する PRO051 全身投与

Systemic Administration of PRO051 in Duchenne's Muscular Dystrophy

N.M. Goemans and others


背 景

デュシェンヌ型筋ジストロフィーで、関連する遺伝子変異を有する患者へのアンチセンスオリゴヌクレオチド PRO051 の局所筋肉内投与により、ジストロフィン遺伝子の pre-mRNA スプライシング時にエクソン 51 のスキッピングが誘導されること、また筋線維膜でジストロフィンの新たな発現が促進されることが報告されている。今回の第 1~2a 相試験の目的は、PRO051 全身投与の安全性、薬物動態、分子的・臨床的効果を評価することである。


方 法

12 例を対象に、PRO051 の投与可能な 4 用量(0.5 mg、2.0 mg、4.0 mg、6.0 mg/kg 体重)で、それぞれ 3 例に腹部皮下注射で週 1 回、5 週間にわたり投与した。RNA スプライシングと蛋白量の変化を前脛骨筋で 2 回測定した。全例をその後 12 週間の非盲検延長相に登録し、6.0 mg/kg/週の PRO051 を投与した。安全性、薬物動態、血清クレアチニンキナーゼ値、筋力・筋機能を評価した。


結 果

もっとも頻度の高い有害事象は投与部位の刺激症状であり、延長相では、軽度であるが程度の異なる蛋白尿と、尿中 α1 ミクログロブリン濃度の上昇が認められた。重篤な有害事象は認められなかった。PRO051 の血中消失半減期は平均 29 日であった。2.0 mg/kg 以上の PRO051 により、検出可能で特異的なエクソン 51 のスキッピングが誘導された。治療後の生検で評価した新たなジストロフィンの発現は、12 例中 10 例の筋線維の約 60~100%で認められ、対照の健常筋では最大 15.6%まで用量依存的に増加した。12 週間の延長相後の 6 分間歩行試験で、ベースラインの 384±121 m から平均(±SD)35.2±28.7 m の改善が認められた。


結 論

デュシェンヌ型筋ジストロフィー患者への PRO051 全身投与により、用量依存的な分子的有効性が認められ、12 週間の延長治療後の 6 分間歩行試験でわずかな改善が得られた。(Prosensa Therapeutics 社から研究助成を受けた。Netherlands National Trial Register 番号:NTR1241)


(N Engl J Med 2011; 364 : 1513 - 22.)
Copyright(C)2011 Massachusetts Medical Society.

http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa1011367


インターネットが、生活というか仕事の中に溶け込んで、なくてはならなくなってきたことも関係があるのかどうか、、、この手の雑誌は、どんどん、発行のペースが落ちたり(MMJも月刊→季刊になったし)、廃刊になったりしている。

情報だけを得る目的なら、それでもいいんだけど、なんか、ちょっと、寂しい。中山書店から発売になったがん医学の総合季刊誌『CRC』も廃刊になっちゃった時も、やっぱり、がっかりしたっけなぁ。


話を戻して、その読み返している「遺伝子医学」だけど、本の上のほうが、茶色に変色し始めている。

この変色の原因は、もちろん、“光”と“酸素”なんだけど、、、何かに似てる?

そう、電離放射線の生体への影響ですね。

「放射能は染る」みたいな、日本語としても意味不明な風評被害を撲滅するために、日々、日常の風景の中にあるものに喩えを探している、、今日このごろ。。。。


さて、広義の遺伝子治療つながりで、もう一ついくけど、、、【がん細胞「老化」させ抑制 広島大、マイクロRNAで】を読んで、、、、、

いやー、日本語は難しいですね。

共同通信社の記事を見て、痛感しました。言葉って、自分の頭の中で考えたり感じたりしたことを、他の人に伝達するツールなんですよね。それは、理解しているつもりなのに、自分の頭の中では、言葉の定義を“瞬時”に切り替えちゃうもんだから、その表現が、適切でない。。。。っていうより、自分では、その不適切さを気付かないんですよ。

“老化”って言葉は、なんども、このブロクで使っているのですが、その意味を定義しないで、その都度、文脈や前後の言葉で、無意識に使ってるんですねぇ・・・。

“老化”って嫌な言葉でもあるワケだから、デリカシーを欠いてしまったかも・・・・って。

思いました。。。。普段は、こんな反省みたいなこと、しないんですが、、、、なんだか、地震の影響なのかもしれません。。。。。

というわけで、私、この記事読んで、、、仕事で“細胞”を扱っている人、または、生命現象を“細胞”レベルからのボトムアップで理解している人と、一般の人では、受ける印象が、ずいぶん違うんでは???

それに気付いたとき、ふと、自分の文章も・・・・・って、ドキってしたのでした。

がん細胞「老化」させ抑制 広島大、マイクロRNAで

2011年4月19日 提供:共同通信社

 細胞や血液などに含まれる「マイクロRNA」と呼ばれる物質の一種に、乳がんと子宮頸(けい)がん細胞を「老化」させ、がんの増殖や転移を抑える働きがあることを広島大の田原栄俊(たはら・ひでとし)教授(細胞分子生物学)らのチームが突き止め、18日付の米科学誌に発表した。

 田原教授は「マイクロRNAは生体内でつくられる物質で、既存の抗がん剤に比べ副作用のリスクが低い。次世代の抗がん剤としての活用が期待できる」と話している。

 マイクロRNAは、細胞の増殖や分化などさまざまな生物現象の調節に関係していると考えられている。田原教授は、通常の細胞が分裂しなくなり老化するにつれて、いくつかのマイクロRNAが増加することを発見。このうち老化せずにがん化した細胞で減少していた「miR22」に着目した。

 培養された乳がんと子宮頸(けい)がんのがん細胞にmiR22を加えると、老化が進み、増殖が抑えられることを確認。マウスを使った実験でも乳がんの転移を抑制することが分かった。

 細胞の老化は、がん化を防ぐための生体の防御機構とみられている。田原教授は「何らかの要因で、細胞内のマイクロRNAが減少して老化が妨げられ、がん化を促すと推定される。miR22を投与することで老化のプログラムが再開され、がん細胞の増殖が抑えられた」と分析している。

※米科学誌はジャーナル・オブ・セル・バイオロジー電子版


一人の人間としての“老化”と細胞レベルの“老化”は、はっきりいうと、逆の現象です。っていうか、人間は老化すると病気としての“がん”になりやすくなるんだけど、がんって、細胞レベルでは“幼若化”って定義されます。

反対に、がんじゃない細胞は“分化した細胞”。

未分化な細胞を分化させる、、、、、共同の記事では、この分化させるを“老化させる”って言ってます。(いわゆる分裂寿命を全うさせるって意味もあるんだと思うけど)

放射線障害のメカニズムは老化と同じ』で書いてる“老化”は一人の人間としての“老化”すなわち、“加齢”のことです。

10年も本棚に積まれていると“日焼け”するのと同じ、“加齢”です。


ということで、これからは、言葉を正しく使うために、“老化”は“禁句”にすることにします。やっぱ、“加齢”って言葉があるんだから、使わなくっちゃ。

老化っていうのは、曖昧すぎて、ダメだね。 放射線、放射性物質、放射能をごっちゃに使うのと同じだよ。

2011年04月23日

連鎖反応って聞いて、想像するのは?

連鎖反応って言葉を聞いたら、一般の人が思い出すのは“核分裂”だろう。

でも、実は、人(生物)の体の中でも、起きている。いや、核分裂や核融合のことじゃなくって、ヒドロキシラジカルの反応だ。

ヒドロキシラジカルの反応は、過酸化水素が“鉄(Fe)”と出合ったときの反応を思い浮かべればよい。そう、激烈だね。私くらいの年齢の方は、子供の頃、ころんで怪我したあとには、傷にオキシドールを塗りつけたんじゃないかな。オキシドールは血液中の“鉄”と出会うと、激烈に反応し、・OHを生じる。このヒドロキシラジカルが、またまた、激烈な連鎖反応を起こし、、、これで、殺菌するのだが・・・・(今じゃ、こんな治療法はご法度だけど)。面白いことに、オキシドールは鉄がないと反応しない。しかし、細菌は鉄無しじゃ生きていけない。鉄を不足させると細菌は死ぬ。鉄がなければ、オキシドールは反応しない。。。。脱線。

で、この手の連鎖反応を止めるのが、ご存知、ビタミンCであり、カロチノイド、フラボノイド、フェノール類、タンニンなどなど、、、サプリメントだ(野菜や果物を食べてれば十分って話もあるけど、わかり易くするために。。)。

でも、ちょっと、待ってよ!サプリメントを摂ってない人もいるんだけど、この人達は、すぐ、死んじゃうのか?っていうと、そんなこたぁない。

じゃ、何故??

それは、人(生物)の体では、それに代わる強力な抗酸化物質を作り出しているからだ。

尿酸、ビリルビン(胆汁色素でヘムの分解産物)、リポ酸などなどがそれだ。聞いたことあると思う。特に、サプリメント好きな健康オタクさんたちは、絶対知っているハズ。


---ああ、あの病気のモトだね!---


って。

面白いことに、普通の人は、尿酸やビリルビンなどは、健康診断でしか知る由がないため、必ず“悪玉”として登場するもんだから、そういうイメージでしか捉えてないんだね。だけど、ほんとは、なんのことはない、サプリメントと同じ“善玉”の側面もあるのだ(っていうか、生体の中にあるもので、善玉とか悪玉とかに分類するのはバカのすることなんだけどね)。

例えば、新生児黄疸、これ、溶血性黄疸や胆道閉鎖によるものを除けば、生理的適応って見方もできる。胎児は生まれた瞬間から、それまでとは打って変わって、酸素濃度の高い環境に放り出されるわけで、まだ、食事から摂取できるサプリメントの類が十分じゃないから、ビリルビンで守りを固めてるってこと。。

もちろん、こんな“解説”は、ネットの何処を探しても見つからないと思うけど、、、例えば、こんなことが、書いてあるのが、普通だ。

胎児のときは少ない酸素を有効に使うために赤血球が大量に必要だが、生後自力で呼吸を始めると酸素が十分に使えるので、胎児のときほど赤血球は必要でなくなる。なので余分な赤血球は破壊され、ビリルビンという黄色い物質が生じる。
生後すぐは、ビリルビンを処理する肝臓の働きが未熟なため、一時的にビルビリンの値が高くなる。これが生理的黄疸で、通常一週間をピークに消失する。

まぁ、生理現象をどの視点から言葉にするのかって違いなんだけど、医療の視点からは、このようになるのが普通なのだろう。私も職業としては、医療に携わっているんだけど、“視点”は、ほぼ、生物学なんだよね。だから、医療の矛盾や建前や自己欺瞞などが、見えちゃって、、、、、、おっと、脱線。

で、新生児黄疸に戻るけど、、、「えっ?だって、ビリルビン、、多くなれば脳に傷害がでるじゃん」、、、、って。

そう、その通りなのです!!

善人にも悪人の側面が、悪人にも善人の側面があるように、、、、っていうか、生きていくってこと、すなわち、生理現象にかかわる物質に、善いものと悪いものって区別は、ナンセンスなことの証明が、まさにこれ。

サプリメントだって、摂りすぎれば毒になるのは、ビリルビンが後遺症を残すのと同じことなのよ。

酸素だって、同じことだよ。

酸素が毒の証拠は、生体は、体内に、必要最小限の酸素しか取り入れないことからも、わかる。ヘモグロビンと結合できる分しか、体内に取り入れないのだ。そして、抹消では、必要最小しか放出しない。この点、二酸化炭素は、かなりルーズ。だって、血漿に溶けて運ばれて、ガス交換されるんだからね。(そうえば、昔、どっかのバカが、二酸化炭素は抹消で、酸素と交換でヘモグロビンに結合して運ばれて、肺で排泄されるなんて言ってたなぁ。指摘したら、名誉毀損で訴えるとか逆ギレされたから、忘れようもない・・・脱線)そして、酸素はミトコンドリア(呼吸の中心)では、大気中の酸素分圧の1%にも満たないらしい。それ以上だと死んでしまう。

そもそも、ヘモグロビンみたいなタンパク質が、細菌にも存在するのは、、、、過剰なフリー酸素を結合して取り除く為、、、そして、貯蔵する為(おかげでクジラは1時間も潜っていられる)って見方もできるわけで、、、、

激しい運動して、その後、「酸素を吸いました」なんてのが、イカに愚かなことか!(イカくうか、タコくうか、イカくうか、タコくうか、、、意味不明? by チャー)

ただ、直ぐに死ぬわけじゃないし、それによって、染色体(DNA)が損傷しても、すぐさま、修復できる人は、ケロってして長生きするし、修復機構が、ちょっと弱い人達は、がんになったり、、、、、。コレ、放射能の影響も全く同じ。体質による。強くなりたいなら、Deinococcus radiodurans (デイノコッカス・ラディオデュランス)に学ぶべし。こいつ、滅菌のための放射線照射にも耐えるんだから。地球上で一番強い。放射線に強いってことは、高温にも強いわけで、100度でも死なないんだよ。。。。。脱線。

だから、個人の価値観の領域でもあるから、運動して酸素を吸うことも、その後、タバコを吸いながら、アルコールを摂取するのも、個人の価値観。。。。。おっと、脱線。


ビタミンCは、ヒトは体内で作らない。もっぱら、食物として外部から摂取する。何故、こんな大事な生合成経路を、ホモ・サピエンスは進化の過程で捨てちゃったのか?

いろんな説があるけど、腑に落ちるのは、ビタミンCを合成するときの“リスク”が高い。それなら、それを、利用するだけの方が“賢い(利益がある)”ジャンってもの。(人間ってのはズルいねぇ。他の生き物に、こんな危険なもの作らせといて、ちゃっかりご利益だけに預かろうなんて)

もちろん、ビタミンCが体内で働くときは、逆のプロセスを辿る場合(酸化と還元は表裏一体!)もあるのだから、ヒドロキシラジカルを連鎖を止める時、利益ばかりであるはずじゃない。そう、危険ですらある場合もあるわけだから。

でも、ビタミンCは抗酸化剤としてだけ働くわけじゃないから、以上の理由でビタミンCを軽く見てもらっても、、、、困る(なんだよっ!どっちかはっきりしろよ・・・ってか!?)。コラーゲンを作るときに、必須のビタミンなんだからね。これは、ビタミンCが不足したときに見られる“壊血病”で一目瞭然でしょ。

これも、また、別の見方だね(というように、私には、大岡越前のように、ばっさりと善悪を切ることは、、、無理)。


もう、20年もまえの話で、何処で知ったのか、何を読んだのかって状況は失念しているんだけど、大相撲の力士の健康管理をしている医師の話で、、、

「尿酸値の低い力士は、戦績はよくない。高いほうが強いんだよ」ってのがあった。

この時は、「尿酸ってのは、多面性があるんだなぁ」だったんだけど、今は、全てに多面性を感じている。

そして、特定の物質を“上げたり”“下げたり”することが、単純に目的を果たせるのか?って事につながっている。まして、その検査値で測れる物質は、その個人にとっての最適値があるはずなのに、画一的に、正常人の95%の範囲内に収めようとして。。。脱線。


ようするに、生きていくのには、何が良いのか、私には、よくわかんない・・・・って事で。よく、聞かれるんですよ、「体にいいもの、何かない?」って。

「何も考えないこと、進化は賢いを信じること」が一番良いのかな? 合理的な死の理由、皆が納得する死の理由を与える・・・・そんな側面も、医療にはある(ライトとミサミサはキラに殺されたのだ)わけだから、自分の価値観でタバコもOK?

生物学は無情だけどね。サイエンスだから。

これ、レスリー・オーゲルの第二法則の穿った見方ですぜぇ、ダンナぁ。

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