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ヒト繊維芽細胞から作製された肝細胞

そうなんだよなぁ!!

多能性幹細胞は“生物学的”には、非常に非常にとっても興味深いものなんだけど、医療への利用となると、この論文にあるような細胞の方が、断然、イイんだよなぁ。

ようするに、ワープロ機能が欲しい時、パソコンに“ワープロソフト”をインストールしてワープロとして使うか、ワープロ専用機を使うかのどちらかなんだけど、その“機械”をワープロだけにしか使わないとすれば、パソコンはいらない。

肝臓を再構築するだけなら、なにも、パソコンに“ワープロソフト”をインストールするより、最初からワープロ専用機を使った方がイイ。

パソコンは、汎用性を求めるあまりワープロとしては使い勝手が悪いからね。

iPS 細胞は、まさに、パソコンであり、その汎用性から期待されてるんだけど、そのままでは人体に移入できない。分化させて(肝臓の細胞にさせて)からでないと“いろいろと”マズイからそうするんだけど、分化させちゃうと、今度は増えて欲しい時に増えてくれないってジレンマ。

“いろいろと”マズイってのは、iPS 細胞のまま移植して“筋肉”に分化したんじゃ具合悪いし、なんだかわけわかんない細胞の“塊”になっちゃったんじゃ、ヤバいってこと。

その為、確実に“肝臓の細胞”になってくれる、この論文の細胞がイイわけ。もっとも、生理的に“必要なときに増え”なくてもいい組織や臓器の細胞なら、今回とは違う視点で考えなきゃならないだろうけど。

Nature 508, 7494

2014年4月3日


これまでの研究で、ヒトの胚性および誘導多能性幹(iPS)細胞から肝臓細胞を作製したことが報告されているが、そうした細胞を用いて肝臓組織を再生させる試みには、移植細胞が増殖しないことが障害となってきた。

今回H Willenbringたちは新しい戦略を取り、ヒト繊維芽細胞を成熟肝細胞に変換させて、マウスの肝臓を再生させた。

この方法では、ヒト繊維芽細胞を誘導万能性状態(induced pluripotent state)まで到達させず、誘導多能性前駆細胞(iMPC;induced multipotent progenitor cell)状態に再プログラム化する。

著者たちは、iMPCから、内胚葉前駆細胞(iMPC-EPC)を得て、移植後に成熟して増殖できる代理肝細胞を作製した。

この研究は、in vitroで作製されたヒト肝細胞によるマウス肝臓の顕著な再生が実現可能であることを実証しており、この系がヒト肝疾患の自家治療の研究モデルとして有望であることを示している。


Letter p.93
doi: 10.1038/nature13020


ところで、一般的な話として、移植後、様々な種類の細胞の塊に成長するというのはテラトーマ形成能のことを指している。

ES細胞やiPS細胞を未分化のまま移植するとテラトーマ=奇形腫になる。

生物学的な研究としては、このテラトーマ形成能があることが、いわゆる多能性とか、俗にいう万能性とかを確認するひとつの手段となっている。

もちろん、STAP 細胞も、テラトーマ形成能がある。

その一方で、その技術を医療に応用したら、分化させたはずの集団に、もし未分化の細胞が混ざっていたらがん化しちゃう場合も考えられるじゃん、てのが以前から言われている問題点ってワケだ。

でも、iPS細胞でテラトーマを作らせると、移植された個体がもつ免疫の攻撃を受けて「塊」(腫瘍)ができにくいということが報告されている。iPS細胞には、後から“がん遺伝”をぶち込む為か、免疫系に対して「自分、がん細胞なんですけど、なにか?」って言ってるようなもんだから、免疫系に排除されちゃうのだろう。

、、、、マスコミあたりでは、テラトーマ形成能の実験報告と、再生医療でやろうとしている「分化させた細胞の移植」の話をごちゃ混ぜにし、(倫理的にも)頓珍漢な理論を展開しているのはおいといて、、、

だから、iPS 細胞を臨床応用すると、がん細胞になりやすいから「ヤバイ」って主張する人と、その性質で危険な細胞は排除されやすいんだから「ES より安全」って主張する人に分かれる(絵は、人間の認識や価値観に絶対はなく、いつも相対的ってゆーか、不安定を示したつもり。右目はブルーに見えるけど実際はグレーで左目と同じ)。

かと言って、人じゃES 細胞は倫理的に問題ある。

そこで、STAP 細胞が登場した、、、んだけど、、、、、現時点では、STAP 細胞は、本来の意味とか、存在意義とかからはかけ離れたところで“人気者”になっている。以前には、iPS 細胞とどっちが優れているかとか、大衆が喜びそうな質問したりして。


ハッキリ言って、STAP 細胞論文疑惑は小保方さんを悪者にして終わらせられる問題じゃない。こんなことで、iPS 細胞やES 細胞に変わる多能性幹細胞の研究にお金が回らなくなることが、一番の問題だからね。

それに、確実な臨床応用を望むなら、マスコミは、世間をビックリさせられるような論文じゃなく、Nature 508, 7494 に掲載されたコツコツと努力しているこのような論文を、もっと多く取り上げるべきだと思うな。

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2014年04月04日 12:33に投稿されたエントリーのページです。

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